新しい元号が万葉集を典拠としていることを知って本棚の片隅でほこりをかぶっていた岩波文庫の万葉集を取り出してみた。大学に入って間もなくのころ、当時の生協の書店で買ったもの。ほぼ半世紀あいだ、一度も手に取られることはなかったと思う。どういう思いでこの本を買ったのかは全く思い出せない。ただ、このころ和歌に興味があって、隣には古今和歌集が並べてあった。今回のことでもなければ手に取ることも無かっただろう。平成の30年間、ただ本棚の中で眠っていたようなものだ。この本を買った当時のまだ10代の自分にいきなり鉢合わせしたような、妙な気分。いまでは廃れてしまったが当時は文庫本にはセロファンのカバーが掛けてあった。それが傷みもせずにあるということは、この古典を読み込んだ、などとはとても言えない。