(タイ)
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(アユタヤの遺跡)
ツアーとはいえ、添乗員もなしの夫婦二人だけで
外国に行くには、それなりに覚悟がいる。
2002年11月の事である。
今までは旅行社の添乗員が一緒であったから、
お金と着替えがあれば、
海外旅行は、何も心配することなく、
添乗員について回れば事足りた。
今回は、ぼく達二人だけの旅行。
ホテルと乗り物、現地案内人は予約済の旅行。
まず、言葉の問題がある。
ついで心配なのは、旅が常に予定通り進行するかどうかである。
1.ホテルは間違いなく確保できているか。
2.航空機が予定通り到着すればよし、到着しなかった場合、
出迎えの現地案人と上手くコンタクトが取れるか。
3.出迎え人がいないときは、地理も言葉もわからないのに
どうやってホテルに行くのか。
4.タクシーに乗るにしても、どこでタクシーが拾えるか。
5.現地通貨と空港で両替ができるか。
などなど。
成田空港で搭乗口が変更になっているのも知らずに、
出発時刻10分前に搭乗口に着いたら、
行き先も違えば航空会社も違う搭乗口になっていた。
あわてて出発時刻表を見ると、
ボクが載る飛行機は、
別棟の搭乗口に変更になっている。
飛行場は、通常の場合、搭乗口に進んだ後、
飛行機に乗ってお客様は外国に旅立つ。
したがって、搭乗口に向かう案内は懇切丁寧で判りやすいが、
別棟に戻るには、逆行することになるから、
案内は皆無といってよい。
逆行する人たちというのは、
空港内で働く人たちがほとんどで、
ボクたちのように搭乗口が変更になって、
戻る人ぐらいしかいない。
空港内に働く人たちは旅行客と比べれば圧倒的に人数が少ないし、
空港内を良く知っているから、
戻るための案内なんかいらない。
海外旅行を始めて間もないぼく達夫婦が、
出口を一所懸命探したが見つからず、
やむなく案内嬢のお世話になると、
指差して
「あそこのドアーの向こうの階段を上がって、
突き当りを右へ、
指差されたそのドアーを出ると通路になっている」という。
「戻り口」なんて案内があるはずも無い。
逆行するときはエスカレーターも無く、
しかも登り階段である。
やっとの思いで、変更になった搭乗口に着くと、
出発時刻間際なのに、
狭い場所に乗客があふれている。
何のことは無い飛行機の出発が遅れているのだ。
旅行社との約束では、
「旅行社の予定に変更など、
旅行中不具合があったらすぐ連絡してください」
ということになっていたので、
航空機の出発時刻と搭乗口が変更になったので
電話をすることにした。
電話に出た旅行社のお兄さんいわく、
「それくらいの変更は連絡いただかなくても結構です」と。
ボクが短気なのは天下一品で、
プラスとマイナスの電線をつなぎ合わせると
火花が飛ぶほどの速さである。
相手の応答も悪いが、
悪戦苦闘して変更になった搭乗口に着いた直後で、
ボクの腹の虫の居所が悪かったのが重なって、
「今は20分の遅れであるが、
これが2時間だったらどうなんだ!
到着時間は遅れ、到着先で待っている現地係員だって
待っているかどうか判らないだろう!」
怒鳴りつけてしまった。
いい歳をして、
後で「しまった、もう少し穏やかに話すのだった」
と後悔したがすでに遅し、
いつもの事ながらカミサンに笑われてしまった。
当然のことで到着時間は大幅に遅れ、
現地案内人の方は待ちくたびれた様子であった。
仕事とはいえ現地ガイドさんも災難である。
災難はさらに続く。
その日の夕食は、
本場のトムヤンクンをいただく予定になっていた。
夕食を飛行機の中でたらふく食べてしまった後であったので、
トムヤンクンなぞどうでも良かったが、
これがツアーの悪いところで、
約束の予定を現地の方は確実に消化しなければならない。
もし消化しておかないと、
この後仕事が来なくなる。
ところが飛行機の遅れで、
レストランは店じまいのところが多く、
やっと見つけたレストランでいただいた
世界三大スープのトムヤンクンは、
美味しかったが、
ボクたちにとって世界最低のスープに感じられた。
翌朝、約70キロも自動車を走らせて、
アユタヤ遺跡についた。
この遺跡は、お釈迦様のお墓であるという。
エジプトのピラミッドには及ばないが、
それでも二百人は埋葬できるのではないかと思われる、
小山ほどの大きさのお墓であった。
夕陽が沈むアユタヤの遺跡は、
黄金に輝き荘厳な美しさで、
息を呑んだ。
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(*)世界三大スープとは、
トムヤンクン(タイ)、ブイヤベース(フランス)、ふかひれスープ(中国)
(タイ旅行のアルバムはつづく)