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■渡邉真弓「そこに ある」 (2022年1月7~30日、東川)東川へ、冬の旅(7)

2022年01月30日 10時37分34秒 | 展覧会の紹介-写真
(承前)

 シリーズの順番が前後しますが、本日で会期末なので先にアップします。
 といっても、新型コロナウイルスの感染拡大にともなう蔓延防止措置が出たことを受け、町外の鑑賞者は自粛してくださいという呼びかけが出ています。


 基本的には、2017年の東京、2018年の札幌・ギャラリー門馬での展覧会(その後、21年には日高管内様似町でも開催)の再構成ですが、会場が広いので点数は増えています。
 また、動線の最後に数分の動画が(何分ですか? と会場で質問しておきながら、答えをメモするのを忘れる、だらしないヤナイ…。申し訳ありません)公開されていること、額が東川町文化ギャラリーのオリジナルであることなど、新しい要因も多いので、まったく新しい展示のように感じられたのは確かです。

 トークセッションで作家ご本人が説明していたところによると、最初のほうに、具体的なものを入れた写真を並べ(「今」を表している)、途中に黒い額のモノクロ3点を挟むことで、その「今」もいずれは過ぎ去っていくものたちであることを示し、続いてやや抽象的なところのあるカラー作品を陳列したあとで、最後に、抜き取られて地面に投げ出されてもなおも美しく咲いている野の花のショットでしめくくる。
 こんな構成になっていました。



 渡邉真弓さんの写真は、非常にシンプルで、なにも難しいところはありません。
 でも、作品として、水際立っている。そうとしか言いようがないのです。

 おそらく、葉1枚を撮るのでも、対象物がど真ん中に来ないよう微妙に構図を考え、周囲にじゃまなものがフレームインしないように気を配り、最適のホワイトバランスになるよう調整し…といった行程を瞬時のうちに踏んでいるのでしょう。
 きれいだな~と思って、作品に近寄ると、クモの巣だったりします。
 少しさびの浮いたビニール傘の写真もあります(小樽市銭函の海で、100回ぐらいシャッターを切ったそうです)。
 普通なら「汚いもの」として頭から決めてかかり、レンズを向けないような被写体にも、さりげなくカメラを向けているのです。

 日常のささやかな息遣い。
 小さな幸せ。
 言葉にすると単純ですが、これを目に見えるものにする(しかも、他人の写真とは違うように―)のは、かなり大変なことです。

 しかも「そこに ある」という題のとおり、作者はいっさい作為を入れていないそう。
 つまり、地面に投げ出された枯れた花束も作者がむしり取って捨てたものではなく、動画の中で写る揺れているブランコも渡邉真弓さんが揺らしたのではないとのことでした。


 
 2020年以降に撮ったショットも交ぜようと思ったら、全体のトーンに合わなかったと、作者はトークセッションで話していました。
 わずかに入れた2枚が、光と影の中に置かれたコップをとらえた1枚と、先述のビニール傘の1枚とのことで、「そこにある」について思いをはせながら撮ったものだそうです。
 コロナ禍のせいなのか、自分の変化なのか、わからないけれど
「変わらないようで変わっているんだなあ」
としみじみ話していました。

 露出明るめの、肯定的な感覚のにじんだプリントが多いという印象を抱いていた渡邉真弓さんの写真ですが、近年は、沈潜した思いが漂います。
 それは、ことばでとらえようとしてもついにとらえきれない、わずかな心の動きに添った「何か」としか言いようがありませんが、とりあえず「写真家の成熟」なのだと思います。良い意味で。


2022年1月7日(金)~1月30日(日)午前10時~午後5時(会期中無休)
東川町文化ギャラリー (上川管内東川町東町1)
入館料:500円(中学生以下無料)

https://www.allo-japon.com
□twitter @allo_mayumi

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