そうなんだ。

外国語で知ったこと。

なほざり   古語

2013-11-29 13:00:00 | 語学
 ~文章上達のカギは、とにかく 『書くこと』 である~

文章講座及びテクニック本で必ず授かるアドバイスです。
そうでしょうけれど
文章をひたすら書き続けているうちに、おざなりの文章に
なってしまわないのでしょうか?

おざなり・・・。 あれっ? なおざり?
どちらの言い方でしたっけ・・・。

両者とも“いい加減”という意味では共通でした。
その“いい加減さ”に根本的な違いがあります。

おざなり・・・テキトーに何かをするいい加減さ

なおざり・・・何もしない・放置するいい加減さ

いい加減に書いた文章は “おざなりの文章” で、その文章を
書きっ放しにしている状態を
“おざなりの文章をなおざりにしている”
と表現するのでしょう。

“なおざり” の元は “なほざり” で古語辞典に載っている
古い日本語です。
953年頃には完成したと言われている 『後撰和歌集』 
の句のひとつが紹介されていました。

なほざりに 秋の山辺を 越え来れば 織らぬ錦を 着ぬ人ぞなき

訳:注意を払うことなく秋の山辺を越えて来たので、織らない錦を
  着ていない人のいないことよ

なんのこっちゃ・・・という方のために

“注意を払うことなく” というのは、落ち葉が肩に舞落ちたり
服に付いたりするのをそのままにして(放置して)山を越えて
きたのでしょう。 紅葉を羽織に例えた織り物の衣類ではない 
“織ってない錦” を着ていない人はいない。

“みんな葉っぱの服を着ているね” という歌です。

辺り一面の鮮やかな色彩が目に浮かびます。
天皇の命にて編纂された勅撰和歌集に載っただけあって
美しく表現されている和歌です。

1300年鎌倉時代末期の吉田兼好 『徒然草』 より。

よき人は ひとえに好けるさまにも見えず 興ずるさまもなほざりなり

訳:教養ある人は、そればかり好んでいるという様子も見せず
  楽しんでいる姿もあっさりしている。

“なほざり” は “あっさりしている” と訳されていますが
この “あっさり” は “楽しんでいる心を表現しない・なにもしないで
放置している” というところから来るのでしょう。

古語としての使われ方を知ったことで、味わい深い言葉に聞こえてきました。
この“なおざり” という単語・・・
・・・おざなりには使えません。












コメント (4)
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