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■Kiri Blue■第56回北海道版画協会展 2015年7月4日(3)

2015年07月11日 23時33分33秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
(承前)

 この日2カ所目はギャラリーたぴお。

 "Kiri BLUE" と題された個展。案内状にも会場にも何も記されていないが、田中季里さんの個展のようだ。
 たぴおのグループ展によく参加している顔ぶれが高齢化しつつある中で、精力的な活動をしている田中さんだが、個展はめずらしい。

 さまざまな形に畳んだ布(だと思う)に青い絵の具を付けて、紙に押しつけた、一種のモノタイプ版画のような作品が、会場の壁にびっしりと並んでいる。

 その中に、小さな立体作品が置かれている。やはり、青い。
 ちょっとインスタレーション的でもある。

 多彩な形状と、濃淡のある青が織りなす世界が、快い。

 3カ所目は大同ギャラリー。
 第56回北海道版画協会展を見る。

 筆者が最初に見てから20年近い月日が経過し、大半のメンバーが入れ替わってしまったことが、まず感慨深い。

 以下、気になった作品。

神田真俊「きせかえ」
 ポップな作風により、道都大中島ゼミ勢が道内各界に浸透する道を切り開いた人のひとり。今作は半ば抽象の作品のようであり、模様の中から手や太った男の立像が見えて来るようでもあり、空撮でとらえた地上の風景のようでもある。

藤林峰夫「冬のしじま 1」
 北大第2農場モデルバーンと思われる木造の大きな建物を題材にした、写実的な木版画。青みを帯びた雪の色と、黄色い満月が対照的で、しんと静まりかえった冬の夜の情景がよくつたわってくる。冬の札幌は雪や曇りの日が多い。満月を見ることができる夜は冬の間に1度あるかないかではないか。それを思うと、この作品の世界がなんだかいとおしく感じられてくる。

兼平浩一郎「Overlay」
 縦長の画面の上から下に向かって白から黒へと微妙に明暗が移ろっていくのがこの絵の基本。そこに、わずかなピンクや黄緑が見えて、まるで夕暮れの光景のように、情感が漂う。

三島英嗣「めばえ」
 シンプルな画面の中、生命の尊さを感じさせる。

 このほか、小田啓介さんはさすがのうまさ。小林大さん「初夏」は、目鼻立ちのはっきりした女性がモチーフだ。

 大ベテラン中谷有逸さんが「碑 万葉集より」という、重厚な作品を出していた。

 早世した金沢一彦さんは「月におどる」「ある樹の物語 II」など3点。
 「ある樹…」は木口木版の大作だ。
 金沢さんの版画は、メルヘン調だが、しみじみと人生を感じさせる。
 もう新作が見られないのかと思うと、残念でならない。


 札幌駅バスターミナルから手稲方面行きのジェイアール北海道バスに乗車。意外と込んでいた。



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