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笹戸千津子「希望」 旭川の野外彫刻(17)

2021年01月18日 08時54分50秒 | 街角と道端のアート
(承前)

 ここで、買物公園をちょっと離れ、4条通を右に曲がって旭川信用金庫本店の前まで数十メートル歩きます。

 国道39号(4条通)に面して正面玄関前にあるのが、この「希望」です。

 「旭川野外彫刻たんさくマップ」によると、1989年作。
 高さ150センチのブロンズ製です。
 旭川信金が創設70周年を記念して、同年設置されました。

 向かって左側に少年、右側に少女。いずれも着衣の立像です。

 2人とも正面をじっと見据えていますが、ミニのワンピースを着た少女は、右手で花束を持ち、ひじを軽く折り曲げています。
 その花束を、少年がすこし前に出した右腕で受け取ろうとしている場面にも見えてきます。

 少年はわずかに右肩を前に出して体を斜めにし、右足も前に踏み出して、いまにも歩き出そうとしているようです。
 一方、少女は両脚をそろえて台座の上に立っており、静的な印象を受けます。

 『あさひかわと彫刻』によれば、笹戸千津子さんは1948年、山口県徳山市に生まれ、東京造形大の彫刻科を卒業しました。
 佐藤忠良のモデルを務め、彫刻制作も師事し、新制作展を中心に発表。
 1987年に中原悌二郎賞優秀賞を受賞しています。

 佐藤忠良の回想によれば、「最後の徒弟制度」で指導された弟子ということで、毎朝かならず師匠よりも早くアトリエに赴いてそうじを済ませ、どんなときでも毎日制作を休まないというきまりを守ったーということです。

 そのまじめな勤勉さが作風にもあらわれていると見るのは、ちょっと深読みのしすぎでしょうか。
 生命感あふれる肢体は師匠ゆずりでしょうが、師匠の作品に時折顔をのぞかせるそこはかとないエロティシズムのようなものは漂わせることなく、どこまでも清新で健全な人物が表現されています。
 だからこそ、とりわけ地方自治体などが忌避する要素のない彫刻作品として、各地に設置されているのでしょう。
 「こんないやらしい裸なんて」みたいな言いがかりのつけようがない作風ですもんね。


 なお、サイト「「旭川の彫刻群」 彫刻散歩のためのリストアップ」などによると、同店ロビーには、佐藤忠良「フードの竜」と舟越保武「その人」があるそうです(金融機関のロビーって、入りやすい印象がありますが、よく考えると平日の午前9時から午後3時までしか開いていないので、意外とアクセスが難しいんですよね)。
 また、銀座支店の前には岩野勇三「まちぼうけ」、東光支店の前には佐藤忠良「亜古」があるそうです。

 さらに、「旭川信用金庫の現況 2012年版(リンク先はpdf)」には、本店3階には佐藤忠良「冬の子供」、東支店には佐藤忠良「ひまわり」があると記されています。
 「その人」以外は子どもの像ですね。
 「その人」は写真で見る限り、晩年に右手が不自由になった舟越が左手で作った首だと思われます。これは一度実見したいなあ。


過去の関連記事へのリンク
笹戸千津子「少女座像」 苫小牧の野外彫刻(15)
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