2019年6月4日に見に行った野外彫刻を順々に紹介していきます。
ユカンボシ川は、恵庭公園の中に端を発し、住宅や工場のある中を流れて、長都川に注ぐ、石狩川水系の小さな川です。
この地図では、恵庭公園の下流側には公園のマークがついていませんが、自然公園になっています。
それも「公園」という名からはちょっと想像できないほど、木々がうっそうと茂り、川が原始のままの姿で流れています。
なお、冒頭写真にある、木を上下に五つずつ並べたようなシンボルマーク・ロゴタイプは、デザイナー矢萩喜従郎さんの作品。
周辺は閑静な住宅地で、こんな川と森があることに驚かされます。
恵庭市は2000年、市制施行30周年を迎え「水・緑・花・文化・21世紀へのメッセージ」をテーマに、さまざまな記念事業を展開しました。
ユカンボシ川河畔公園彫刻広場整備もその一つ。
「せせらぎと豊かな緑に抱かれた散歩道」
をテーマに整備されました。
このときに「ユカンボシ川河畔公園野外美術制作委員会」がおかれ、委員長には、当時神奈川県立近代美術館の館長を務めていた酒井忠康さんが就任しました。
酒井さんは後志管内余市町出身で、『彫刻家への手紙』など著書も数多くあります。
本郷新彫刻賞とか、二十歳の自画像コンクールとか、北海道関係の選考委員もいろいろ引き受けておられます。
他の5人の委員は次の通り。
肩書はむろん、当時のものです。
笹野尚明(札幌芸術の森美術館館長)
佐藤友哉(北海道立近代美術館学芸第一課長)
永原和夫(北海道文教大学外国語学部部長)
新野靖史(恵庭市校長会)
永田正則(恵庭市助役)
酒井さんは
「「ユカンボシ川河畔公園彫刻広場」の彫刻選定」
と題した少し長い文章を図録に寄せています。
(この彫刻広場については、なんと恵庭市がフルカラーの図録を刊行しているのです)
2月に現地を訪れたさいの印象から、選定した作家のことまで説き及んでいますが、一部を引用します。
上の引用部で中略とした部分で酒井さんは米国の詩人ゲーリー・スナイダーを引き、さらにその後で
「彫刻というのは一種の記憶の「装置」です。ですから来園者は、その彫刻と彫刻の置かれた「場所」との関係を視覚的にとらえるだけでなしに、自分の内部から発生するさまざまな記憶との対話をこころみなくてはいけない。これは強制ではありません。わたしたちが失いつつある感覚に息吹を吹き込む方法のひとつなのです」
とも述べています。
そうして選んだのが、次の6氏でした。
佐藤忠良
植松奎二
山谷圭司
丸山隆
渡辺行夫
山本正道
このうち、佐藤氏が夕張育ち。植松、山本両氏が道外で、のこる3人が道内拠点の彫刻家です。
作風も多彩で、実力は十分だといえると思います。
これから、6人の作品を順に紹介します。
いまは、新しく美術展を見に行くこともできないし、こうして昔取材してほったらかしにしてあった画像を、できるかぎり発掘していかなくてはと思います。
偉そうに言うことではありませんが…。
□恵庭観光協会のサイト http://www.eniwa.org/spots/playing/yukanboshi.html
□ブログ「豆の育種のマメな話」 https://blog.goo.ne.jp/taktsuchiya/e/c3e38bf8fe71614c0dc411608cafc677
関連記事へのリンク
■遠のいていく風景を求めて 「酒井忠康+その仲間たち」展(2013)
「早世の天才画家 日本近代洋画の十二人」(酒井忠康著、中公新書)
本郷新賞に前田哲明さん
各作品へのリンク
佐藤忠良「えぞ鹿」
渡辺行夫「ドン・コロ」
植松奎二「樹とともに―赤いかたち」
山本正道「時をみつめて」
丸山隆「Cube」
山谷圭司「にぎやかな遡行」
・JR恵庭駅から約1.93キロ、徒歩25分
・中央バス「恵庭公園通」から約650メートル、徒歩9分(福住駅ターミナルから約1時間)
ユカンボシ川は、恵庭公園の中に端を発し、住宅や工場のある中を流れて、長都川に注ぐ、石狩川水系の小さな川です。
この地図では、恵庭公園の下流側には公園のマークがついていませんが、自然公園になっています。
それも「公園」という名からはちょっと想像できないほど、木々がうっそうと茂り、川が原始のままの姿で流れています。
なお、冒頭写真にある、木を上下に五つずつ並べたようなシンボルマーク・ロゴタイプは、デザイナー矢萩喜従郎さんの作品。
周辺は閑静な住宅地で、こんな川と森があることに驚かされます。
恵庭市は2000年、市制施行30周年を迎え「水・緑・花・文化・21世紀へのメッセージ」をテーマに、さまざまな記念事業を展開しました。
ユカンボシ川河畔公園彫刻広場整備もその一つ。
「せせらぎと豊かな緑に抱かれた散歩道」
をテーマに整備されました。
このときに「ユカンボシ川河畔公園野外美術制作委員会」がおかれ、委員長には、当時神奈川県立近代美術館の館長を務めていた酒井忠康さんが就任しました。
酒井さんは後志管内余市町出身で、『彫刻家への手紙』など著書も数多くあります。
本郷新彫刻賞とか、二十歳の自画像コンクールとか、北海道関係の選考委員もいろいろ引き受けておられます。
他の5人の委員は次の通り。
肩書はむろん、当時のものです。
笹野尚明(札幌芸術の森美術館館長)
佐藤友哉(北海道立近代美術館学芸第一課長)
永原和夫(北海道文教大学外国語学部部長)
新野靖史(恵庭市校長会)
永田正則(恵庭市助役)
酒井さんは
「「ユカンボシ川河畔公園彫刻広場」の彫刻選定」
と題した少し長い文章を図録に寄せています。
(この彫刻広場については、なんと恵庭市がフルカラーの図録を刊行しているのです)
2月に現地を訪れたさいの印象から、選定した作家のことまで説き及んでいますが、一部を引用します。
樹々が葉を落した雪のなかの光景と、鬱蒼たる緑に変貌する時期との対照は、北海道の風土の気象がもつ、天然のロマンといっても過言でないほどに素敵な循環です。そのことにくわえて、ユカンボシ川=水が暗示する悠久の時間といったようなことが、わたしのこころを揺さぶりました。
ここで目撃できたものは、その現実のスケールにおいて、けっして広大なものではありませんが、喚起させるイメージは単なる“自然保護区”の意味合いをはるかに超えて、むしろ、北海道の風土がしばしばかいまみせる“野生"の領域でした。中国の古い思想に「英知は野生から生まれる」とあり、またその著『森の生活』で知られるH. D. ソローは「どんな文明も耐えられないほどの野生がほしい」といいました。(中略)
現代の社会は固有の「場所」の概念を地均して進んできましたから、どこもかしこも似たような都市となって、個々人がその「場所」として体験している記憶すらもあやしくなっています。
上の引用部で中略とした部分で酒井さんは米国の詩人ゲーリー・スナイダーを引き、さらにその後で
「彫刻というのは一種の記憶の「装置」です。ですから来園者は、その彫刻と彫刻の置かれた「場所」との関係を視覚的にとらえるだけでなしに、自分の内部から発生するさまざまな記憶との対話をこころみなくてはいけない。これは強制ではありません。わたしたちが失いつつある感覚に息吹を吹き込む方法のひとつなのです」
とも述べています。
そうして選んだのが、次の6氏でした。
佐藤忠良
植松奎二
山谷圭司
丸山隆
渡辺行夫
山本正道
このうち、佐藤氏が夕張育ち。植松、山本両氏が道外で、のこる3人が道内拠点の彫刻家です。
作風も多彩で、実力は十分だといえると思います。
これから、6人の作品を順に紹介します。
いまは、新しく美術展を見に行くこともできないし、こうして昔取材してほったらかしにしてあった画像を、できるかぎり発掘していかなくてはと思います。
偉そうに言うことではありませんが…。
□恵庭観光協会のサイト http://www.eniwa.org/spots/playing/yukanboshi.html
□ブログ「豆の育種のマメな話」 https://blog.goo.ne.jp/taktsuchiya/e/c3e38bf8fe71614c0dc411608cafc677
関連記事へのリンク
■遠のいていく風景を求めて 「酒井忠康+その仲間たち」展(2013)
「早世の天才画家 日本近代洋画の十二人」(酒井忠康著、中公新書)
本郷新賞に前田哲明さん
各作品へのリンク
佐藤忠良「えぞ鹿」
渡辺行夫「ドン・コロ」
植松奎二「樹とともに―赤いかたち」
山本正道「時をみつめて」
丸山隆「Cube」
山谷圭司「にぎやかな遡行」
・JR恵庭駅から約1.93キロ、徒歩25分
・中央バス「恵庭公園通」から約650メートル、徒歩9分(福住駅ターミナルから約1時間)
(この項続く)
ほんとに良いところだと思いました。
このあと、6本続きます。
よく分からないままに野外彫刻を巡っていました。ブログで記憶を呼び起こして再体験でき、楽しみです。