（手袋）
‘０４年の一月半ば頃、池袋で映画「半落ち」を観た。
その折、お気に入りの手袋を映画館の中に落としてきたことに、
家に帰ってから気がついた。翌日取りに行こうかと、
カミさんに相談すると、
「そんなもの塵として掃除の時に捨てられてしまうわよ」
という。
諦めた方が早いし、何年も使ったのだから、そろそろ捨て時。
そう自分を納得させた。
濃いグリーンのＵｎｉｔｅｄ Ｃｏｌｏｒ ｏｆ Ｂｅｎｅｔｔｏｎ．とピリオッドまで
書き込みのあることを知っている、頑丈な皮革で出来た手袋。同じような手袋を購入しようとしたが、気に入ったものが無い。
仕方なく、以前カナダ旅行をした時、記念に購入した、
カウチンセーターを編む時に使用する太い毛糸で編んだ
手袋を使うことにした。
この手袋は、指が五本分無く、親指と残り四本とに分かれた
手袋であるが、手編みらしく左右大きさが違うし、甲に編みこまれている
模様も左右大きさが異なる。
日本ではこうした不揃いの商品は、商品として販売されることは
無いが、カナダのインディアンの民芸店では、こうした不揃いのものが、
本物の手づくりとして、重宝がられている。
日本で売られているカウチンセーターなどは、胸に織り込まれて
いる鷹の模様などは、左右対称になっているが、実は本物の手編みは、
インディアンの女性がキチンと何番目から模様が入るなどと、
測って編むわけではないので、模様の大きさや、
図柄が左右対称にならないのが普通という。
また、毛糸をつむぐ時、バッファローの、生の油などつけて紡ぐので、
雨雪にあっても水をはじく。
カウチンセーターをボクが持っていない理由は、
このバッファローの油の臭いが我慢できないし、湿度の高い
日本では、何時虫が湧くか解りませんと、店員に言われたので、
買わなかったのだ。
旅をすると記念に何か購入するのであるが、さすがのボクも
セーターを止めて手袋にした。梅雨時など手袋はしないが、
よく洗って油を落としたつもりでも、タンスを開けるとプーンと
いやな臭いがする。納豆のような臭いである。これが本物という。
しかし冬に使用すると臭いは無く、暖かいが、五本指がないので、
なかなか利用する機会は少ない。
現役時代に会社に一度、手袋を持って行ったが、引出しにしまうと、
臭いが染み付くので、机の上に出しておいた。
昼食から帰ると、女子社員が数人ボクの机の周りに集まっていて、
例の手袋を持ち上げ、何か話している。
何を話したか聞いてみると、どうもこの手袋は、カミさんが
編んだものらしいと、言うことだった。
それにしても編み方が下手で、左右大きさも違えば、
手の甲に当たる部分にある模様の大きさも違うから、
編み物ずいぶん下手だということだった。
彼女たちがもし亭主に編む手袋ならもっと上手に編むし、
左右大きさが違う手袋なんて、恥ずかしくて亭主にさせられない。
別の人は、模様や大きさが違うからこそ、妻の手編みであることが
はっきりし、模様や大きさが違っても、全く意に介せず、
身に着ける旦那が素晴らしいと、意見が分かれたという。
映画館に落としてきた手袋に話を戻そう。
一箇月後、つまり先週の土曜日、映画「ラストサムライ」を
カミさんと見に行った。
その帰りに手袋のことを思い出し、無くてもともとと、
映画館の受付を訪ねた。
親切にも、忘れ物一覧表を持ってきて、探してくれた。
落し物は、ずいぶん沢山あるものだ。眼鏡に、携帯電話、
傘に、冬らしくマフラー、手袋は沢山ある。
どれがボクの分か見分けがつかない。
いつ頃、何を見たときか、色は何か、特徴は？
厳しくチェックされた。
時期と特徴、Ｕｎｉｔｅｄ Ｃｏｌｏｒ ｏｆ Ｂｅｎｅｔｔｏｎ．の文字があり
最後にピリオッドがあること、色は濃いグリーンが
決め手になって、忘れ物一覧表から発見された。
忘れたというか、落としたというか、その手袋が一ヶ月も後に
出てきた。とても嬉しかった。
落し物を届けてくださった方、そして小さな映画館の素敵な対応と
お気に入りの手袋が出てきたことに感謝した。
東京の、いかがわしいお店が立ち並ぶ繁華街で、誰もがありえないと
思っていることが、素直で正直な人達の行動により、
良い結末を迎えることが出来た。
まだまだ、日本は捨てたものじゃない。
沢山の忘れ物をした人たちよ！
そんなものあるわけ無いだろう！
なんて考えずに、なくしたと思われる場所へ行って、
尋ねてみよう！！
丁寧に保管していらっしゃる人たちに迷惑を掛けないように！
善意のあふれる人たちに、「有難う！」と感謝しながら！！
‘０４年の一月半ば頃、池袋で映画「半落ち」を観た。
その折、お気に入りの手袋を映画館の中に落としてきたことに、
家に帰ってから気がついた。翌日取りに行こうかと、
カミさんに相談すると、
「そんなもの塵として掃除の時に捨てられてしまうわよ」
という。
諦めた方が早いし、何年も使ったのだから、そろそろ捨て時。
そう自分を納得させた。
濃いグリーンのＵｎｉｔｅｄ Ｃｏｌｏｒ ｏｆ Ｂｅｎｅｔｔｏｎ．とピリオッドまで
書き込みのあることを知っている、頑丈な皮革で出来た手袋。同じような手袋を購入しようとしたが、気に入ったものが無い。
仕方なく、以前カナダ旅行をした時、記念に購入した、
カウチンセーターを編む時に使用する太い毛糸で編んだ
手袋を使うことにした。
この手袋は、指が五本分無く、親指と残り四本とに分かれた
手袋であるが、手編みらしく左右大きさが違うし、甲に編みこまれている
模様も左右大きさが異なる。
日本ではこうした不揃いの商品は、商品として販売されることは
無いが、カナダのインディアンの民芸店では、こうした不揃いのものが、
本物の手づくりとして、重宝がられている。
日本で売られているカウチンセーターなどは、胸に織り込まれて
いる鷹の模様などは、左右対称になっているが、実は本物の手編みは、
インディアンの女性がキチンと何番目から模様が入るなどと、
測って編むわけではないので、模様の大きさや、
図柄が左右対称にならないのが普通という。
また、毛糸をつむぐ時、バッファローの、生の油などつけて紡ぐので、
雨雪にあっても水をはじく。
カウチンセーターをボクが持っていない理由は、
このバッファローの油の臭いが我慢できないし、湿度の高い
日本では、何時虫が湧くか解りませんと、店員に言われたので、
買わなかったのだ。
旅をすると記念に何か購入するのであるが、さすがのボクも
セーターを止めて手袋にした。梅雨時など手袋はしないが、
よく洗って油を落としたつもりでも、タンスを開けるとプーンと
いやな臭いがする。納豆のような臭いである。これが本物という。
しかし冬に使用すると臭いは無く、暖かいが、五本指がないので、
なかなか利用する機会は少ない。
現役時代に会社に一度、手袋を持って行ったが、引出しにしまうと、
臭いが染み付くので、机の上に出しておいた。
昼食から帰ると、女子社員が数人ボクの机の周りに集まっていて、
例の手袋を持ち上げ、何か話している。
何を話したか聞いてみると、どうもこの手袋は、カミさんが
編んだものらしいと、言うことだった。
それにしても編み方が下手で、左右大きさも違えば、
手の甲に当たる部分にある模様の大きさも違うから、
編み物ずいぶん下手だということだった。
彼女たちがもし亭主に編む手袋ならもっと上手に編むし、
左右大きさが違う手袋なんて、恥ずかしくて亭主にさせられない。
別の人は、模様や大きさが違うからこそ、妻の手編みであることが
はっきりし、模様や大きさが違っても、全く意に介せず、
身に着ける旦那が素晴らしいと、意見が分かれたという。
映画館に落としてきた手袋に話を戻そう。
一箇月後、つまり先週の土曜日、映画「ラストサムライ」を
カミさんと見に行った。
その帰りに手袋のことを思い出し、無くてもともとと、
映画館の受付を訪ねた。
親切にも、忘れ物一覧表を持ってきて、探してくれた。
落し物は、ずいぶん沢山あるものだ。眼鏡に、携帯電話、
傘に、冬らしくマフラー、手袋は沢山ある。
どれがボクの分か見分けがつかない。
いつ頃、何を見たときか、色は何か、特徴は？
厳しくチェックされた。
時期と特徴、Ｕｎｉｔｅｄ Ｃｏｌｏｒ ｏｆ Ｂｅｎｅｔｔｏｎ．の文字があり
最後にピリオッドがあること、色は濃いグリーンが
決め手になって、忘れ物一覧表から発見された。
忘れたというか、落としたというか、その手袋が一ヶ月も後に
出てきた。とても嬉しかった。
落し物を届けてくださった方、そして小さな映画館の素敵な対応と
お気に入りの手袋が出てきたことに感謝した。
東京の、いかがわしいお店が立ち並ぶ繁華街で、誰もがありえないと
思っていることが、素直で正直な人達の行動により、
良い結末を迎えることが出来た。
まだまだ、日本は捨てたものじゃない。
沢山の忘れ物をした人たちよ！
そんなものあるわけ無いだろう！
なんて考えずに、なくしたと思われる場所へ行って、
尋ねてみよう！！
丁寧に保管していらっしゃる人たちに迷惑を掛けないように！
善意のあふれる人たちに、「有難う！」と感謝しながら！！
