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ミカミイズミ個展■(7) 中島ゼミ展ファイナル×中島ゼミOB・OG展 版と型をめぐって (2018年12月5~9日、札幌)

2018年12月23日 21時17分00秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
(承前)

 このコーナーが個人的にいちばんテンションが上がりました。 

 1999年の個展(札幌時計台ギャラリー)で見て以来19年ぶりに、ミカミイズミさん初期の傑作の数々を再び鑑賞することができたのですから。

 ミカミさんは、いまは星槎道都大で教える側であり、「ワラビモ」などの漫画家であり、ねじを利用して作るアクセサリー「ツールマン」の作者であり、もちろんシルクスクリーンで染色作品を手がけます。
 それらもじゅうぶん、ぶっ飛んだ発想の作品ではありますが、まだ中島ゼミで教わる側だった90年代後半の絵画作品がいちばんぶっ飛んでいたと、筆者は思います。それほどまでに衝撃の作品でした。

 たとえば、冒頭画像の左側「パン田パーキング」。
 ビルの屋上にパンダが一列に並んで、向かいの屋上のパンダたちと糸電話で話をしているのです。いったい、どうしたら、こういう光景を思いつくのかわかりません。
 階下の「ジャイアント劇場」でかかっている映画も「チャックンのむねやけ」など、妙な題がついています。

 


 左は「『このくつ下の色がびみょうにちがうのよ』『仕方ないでしょう』」という長い題。
 上半身裸で、台所で包丁をにぎっている父親と、子どもの会話の場面です。父親が家事に奮闘しているところは時代を先取りしていますが、いろいろ不慣れなのかもしれません。
 しかし、とつぜん部屋にパンダが転がっていたり、天井から得体の知れないものがぶらさがっていたり、細部を見始めるときりがない、奇妙な作品です。

 右の「静電気発生装置(SHS)」も、バスの中でおおぜいの乗客が宙に浮いているという不思議な光景を描いています。



 「コロボン ゴロボン」。
 このころのミカミさんが、クマやパンダが好きだったというのはわかるのですが、それにしてもこれは、いったいなんなんでしょう。
 想像上とはいえ、こんな妙なものがごろごろ転がっている室内があるでしょうか。
 とくに、牛乳瓶10本を載せて床の上を走る小さなトラックのようなものや、大きな口をあけているカエルは、なぞの存在としか言いようがありません。
 よく見ると、部屋の中央に敷かれたラグも、パンダの模様になっています。

 かわいらしさと不気味さ、残酷さが同居しているのは、「ワラビモ」にも共通するミカミイズミさんの作品の特徴です。
 鑑賞者の脳内を腸捻転にしてしまいそうな、怪作だと思います。


 初期のアクリル画はほかに「いってらっしゃいさようなら」「露点に達する」。




 このほか、作品タイトルだけ並べても、「ミカミイズミ世界」の不思議さの一端さは伝わるのではないでしょうか。

「えのきだけ栽培研究所」と題した8枚組みの小品。
「豆屋閉店セール」
「マカダミアノ」「私のゼリー」「ファイヤーキューティクル」

 もちろん「ワラビモ」も1~7巻がありました。
 書店で販売された宝島社版ではなく、最初に出たバージョンです。販売はしていないようでした。




 中央の大きなテキスタイル3枚組みは「123体系」。

 ミカミさんにはこれからも、わけのわからない(ほめ言葉)独自の世界を作り続けてほしいです。


2018年12月5日(水)~9日(日)午前10時~午後7時(最終日午後6時)
札幌市民ギャラリー(中央区南2東6)


ミカミイズミさんツイッター @9090izumon


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