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コメ作りすぎは、もったいない?

2008-03-04 22:55:38 | その他社会・時事
「コメ作りすぎ、ムダ」農政局ポスター 掲示ボイコット続々 (河北新報) - goo ニュース

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 東北農政局が転作を促そうと作製した「米の作りすぎは、もったいない!」のポスターが、生産者の怒りを買っている。「ばかにするな」との批判が多く、不評を気にして張り出しを中止した自治体や団体もある。ポスターそのものが無駄になるもったいない事態に、関係者は「生産者の話を親身に聞かないと、協力は得られない」と農政局の配慮不足を指摘している。

 ポスターは青森県津軽平野の背景に、「MOTTAINAI」「米の過剰作付けは、資源のムダづかいです」と大きく記されている。文言は農政局職員が考案し、3万部を作製した。2月中下旬までに東北各県や市町村、農協に発送した。経費は40万円。

 農政局の宮坂亘局長は「内容について庁内では特に異論はなかった」と言うが、生産者はいらだちを募らせている。
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私は、このポスターはやはり農家への配慮に欠けていると思う。
日本の農業は今、誰が見ても壊滅寸前の状況にある。すでに10年前のデータだが、農業生産額が日本経済(GDP)に占める比率は3%以下でパチンコ産業のGDP総額より低いという事実があった。また当時の日本の農業者人口は300万人で、そのうち3分の2に当たる200万人が65歳以上という衝撃的な数字が関係者を震撼させた。

現在はここからすでに10年経っており、70歳以上がコメ農家の大半を占める事態になっているはずだ。後継者がいなければあと10年後、日本のコメ農業は確実に消える。

10年前、前述の衝撃的データが発表された頃も「10年後には日本のコメ農業はない」と言われた。つまり、今ごろ農業はなくなっているはずだった。が、幸いにして70歳以上の高齢者層の頑張りで日本のコメ農業はなんとか踏みとどまっている。
彼らがここまでコメ作りに執念を燃やす理由はいくつかある。先祖代々のコメ作りを自分の代で途絶えさせてはならないという思いや、戦後の厳しい食糧難に直面した経験から、何をおいても食料を作ることが国民福祉だという考え方などいろいろな要素が重なり合い、農民たちは歯を食いしばって生産を続けている。

そんな農民たちに向かって「コメ作りは無駄、もったいない」とはなんというひどい仕打ちだろう。農家が怒るのは当然であり、ポスターはもっと穏健なものに作り替えた方がよい。

そもそも、ここ数年で世界の食糧事情も一変している。一国で世界人口の4分の1を占める中国が、急激な経済成長によって食料輸出国から輸入国へ変わった。そうなった原因としては、食生活の質的向上があるわけだが(注)、日本人はこうした事実を将来の食糧危機への確実なステップが踏まれたものとして、もっと危機感をもって受け止めるべきだと思う。
自給率がカロリーベースで40%を割り込む状況にありながら、日本は、今なお札束さえ積めばいつでもどこからでも食料は調達できると信じ込んでいる。しかし世界の現実は、札束を積んでも買うべき食料がない、という事態へ向かって確実に進んでいる。その時に、日本人が食べられるものはコメと芋だけになってしまう。国内自給ができるコメと芋だけしか食べられないのである。

海外からの食料調達がすべてストップし、日本人がコメと芋しか食べられないという事態が現実になったとき、コメの供給量が今の水準で足りるかどうか。私は全く足りないと見る。
それを判断するには、日本人が肉をほとんど食べなかった戦前の食糧事情を見てみるのがよい。1920~30年代頃、日本の人口は8000万人程度だったが、この人口で日本は1年間に1600万トンのコメを消費していた。現在、日本の人口は1億2000万人であり、当時の1.5倍になっているから、当時と同じコメ・雑穀と野菜中心の食生活に戻るなら、コメは実に年間2400万トンも必要な計算になる。これに対し、現在のコメ生産量は最も誇張したデータでも年間1000万~1200万トンだろう。つまり、食糧危機が迫ったとき、コメ生産量は現在の2倍も必要になるのである。

コメの需要が減り、減反してもしても余って仕方がないというが、それは日本人の食生活が多様化してコメの占める比率が下がっているからそのような現象が起こっているに過ぎないのであり、日本の食糧事情はこのように脆く、危ういものだ。
こんな時に、日本にとって唯一自給が可能な食料であるコメを作らないでどうするのか。むしろもっともっと作れと奨励しなければならないのである。
その結果、コメが余るなら余らせておけばよい。余ったコメは味噌、醤油、せんべいなどの加工用に転用する(これは現在でも行われている)、放牧家畜の飼料に使う(現在研究が進んでいる)、輸出するなど活用方法はいくらでもある。

とにかくいろいろな手法を用いながら、いつでも国民の食を満たせるだけのコメ生産水準を確保しておくことこそが、真の食料安全保障なのである。

(注)食生活の質的向上について
人間が穀物を食べて摂るのと同じカロリーを、肉を食べて摂ろうとすれば必要な穀物量は7倍になるといわれる。すなわち、牛などの家畜は大量の穀物を消費する反面、人間に提供できるカロリーは少ないわけである。このことは、中国やインドなどの大消費国で肉料理の比率が高まれば、実際の人口増加を上回るペースで食糧需給が逼迫することを示している。

とはいえ、日米などの先進国が、自分たちは贅沢な食生活をしながら、中国やインドにだけ我慢しろと主張して国際世論の支持が得られるわけもないから、結論はおのずから導き出される。世界の食料需給を緩和するためには、世界中の人々が肉中心の食生活を改め、野菜・雑穀中心のそれへ転換しなければならないということである。

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