あれ? 道教大の日本画研究室の展覧会「にかわ絵展」は、研究室が閉じたことで、昨年かぎりで終了したはずですが・・・。
会場の入り口に、つぎのように書かれた紙が掲示してありました。
なるほど。
朝地信介、池田さやか、今橋香奈子、熊崎みどり、駒澤千波、佐藤由枝、富樫はるか、富山真祐、内藤まゆ、中島涼沙、野口絹代、野口裕司、百野道子、ミクニキョウコ、宮町舞子、村山聡、吉川聡子の各氏が出品しています。
道教大を卒業した若手が中心で、札幌だけでなく道内各地から作家があつまっています。
日本画という枠にとらわれない作品を発表しているのが留萌の朝地さん。
最初の画像の、たてに細長ーい絵は「結晶する街」。
灰色のざらざらした部分はモルタルを塗っているのだそうです。
その合間に、ビルというか団地のような建物が、曲線でむすばれているふしぎな光景が描かれています。
「自然と、直線的な絵を描いてしまうんです」と朝地さん。
「ぱっと見のおもしろさに頼らない作品をつくっていきたい」
ほかに、正方形の煉瓦に単色で描いた小品「居住様式」が5点。
朝地さんの絵は、シュルレアリスムに分類したくなるときがありますが、そういうレッテルに安住しない取り組みを続けており、評価したいと思います。
ミクニキョウコさんの作品を見つけたときも、ちょっとびっくり。
なぜなら彼女は、道展の油彩部門で毎年入選しているからです。
聞けば、一部油絵の具やアクリルメディウムを併用しているものの、色のほとんどは岩絵の具だとか。
「じぶんの絵の発想は洋画だと思うので…。今回、いろんな人の作品を見て、勉強になりました」
以前はテンペラを描いていたのだそうです(ぜんぜん、気がつかなかった)。
今回の「物語が、始まる」も、たしかに、題材もマティエールも、伝統的な日本画ではありません。
とりわけ、白い木の柵の描写がリアルで、目を引きます。
ミクニさんの絵を見ていると「そもそも、洋画・日本画の区別って、ナンなのさ」という問いが沸き起こってこずにはいられません。
今橋香奈子さんの「風うた」です。
以前も書きましたが、今橋さんは、日本の絵画が本来持っていた「装飾性」を、現代的な画題の上にどうやって生かしていくか-という問題意識をしっかり持っている人なのではないかと思います。
「いままでよりもたくさん色を使ってみました」とのことです。
今回の作品も、現実の屋外空間にあるとはちょっと考えにくい、花模様が前面にあしらわれた布が、画面の右半分に描かれています。
この布の前にはガラス瓶や果実が描かれていますが、よく見ると、置かれているのか、宙に浮いているのか、判然としません。リンゴがテーブルからこぼれ落ちそうなセザンヌの静物画を思わせます。
さらにおもしろいのは、女性のかたわらに咲いているユキノシタの花が、女性の衣服の上にまではみだしていること。ここでは、実際の花と、装飾としての花とが、相互に浸潤しあっているような事態(うまくいえなくてすいません)が発生しています。右側で飛んでいるチョウも、左の空間では単なる透明な模様になっています。
一見、写実的な絵のように見えて、さまざまな「問い」を内包した、興味深い作品だと思います。
長くなったので、あとは手短に。
中島涼沙さん「AM11:56」
これまでの動物とはがらりとモティーフが変わりました。
iPodと赤いマフラーをつけた若い男性の絵です。
宮町舞子さん「夜」
パイナップル畑で、こちらに背を向けて立つ男。なぜかかたわらに、ピンクの鳥(フラミンゴ?)がいます。
金色の光がこぼれ落ち、闇の気配が靄のようにたちこめる、ふしぎな絵。
吉川聡子さん「冬の日」
遠くまで歩いていった少年の1日を描いた絵本。さすが手馴れています。
ただし、全体的には、旧来の日本画のタブローを打ち破っていく若々しい試みが、もっとあってもいいのではないかとも思いました。画題は、さすがに花鳥画にとどまってはいないんですけどね。
1月8日(月)-13日(土)10:00-18:00
札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3 地図A)
■06年の「野口裕司展とにかわ絵展」
■今橋香奈子日本画展(06年8月)
■駒澤千波日本画展(06年12月)
■中島涼沙さんが出品した「風」展(05年11月) ■同
会場の入り口に、つぎのように書かれた紙が掲示してありました。
日本画の新たな可能性を追求するために、作家それぞれの表現手段を用いて作品を発表、研究する会と定義づけ、主旨に賛同したメンバーが集まっています。
なるほど。
朝地信介、池田さやか、今橋香奈子、熊崎みどり、駒澤千波、佐藤由枝、富樫はるか、富山真祐、内藤まゆ、中島涼沙、野口絹代、野口裕司、百野道子、ミクニキョウコ、宮町舞子、村山聡、吉川聡子の各氏が出品しています。
道教大を卒業した若手が中心で、札幌だけでなく道内各地から作家があつまっています。
日本画という枠にとらわれない作品を発表しているのが留萌の朝地さん。
最初の画像の、たてに細長ーい絵は「結晶する街」。
灰色のざらざらした部分はモルタルを塗っているのだそうです。
その合間に、ビルというか団地のような建物が、曲線でむすばれているふしぎな光景が描かれています。
「自然と、直線的な絵を描いてしまうんです」と朝地さん。
「ぱっと見のおもしろさに頼らない作品をつくっていきたい」
ほかに、正方形の煉瓦に単色で描いた小品「居住様式」が5点。
朝地さんの絵は、シュルレアリスムに分類したくなるときがありますが、そういうレッテルに安住しない取り組みを続けており、評価したいと思います。
ミクニキョウコさんの作品を見つけたときも、ちょっとびっくり。
なぜなら彼女は、道展の油彩部門で毎年入選しているからです。
聞けば、一部油絵の具やアクリルメディウムを併用しているものの、色のほとんどは岩絵の具だとか。
「じぶんの絵の発想は洋画だと思うので…。今回、いろんな人の作品を見て、勉強になりました」
以前はテンペラを描いていたのだそうです(ぜんぜん、気がつかなかった)。
今回の「物語が、始まる」も、たしかに、題材もマティエールも、伝統的な日本画ではありません。
とりわけ、白い木の柵の描写がリアルで、目を引きます。
ミクニさんの絵を見ていると「そもそも、洋画・日本画の区別って、ナンなのさ」という問いが沸き起こってこずにはいられません。
今橋香奈子さんの「風うた」です。
以前も書きましたが、今橋さんは、日本の絵画が本来持っていた「装飾性」を、現代的な画題の上にどうやって生かしていくか-という問題意識をしっかり持っている人なのではないかと思います。
「いままでよりもたくさん色を使ってみました」とのことです。
今回の作品も、現実の屋外空間にあるとはちょっと考えにくい、花模様が前面にあしらわれた布が、画面の右半分に描かれています。
この布の前にはガラス瓶や果実が描かれていますが、よく見ると、置かれているのか、宙に浮いているのか、判然としません。リンゴがテーブルからこぼれ落ちそうなセザンヌの静物画を思わせます。
さらにおもしろいのは、女性のかたわらに咲いているユキノシタの花が、女性の衣服の上にまではみだしていること。ここでは、実際の花と、装飾としての花とが、相互に浸潤しあっているような事態(うまくいえなくてすいません)が発生しています。右側で飛んでいるチョウも、左の空間では単なる透明な模様になっています。
一見、写実的な絵のように見えて、さまざまな「問い」を内包した、興味深い作品だと思います。
長くなったので、あとは手短に。
中島涼沙さん「AM11:56」
これまでの動物とはがらりとモティーフが変わりました。
iPodと赤いマフラーをつけた若い男性の絵です。
宮町舞子さん「夜」
パイナップル畑で、こちらに背を向けて立つ男。なぜかかたわらに、ピンクの鳥(フラミンゴ?)がいます。
金色の光がこぼれ落ち、闇の気配が靄のようにたちこめる、ふしぎな絵。
吉川聡子さん「冬の日」
遠くまで歩いていった少年の1日を描いた絵本。さすが手馴れています。
ただし、全体的には、旧来の日本画のタブローを打ち破っていく若々しい試みが、もっとあってもいいのではないかとも思いました。画題は、さすがに花鳥画にとどまってはいないんですけどね。
1月8日(月)-13日(土)10:00-18:00
札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3 地図A)
■06年の「野口裕司展とにかわ絵展」
■今橋香奈子日本画展(06年8月)
■駒澤千波日本画展(06年12月)
■中島涼沙さんが出品した「風」展(05年11月) ■同
来年の『第2回にかわえ展』に向けて、メンバー全員で考えて行きたいという空気になっています。
来年はますます元気なにかわえ展をお送り出来るのではないかと思います。
私の作品について「日本画と洋画の境目って~?」とありましたが、まさに今回のにかわえ展での私の役割はそこだったと思うので、とてもうれしかったです。
これからもよろしくお願いいたします。
今後とも、こちらこそよろしくお願いします。