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【尼崎事故】歴代3社長の起訴求め遺族が審査申し立て

2009-08-21 23:13:23 | 鉄道・公共交通/安全問題
遺族が検審申し立て JR西旧経営陣3人起訴求め(神戸新聞) - goo ニュース

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 2005年4月、乗客ら107人が死亡した尼崎JR脱線事故で、JR西日本の元会長井手正敬氏(74)、前会長南谷昌二郎氏(68)、前社長垣内剛氏(65)の3人について、遺族20家族35人が21日、神戸地検が不起訴処分としたことを不服とし、神戸検察審査会に審査を申し立てた。


 今後、市民11人で構成する検察審査会が旧経営トップ3人の刑事責任の有無を判断する。5月の法改正で、検察審査会が2度起訴相当を議決すると、自動的に起訴される。

 3人は1992年以降の歴代会長や社長。申立書によると、井手氏らが高速化、事業合理化、経費徹底削減の3点を経営戦略とし、上意下達の組織運営方針を固めたことが事故の背景にあると主張。余裕のないダイヤ編成や極端な人員削減、懲罰的な日勤教育などが「居眠りやブレーキ操作の遅れなど、運転士によるミス発生の危険を高めた」と指摘した。

 3人は、安全対策の根幹にかかわる部分については厳正な監督責任を負う地位にありながら順守するべき安全体制を確立する義務を怠り、高速化を進めた過失があるとしている。

 神戸地検は今年7月、安全対策を統括する鉄道本部長を務めていた山崎正夫社長(66)が、事故を予見できる立場にありながら自動列車停止装置(ATS)の設置を怠ったとして業務上過失致死傷罪で在宅起訴。井手氏らについては「危険性を予見できるだけの情報を知らなかった」として、不起訴にした。

 事故当時、井手氏は同社相談役、南谷氏は会長、垣内氏は社長。井手氏は事故後務めた子会社顧問の契約期間が終了し、南谷、垣内両氏は顧問だったが、現在は嘱託社員になっている。
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歴代3社長の起訴求め遺族が審査申し立て JR脱線事故(朝日新聞)

 107人が死亡した05年4月のJR宝塚線(福知山線)脱線事故で、遺族35人が21日、業務上過失致死傷容疑で告訴されたJR西日本の井手正敬(まさたか)・元会長(74)と南谷(なんや)昌二郎・前会長(68)、垣内剛(たけし)・前社長(65)の歴代社長3人を不起訴(嫌疑不十分)とした神戸地検の処分を不当として、神戸検察審査会に審査を申し立てた。地検が立件を断念した「過密ダイヤ」や「日勤教育」などの問題点を挙げ、これらを実行、放置した歴代社長に刑事責任があると主張している。

 事故は運転士(死亡)が制限速度を超えて急カーブに進入したことが直接的な原因とされる。神戸地検は7月8日、96年の現場カーブつけ替え時に自動列車停止装置(ATS)の設置を怠ったとして、当時の鉄道本部長だった山崎正夫社長(66)1人を業務上過失致死傷罪で在宅起訴。当時の社長だった井手氏ら3人については「山崎氏に安全対策の業務執行権限を委任していた」などとして起訴しなかった。

 これに対し申立書は、3人が社長任期中、社内の総合安全推進委の委員長だったことに言及し、「安全対策の根幹については厳正な監督責任を負う」と指摘。事故の背景に、収益拡大のため安全対策よりスピードアップや経費削減を優先させたJR西の企業風土があったとし、こうした経営方針は井手氏が打ち立て、南谷、垣内両氏が継承したとした。

 3人の具体的な行為として、時間を短縮した余裕のないダイヤで列車を運行させた▽ミスをした乗務員に課せられる懲罰的な日勤教育を放置した▽約2万人の人員削減で世代間の技術継承を困難にした――ことなどを挙げた。

 そのうえで、運転士のミスや脱線事故の危険性を予見できたのに急カーブにつけ替えられた事故現場でATS整備を怠ったと指摘。「3人が行き過ぎた利益重視の戦略を推し進めた結果、事故を発生させた」と主張している。
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すでに言い尽くしてきたが、尼崎事故の背景にはJR西日本の利益最優先、安全軽視の企業体質がある。

「同業他社を凌ぐ強い体質づくり 私たちは、常に創意工夫に努め、同業他社を凌ぐ強い体質づくりに、持てる力の全てを発揮します」というJR西日本の「経営理念」は、1987年のJR西日本発足当時に定められたものだが、井手氏はこのとき副社長の立場にあった。井手氏がこの企業理念の策定に大きな影響力を発揮したのは明らかである。井手氏に「安全軽視、利益最優先の企業体質と自分とは関係ない」などとは絶対に言わせない。

井手氏に関しては、こんな証言もある。『国鉄改革の真実』(葛西敬之・JR東海会長著)によれば、国鉄「改革」当時、「国鉄改革三羽ガラス」(井手氏、葛西氏、松田昌士・JR東日本元社長)で最年長だった井手氏は自分がJR東日本に行けると信じていたそうだ。だが、運輸省(当時)の思惑でJR東日本初代社長が住田正二・元運輸事務次官に内定したとき、彼らと杉浦喬也・国鉄総裁は「次期あるを期する」と誓い合い、その次を狙っていたという。

多数の国鉄職員を首切りし、残った者にも故郷を捨てさせる広域配転を強いながら、自分たちは会社の垣根を越えた幹部ポストのたらい回しを狙っていたというのだ。

しかも、会社間の垣根を越えた幹部ポストのたらい回しが叶わないとわかると、井手氏は方針を変え、JR西日本をJR東日本や東海並みに利益の上がる企業にするため、その体質を強引に変えようとした。垣内氏や南谷氏はそうした実態を知りながらそれに協力した。

しかし、利益を上げられるのは新幹線と関西周辺の幹線のみで、旧特定地方交通線(廃止対象路線)とほとんど変わらないほどの経営成績でしかないローカル線を中国地方に多く抱えるJR西日本が、東海や東日本のような利益を上げることはもとより不可能だった。そこで、利益を上げるために安全投資が削られることになった。尼崎事故はこのような経過をたどって起きたのである。

このような経過を考えれば、尼崎事故のA級戦犯が井手氏であることは間違いない。「同業他社を凌ぐ強い体質づくり」の経営理念策定に中心的に関わりながらJR会社間の垣根を越えた幹部ポストのたらい回しをはかり、それが実現しないとわかると今度は安全投資を削ってまで利益を上げようとした井手氏、その取り巻きとして協力し、みずからも日勤教育を強力に推進した南谷・垣内両氏の罪は、いくら強調しても決してし過ぎることはない。

このような堕落と腐敗の限りを尽くした経営陣のせいで愛する人を殺された遺族が怒るのは当然だ。当ブログは遺族の行動を全面的に支持する。彼らを裁くことのできる法律がないなら作ればいい。いつまでも法の不備をいいことに、多くの人を死に至らしめた公共交通の事故の責任が問われないとするならば、それはもはや文明国ではない。

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