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■ 楢原武正展 大地/開墾2018-1 (1月9~14日、札幌) 圧倒的なスケール感。白の導入。

2018年01月13日 20時45分23秒 | 展覧会の紹介-現代美術
 札幌のギャラリー大通美術館は、1階にあるギャラリーとしては札幌で最大の面積を誇る(ただしところどころに太い柱がある)空間だが、楢原武正さんは2001年から、この空間を目いっぱいつかって個展を開いている。2002、03、11、13年をのぞいて毎年の開催だ。
 「大地/開墾」と銘打った巨大なインスタレーションで道内の現代アートを牽引してきた楢原さんも、昨年は書道のような作品ばかりとなり
「さすがにことしで76歳だからな~。もう往年のような展開は無理かな」
とひそかに思いつつ会場に向かったら、以前と変わらずお元気なご本人と、インスタレーションを中心とした新作が会場を埋めていた。
 脱帽である。

 メインのインスタレーションは、壁面は新聞紙を何重にも重ねたものを支持体にしており、高さは天井(3.2メートル)いっぱい。長さは計25メートル(!)に及ぶ。
 すすなどを混ぜた顔料を用いているという。
「新聞紙だけど、重ねたので、厚みというかあたたかみがあるよね」
と楢原さん。
 それを搬入時にガンタック(ホチキスの親玉みたいな道具)でとめて、壁2面を埋め尽くしている。



 そして、床上に置かれた、針金を丸めたり釘を集めたりして作った立体の数々が、白く塗られている。
 おもに平面作品を制作していた時代から一貫して黒を基調としてきた楢原さんとしては、白の導入は、一大変化といっていいだろう。


 インスタレーション以外に、廃品を利用したものなどの平面作品が55点。
 大半は新作という。

 いつもと同じく、個展全体のタイトルが「大地/開墾」であり、個々の作品には題は付されていない。


 平面作品にも、白く塗られたものが登場し、これまでの楢原さんの個展とは違う様相を見せている。


 作品の部分を拡大してみる。
 空き缶や車のワイパーなどが作品の一部になっている。

 「制作は大変ですが、次の個展があると思えばやり続けられます。自分のさだめ、のようなものですから」
と楢原さんは人なつっこそうな笑顔を見せる。
 たゆまぬ姿勢が、76歳とは思えぬパワーの秘訣なのだろう。

 筆者はこれまでの約20年間、廃品などを黒くつぶした作品の見た目から
「大地を耕すというよりも、近未来の都市の廃墟のようだ」
という印象を抱いていた。
 しかし今回、大地開墾というのは、作品の外観よりも、日々コツコツと手を動かし制作を続ける作家の姿勢を表しているものではないかと気付いた。


 会場入り口附近の壁に、枝の束を用いた作品がかかっていた。
 楢原さんはまだまだ新しい挑戦を続けている。


2018年1月9日(火)~14日(日)午前10時~午後7時(最終日~午後5時)
ギャラリー大通美術館(札幌市中央区大通西5 大五ビル)



ハルカヤマ藝術要塞2017 FINAL CUT
楢原武正展  墨による日の出等々の作品発表(2017年1月)

モーション/エモーション 活性の都市 (2016年1~3月、画像なし)

楢原武正展 大地/開墾 黒い種をうえる (2015)
楢原武正展 大地/開墾<2014-1> 大通美術館にて黒い種子をうえる

(このエントリの個展で発表されていた自筆年譜を引用します)

1942年 十勝管内広尾町に生まれる

1990年 テンポラリースペース(札幌)の個展から題名を「大地開墾」とし、札幌、東京、帯広、芦別、上砂川、ニセコ、小樽銭函等で本格的にインスタレーションの仕事を展開、現在に至る。

2000年 個展「1976~2000年」(ギャラリー大通美術館、札幌)
 01年 個展(ギャラリー大通美術館、札幌)
    北海道立体表現展(道立近代美術館)=03年、06年、08年も
 02年 個展(this is gallery、札幌)
 03年 個展(ART-MAN Gallery、札幌)
 04年 個展(ギャラリー大通美術館、札幌)
    札幌の美術2004 20人の試み(札幌市民ギャラリー)
 05年 個展(ギャラリー大通美術館、札幌)
 06年 個展(ギャラリー大通美術館、札幌)
    北の彫刻展(札幌彫刻美術館)
 07年 個展(ギャラリー大通美術館、札幌)
    第27回存在派展(大同ギャラリー、札幌)
 09年 個展(ギャラリー大通美術館、札幌)
 10年 個展(ギャラリー大通美術館、札幌)
    札幌市教育文化会館企画展「光芒」
 11年 個展(ト・オン・カフェ、札幌)
    抽象彫刻30人展(本郷新記念札幌彫刻美術館)
    ハルカヤマ藝術要塞(小樽)
    札幌のアーティスト50人展(ギャラリーレタラ、札幌)
 12年 個展(ギャラリー大通美術館、札幌)
    500m美術館オープニング記念展(札幌)
 13年 ハルカヤマ藝術要塞(小樽)
    ハルカヤマ・サテライト(本郷新記念札幌彫刻美術館)
    札幌アーティスト55人展(ギャラリーレタラ、札幌)


“The Reassurance Found in Everyday Life”/「安堵感」(2002)
祭り・FEST展パートII (2003)
第26回存在派展(2006)
第13回さいとうギャラリー企画 夏まつり「風」パートII (2007)





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