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# 703 巨人・阪神の血闘 ②

2021年09月01日 | 1977 年 



その夜は爆笑、翌日は厳しい " 90番 "
一方の巨人は歓喜の渦状態。「ワハハ、ナイスゲーム」と三塁側ベンチから送迎バスに乗り込むまでの約80㍍の狭い通路に長嶋監督の勝利の高笑いが三度響いた。それもそのはずだ。当初は2勝1敗で御の字と考えていたが終わってみれば3連勝。しかも自滅した阪神からプレゼントされた勝利だけに笑いが止まらない。気の早い一部スポーツ紙は『巨人独走へ』と書き、系列の報知新聞は『巨人7連勝で貯金10』の見出しで大騒ぎ。三塁側スタンドの巨人ファンは「万歳・万歳」でお祭り騒ぎ。まるで優勝が決まったかのような状態だった。しかし3連戦が終わった翌日の22日になると長嶋監督の表情は一転して厳しいものとなっていた。

次の広島戦の試合前、「ウチは幸運だっただけ」と長嶋監督は阪神戦を振り返り「阪神は看板の200発打線が下降気味で掛布やラインバックが欠場して不完全状態だった。もし掛布らが万全だったら勝負はどう転んでいたか分からなかった。ウチも万全じゃなかったが各選手が自分の持ち味を出してくれて3連勝できた」と胸の内を明かした。長嶋監督は阪神に3連勝したからといって一夜明けたら自戒を込めて気持ちを引き締めたのであろう。そしてこうも言った。「まだペナントレースは始まったばかり。次はウチが阪神に3タテを喰らうかもしれない。勝負は時の運も大いにある。だから手放しで喜んでいる場合じゃない」と勝って兜の緒を締めよ、の長嶋監督であった。


たった " 3発 " で抑えた巨人投手陣
3連戦初戦は先発した堀内投手を浅野投手が好リリーフして勝利。2戦目は阪神打線を苦手にしている小林投手が要所を締めて完投勝ち。3戦目は先発したライト投手が打たれて劣勢だった試合を逆転し、最後は堀内投手が締めくくった。関西のスポーツ紙は吉田監督の采配ミス、一枝三塁コーチの大チョンボなど阪神が自滅したと書き立てたが3戦ともに巨人投手陣の踏ん張りが勝因だったと言えよう。下降気味だったとはいえ、阪神の200発強力打線を封じたことは巨人投手陣の自信となるのは間違いない。逆に阪神には今年も巨人に敵わないというコンプレックスを植え付ける結果となった。3連勝と3連敗はまさに天国と地獄であった。

阪神戦の前に長嶋監督は投手陣に対して「ヒットは何本打たれても構わない。しかし本塁打だけは避けるように。本塁打は阪神打線を活発化させるきっかけになる」と指示していた。2戦目に今季初の完投勝利をおさめた小林投手は「監督の言葉で高目だけは投げないよう気をつけました。丁寧に低目に投げ続けたことが結果的に完投につながった」と話す。今回の巨人戦を迎える前まで阪神打線は10試合で22本塁打(1試合平均2本塁打)を量産していたが、3連戦で3本塁打に抑え込まれた。掛布やラインバックの欠場があったとはいえ巨人投手陣に軍配が上がった。


故障への考え方
さて、今回の3連戦で阪神は故障者続出で戦力が落ちたことが3連敗の要因だと言われている。投手陣では江本投手が右背筋痛、上田投手は本塁突入で怪我をして病院送りに。野手陣では掛布選手が広島戦で死球を受けて欠場、田淵選手は腰痛、ラインバック選手は本塁返球の際に右ひじを痛めて途中退場。他にも東田選手やブリーデン選手も持病があり万全ではなかった。こうした状態では同情の声もあるが、山内コーチは「確かに故障者がいると苦しい。だが巨人だって王や張本も万全じゃないし柴田も怪我していると聞いている。苦しいのはどの球団も一緒でやり繰りしている。ウチだけが苦しい訳じゃない」と手厳しい。

かつて猛虎の総大将だった藤村富美男氏は「両チームの力は互角でも組織として阪神と巨人の自己管理の仕方に差があるように感じる。チームにおける自分の立場をわきまえた健康管理と技術管理が阪神の選手は出来ていないのが残念だ」と苦言を呈する。阪神のチームドクターである大阪厚生年金病院の黒津医師によると「選手がハッスルした結果で症状も軽く必要以上に心配しなくてよい。長いペナントレースはまだ始まったばかりで今後は良くなる一方」だそうだ。今月の26日から後楽園球場で行われる第2ラウンドで黒津医師の見解が正しいのか分かる。浪速の仇を江戸で討つか注目される。

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