(2段落目の「陰刻」と「陽刻」があべこべになっていましたので、修正しました。申し訳ありません)
札幌で木版画に取り組む重岡静世さんと中嶋詩子さんによる2人展を見て来ました。
中嶋さんが一般的な陽刻なのに対し、重岡さんは陰刻で、一つの版に複数の色を乗せる技法を使っています。
手法も題材も異なる2人ですが、会場では、画風が近すぎず遠すぎずで、なかなかいいあんばいの雰囲気を作り出しています。
作品数はいずれも24点ですが、これは示し合わせたわけではなく、展示してみたら偶然そうなったとのこと。
冒頭画像は、左が重岡さんの「瓦解」、右が中嶋さんの「夜に舞う」。
重岡さんの作品では、カラスの群れが目を引きます。
ヒマワリに襲いかかるように飛び回り、空を埋め尽くすほどの鳥の大群は、非常に不吉な空気を漂わせます。
明示こそされていませんが、ここ数年の、安全保障法や秘密保護法の成立、沖縄での反基地運動への弾圧といった、社会の息苦しく不穏なムードを反映しているかのように思えるのは、筆者だけでしょうか。
一方、中嶋さんの作品は、道内の山野などでよくみられるオオウバユリが種子を飛び散らかす瞬間をとらえています。
右下後方には、咲いているときのオオウバユリの花が描いています。
シンプルな作品であるだけにいっそう、輝かしい生命の賛歌になっているといえるでしょう。死と再生を表現しているとも解釈できそうです。
重岡さんが装画を描いた、菊地慶一さんの著「1945年 北海道空襲 あの子たちがいた七月」(共同文化社)の原画です。
表紙の子どもや飛行機などが、もともと別々の絵で、それを組み合わせたというのは、今回はじめて知りました。
一方、「1945年 沖縄」は、旧作をトリミングして小さめの作にしたもの。
鉄条網とヒマワリの強烈な対比が、激しい戦争の後に米軍に土地を奪われた沖縄の過酷な運命を鋭く告発していますが、この構図が72年たってもまるで変わっていないことには、怒りを禁じ得ません。
中嶋さんの「ある午後」(左)と「みなも~夏~」。
中嶋さんは、水辺のハスが枯れた様子などを作品にしています。
引いた位置から全体をとらえるのではなく、あえて一部に的を絞り、水面をきりとったような構図が斬新です。たとえば、空や雲を直接表現するのではなく、水面に映ったさまを描いているのが、強い印象を残します。
枯れたハスを表す黒い線が力強く、構図とあいまって、東洋的な詠嘆や感傷性と一線を画した作品にしていると思いました。
「みなも」などでは、ハスとともに、柵を表す黒い線の繰り返しが、効果を挙げています。
このほか、メゾチントや木口木版の作品もあり、中嶋さんの意欲がうかがえます。
絵はがきコーナーもあります。1枚100円なのでお得です。
絵はがきコーナーの上に展示してあるのは、重岡さんの「サロマ湖・冬」「凍るサロマ湖」など、オホーツク地方を題材にした作品。
重岡さんは以前、学校の先生だったそうで「最初の赴任地が佐呂間町だったんですよ」と懐かしそうに話しておられました。
重岡さんは1944年、岩見沢生まれ。
全道展会員。
中嶋さんは48年、国後生まれ。
国展と全道展の会友。
2016年9月1日(木)~24日(土)午前11時~午後6時、日月祝休み
ギャラリー北のモンパルナス(札幌市西区二十四軒4の3 ameblo.jp/kita-mont/ )
・地下鉄東西線「琴似」駅から約350メートル、徒歩5分
・JR琴似駅から約890メートル、徒歩13分
■重岡静世展(2013)
札幌で木版画に取り組む重岡静世さんと中嶋詩子さんによる2人展を見て来ました。
中嶋さんが一般的な陽刻なのに対し、重岡さんは陰刻で、一つの版に複数の色を乗せる技法を使っています。
手法も題材も異なる2人ですが、会場では、画風が近すぎず遠すぎずで、なかなかいいあんばいの雰囲気を作り出しています。
作品数はいずれも24点ですが、これは示し合わせたわけではなく、展示してみたら偶然そうなったとのこと。
冒頭画像は、左が重岡さんの「瓦解」、右が中嶋さんの「夜に舞う」。
重岡さんの作品では、カラスの群れが目を引きます。
ヒマワリに襲いかかるように飛び回り、空を埋め尽くすほどの鳥の大群は、非常に不吉な空気を漂わせます。
明示こそされていませんが、ここ数年の、安全保障法や秘密保護法の成立、沖縄での反基地運動への弾圧といった、社会の息苦しく不穏なムードを反映しているかのように思えるのは、筆者だけでしょうか。
一方、中嶋さんの作品は、道内の山野などでよくみられるオオウバユリが種子を飛び散らかす瞬間をとらえています。
右下後方には、咲いているときのオオウバユリの花が描いています。
シンプルな作品であるだけにいっそう、輝かしい生命の賛歌になっているといえるでしょう。死と再生を表現しているとも解釈できそうです。
重岡さんが装画を描いた、菊地慶一さんの著「1945年 北海道空襲 あの子たちがいた七月」(共同文化社)の原画です。
表紙の子どもや飛行機などが、もともと別々の絵で、それを組み合わせたというのは、今回はじめて知りました。
一方、「1945年 沖縄」は、旧作をトリミングして小さめの作にしたもの。
鉄条網とヒマワリの強烈な対比が、激しい戦争の後に米軍に土地を奪われた沖縄の過酷な運命を鋭く告発していますが、この構図が72年たってもまるで変わっていないことには、怒りを禁じ得ません。
中嶋さんの「ある午後」(左)と「みなも~夏~」。
中嶋さんは、水辺のハスが枯れた様子などを作品にしています。
引いた位置から全体をとらえるのではなく、あえて一部に的を絞り、水面をきりとったような構図が斬新です。たとえば、空や雲を直接表現するのではなく、水面に映ったさまを描いているのが、強い印象を残します。
枯れたハスを表す黒い線が力強く、構図とあいまって、東洋的な詠嘆や感傷性と一線を画した作品にしていると思いました。
「みなも」などでは、ハスとともに、柵を表す黒い線の繰り返しが、効果を挙げています。
このほか、メゾチントや木口木版の作品もあり、中嶋さんの意欲がうかがえます。
絵はがきコーナーもあります。1枚100円なのでお得です。
絵はがきコーナーの上に展示してあるのは、重岡さんの「サロマ湖・冬」「凍るサロマ湖」など、オホーツク地方を題材にした作品。
重岡さんは以前、学校の先生だったそうで「最初の赴任地が佐呂間町だったんですよ」と懐かしそうに話しておられました。
重岡さんは1944年、岩見沢生まれ。
全道展会員。
中嶋さんは48年、国後生まれ。
国展と全道展の会友。
2016年9月1日(木)~24日(土)午前11時~午後6時、日月祝休み
ギャラリー北のモンパルナス(札幌市西区二十四軒4の3 ameblo.jp/kita-mont/ )
・地下鉄東西線「琴似」駅から約350メートル、徒歩5分
・JR琴似駅から約890メートル、徒歩13分
■重岡静世展(2013)