豆腐はそれ自体でうまいが、おでんも、鍋も、すき焼きも脇役として欠かせない。
脇役だが最後はいろんな味を吸って、一番美味しいものになる。
やわらかく純白の姿は、清浄に生まれてきたはずの我が身だ。
それが人生のいろいろを吸収し、ほのかに色もついて豊かな味になっている。
「肉はいらないから、最後の豆腐はくれ」という中高年男は多い。
その豆腐が主役となるのが「湯豆腐」だ。
昆布を敷いた鍋に豆腐を沈めて、温まるだけ。
単純なだけに味わいは奥深く、飽きない。
長い人生にたどりついたのはこれだったか。
これからは湯豆腐だ。