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買い集めていた45年前の週刊ベースボールを読み返しています

# 599 新戦力 / 阪神・広島・巨人

2019年09月04日 | 1985 年 



清原が獲れず全てがパー。しかし柏原獲得に目途がつき右の代打問題が解決
昭和53年のドラフト会議では江川投手、翌54年は岡田選手の交渉権を獲得するなど強運を誇った阪神だが、今年は運に見放された。「清原君を獲れていたら… " たら " の話は禁物だがバース・掛布・岡田に清原が加わったら甲子園も沸いただろうね」と残念がるのは並木打撃コーチ。清原を外し、代わりの1位指名は熊本・八代高の遠山投手。「即戦力ではないが彼は3年くらいでウチのエースになれる逸材。中央では無名だけど文句なしに高校ナンバーワン左腕」と九州地区担当の渡辺スカウトは力説する。大型左腕獲得にしてやったりではあるが、来季セ・リーグの勢力分布図を塗り変える程の戦力加入ではない。

現状の戦力のままでも来季の首位争いは可能であろう。だが相変わらず投手陣は盤石とは言えず、打線にオンブに抱っこ状態は解消されていない。打線は阪神が誇るクリーンアップを中心に健在だが唯一の懸念材料が右の代打である。川藤選手は衰えが顕著で事実上戦力として計算に入っておらず、渡真利選手や和田選手ではまだまだ力不足。清原を獲得しベテランの佐野選手に代わり左翼手で使いながら育て、佐野を代打の切り札にするのが理想だったがクジを外して叶わなかった。「長崎選手みたいな選手が何処かにいないか?」と昨年トレードで獲得し活躍した長崎に味をしめて二匹目のドジョウを探しているのがトレードの仕掛け人でもある西山編成部長だ。

西山部長はシーズン中から極秘裏に動いていた。第1案が山村選手(南海)の獲得。南海は現在、香川選手を捕手から三塁手に転向させて野手としてドカベンの打棒を生かすコンバートを計画中で、トレードの見返りに捕手を要求してきた。白羽の矢が立ったのは山川捕手。しかし「山川を放出したら捕手が足らなくなる。ドラフトで吉田選手(5位指名・三菱重工)を獲得したがまだ海のものとも山のものとも分からず実力は未知数。山川は出せない」と土井ヘッドコーチの反対で御破算に。そこで第2案は柏原選手(日ハム)の獲得。当初は日ハム側は交換トレードを要求してきたが阪神は難色を示し破談しかけたが結局、日ハム側が折れて金銭トレードが成立した。ドラフトの完敗からちょっと盛り返した感じの阪神だ。



即戦力は長冨ひとり。若手間の競争が益々熾烈になってくるゾ !!
今オフの広島は「外人は獲りません、トレードもしません」とくれば残る戦力強化はドラフトのみ。ドラフト会議で5人の選手を指名した。阿南新監督は「3位まで無抽選で獲れた。100%のドラフトだった」と胸を張る。1位・長冨浩志投手、2位・高信二内野手、3位・河田雄裕外野手、4位・谷下和人投手、5位・足立亘投手。なかでも長冨投手は苑田スカウトが持参したスピードガンで球速を測定すると時速153km とアマ球界で最高の数字を叩きだした。一部にはヤクルトに入団した伊東投手(ホンダ技研)と比べると制球面で粗さが目立つとの声があるが、そうした外野の声を蹴散らしてしまう程の球威と伸びシロが魅力の剛腕投手である。

長冨を1位に指名すると広島の若手投手陣から「なんで投手を1位指名に?ウチは投手が豊富なのに俺たちは信頼されてないのか」と嘆きの声が上がった。確かに広島投手陣は粒が揃っていて他球団からは垂涎の眼差しで見られている。ただ今季は山根投手が怪我で戦線離脱し、津田投手も年間を通して安定していなかった。彼ら右の本格派2人が本調子でないと来季に不安が残る。古葉監督が勇退し阿南新監督の下で心機一転、V奪回を目指すには投手は幾らいても構わない。「制球や配球は練習すれば上達する。でも球速は鍛えても増さない天性のもの(苑田スカウト)」。それを受けて首脳陣も「球威があるので(長冨を)抑えで使ってみたい」と大変な惚れ込みようだ。

2位以下はいずれも高校生で将来を睨んでの指名だが、目につくのが皆が左打ちという点。谷下は左腕投手なので当たり前としても他の3人は右投げ左打ち。2位指名の高は九州では広く名前を知られた遊撃手で宮川スカウトによると「篠塚(巨人)に似たタイプで左右に打ち分ける。頭の方もクレバーでショートを守っているが二塁を守らせたら今のウチなら直ぐに使える」らしい。3位指名の河田は今年のセンバツ大会で準優勝した帝京の一番打者で通算31本塁打とパワーも兼ね備えている。またベース一周が13秒8と俊足の持ち主で「ウチの一軍選手と比べても彼の方が速い」と木庭スカウト部長もゾッコン。広島には伸び盛りの若手選手が多いが高と河田に関しては意外と早く出て来るとの評価だ。



弱体投手陣活性化に欠かせない桑田・広田の存在。有田・福王の加入で控えも充実
強引とも言える桑田投手のドラフト指名、5年越しで実った近鉄・有田選手の獲得。3年目のカド番を迎える王巨人は着々とチーム再建を行なっている。世間の非難を承知の上で決行した桑田の強行指名をはじめドラフト上位4人を投手が占めた。中でも1位・2位の桑田、広田投手は共に即戦力として評価している。今季は槙原投手と角投手が怪我で戦線離脱し来季の活躍に「?」マークが灯っている。加えて抑え役として期待した金城投手が1セーブも挙げられずに退団、更に近鉄とのトレード話の不手際で今季47試合に登板した定岡投手まで退団してしまった。星勘定どころか投手の頭数にさえ事欠く有様に新任の皆川投手コーチも頭を悩ましている。現状は新人の桑田や広田に頼らざるを得ないのだ。

「全て白紙。自主トレ・キャンプ・オープン戦を見た上で判断する」と皆川コーチは横一線を強調する。今季のチーム防御率はリーグ1位の3.96 だが、ここ一番の勝負所で弱さを露呈した投手陣。江川・西本・斉藤・カムストックの先発陣。加藤・鹿取・宮本の抑え役、岡本・中島らの中継ぎ陣に新人の桑田や広田が食い込めれば他球団にも引けを取らないバラエティに富む投手陣を組むことが出来る。その意味でも新人2人が今季の王巨人の浮沈の鍵を握る。正力オーナーが「狂喜・歓喜・乱舞」と最大級の形容詞で成功を自画自賛した今ドラフトで世間を敵に回しながらも強行指名した甲斐もあるということだ。

一方の野手陣は長年の課題だった捕手の補強に近鉄から有田選手を獲得した。定岡投手の退団という想定外の事態も起きたが有田の加入は表面的な効果以上のものがある。今季は山倉選手が101試合にマスクを被った。カムストック投手が登板する時は山本幸選手が起用されたがまだまだ一人前とは言えず山倉の負担は依然として大きかった。山倉に肉体的・精神的休養を与える意味でも有田の加入は大きい。また福王選手(明治大)の加入は石渡選手の引退で手薄となった内野陣の穴埋めには最適。また東京六大学時代に首位打者になった打撃は駒田選手ひとりになる左打ちの代打陣の強い味方になる。内野陣には川相や岡崎、外野陣には石井や仁村など有望な若手もおり来季の巨人は楽しみだ。

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