北海道美術ネット別館

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■札幌美術展 真冬の花畑 (1月31日まで)

2010年01月28日 21時13分38秒 | 展覧会の紹介-複数ジャンル
 寒い。

 わたしはいちおう道産子であるという自負があるので、めったなことでは「寒い」という語は口にしないほうなのだが、寄る年波がこたえるのか、それともこの冬の気温がほんとうに低いのか、最近は「寒いなあ」とつぶやくことが、以前にくらべて増えてきたように感ぜられる。

 寒い中を、バスに乗って芸術の森美術館まで行く。
 美術館の中は、春の国だった。

 美術館を出るときには、内側からすっかりあったかくなっていた。
 「花」をテーマにした美術展を、春や初夏じゃなくて、真冬に開催するという主催者の心意気がうれしい。

 出品者は若手からベテランまで、札幌もしくは近傍に住む12人。
 それに、物故画家の片岡球子と小川マリが1点ずつと、別室にはボタニカルアートも展示されている。

 川上勉(彫刻)、西村明美(銅版画)、白鳥信之(油彩)、鳴海伸一(銅版画)、高幹雄(平面)、佐藤泰子(パステル)、工藤悦子(油彩)、岡本和行(写真)、井桁雅臣(絵画)、杉田光江(インスタレーション)、櫻井マチ子(油彩)、佐々木小世里(イラスト)と、ジャンルも多彩だ。
 大半の出品者が新作をそろえてきているのも、すごい。やっぱり美術館の企画展となると、モティベーションが上がるんだろうなあ。

 出品者全員が顔見知りという、非常にめずらしい展覧会なので、これまでの個展などにはまとめてリンクを張っておくことにする。
 逆に言うと、ある程度見慣れた人たちばかりなのだが、それでもなお
「びっくりしたなー、すごいなー」
という人がいた。
 写真の岡本さん、インスタレーションの杉田さんだ。

 岡本和行さんの写真はギャラリーミヤシタで2、3度拝見しているし、写真集も買って周囲に薦めたりもしたけれど、これだけ大きなプリントをまとめて見るのは初めてで、まさに圧巻。
 会場を訪れた人でも、これらの作品が写真であることに気づかないまま帰っちゃった人も多いのではないか。
 よく、写真は対象の一瞬を切り取り、絵画は対象の本質を描き出す、なんてことを言う人がいて、まあそれはあたっているとは思うんだけど、岡本さんの写真に限っては、そんな評言がまったく通用しない。ここに現出しているのは、まさに切り取られた一瞬でありながら、花の永遠の本質としか言いようのない「何か」なんだと思う。

 杉田光江さんは、道立旭川美術館の「ふわふわワンダーランド」展でも抜擢ばってきされていたから、公立美術館での大規模な発表はこれが2度目となる。
 今回も、タンポポの綿毛と、ホルジュームという植物の種子を用い、天井まで届く巨大な柱を会場に設営した。
 どこまでも軽い素材で、圧倒的な存在感のある立体を作っているという、一見矛盾したことがみごとに成立しているのが、おもしろい。

 絵画では、櫻井マチ子さんがやはり独特だな~。
 この人ほど個性的で、ことばで説明しづらい絵画世界を構築している人はあまりいないと思う。
 井桁雅臣さんも、きれい。遠い日の光の記憶のような、そんな世界。

 川上勉さんは、日本的な意匠(琳派)という問題意識もさることながら、彫刻作品が単体でも多数でも成立するにはどうしたらいいかという、めったにない試みを始めている点で、画期的ではないだろうか。


2009年11月29日(日)-2010年1月31日(日)9:45-5:00(入館-4:30)、月曜休み(祝日は開館し翌火曜休み・12月29日-1月3日休み)
札幌芸術の森美術館(南区芸術の森2)

一般700円(560円)、高校・大学生350円(280円)、小中学生150円(120円)。65歳以上は560円。障害者手帳持参の人と付き添い1人は無料。花柄の服か花のアクセサリーを身につけた来場者は団体割引料金

・地下鉄南北線「真駒内」駅バスターミナルの「2番乗り場」から発車するすべてのバスで行けます。「芸術の森入り口」降車。(系統番号2番のバスという意味ではない)




 北海道美術ネットと別館には、出品者の過去の個展が数多く紹介されています。
 通常は、エントリの末尾にそれらへのリンクを貼るのですが、分量をオーバーしてしまったので、使いづらいですが、エントリを別に立てました。参照してください。全員が、何らかのかたちで紹介されています。


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