(以下の文章は、私がある知人に書き送ったもので、「大変興味深い」との感想をいただいたので、以下、転載します。)
今回の統一地方選、全体としては、私たち市民派にとって自民党以上に「好ましからざる勢力」の日本維新の会が躍進しました。好ましい面としては、与野党、左右、老若問わず女性が躍進したことです。私が個人的に感じたことを書きます。
<今回の統一地方選の特徴その1:「世襲・高齢・多選」「女性・若者躍進」の二極化>
統一地方選全体を通じて、地域・自治体の「二極化」が進んでいるように感じました。左右、上下、貧富といった昔のようなわかりやすい階層・イデオロギーによる分断でなく、①世襲、高齢、多選批判なんのその、世襲、高齢、多選政治家ほど楽々当選する自治体、②世襲、高齢、多選に対する強い批判で女性、若者が躍進する自治体--の二極化が進んだことです。詳しく分析したわけではありませんが、もともと①に属していた地域・自治体では世襲、高齢、多選がさらに進む一方、もともと②の傾向があった地域・自治体では、女性、若者の躍進がさらに進む--という形で、「①世襲・高齢・多選の町」「②女性・若者躍進の町」の二極化が鮮明になってきた感があります。
かつて(10年くらい前まで)は、①②のほぼ中間領域に位置し、どちらにも分類できない地域・自治体が多くありました。しかし、ここ数年、過密・過疎がさらに進んだ結果、中間領域に属していた地域・自治体が次第に①②のどちらかに収斂して行っているように感じます。
②の典型例は、手厚い子育て支援と、その裏腹の相次ぐ「暴言」で有名になった泉房穂・前市長の後継指名を受けた女性が当選した兵庫県明石市や、女性議員が半数を超えた兵庫県宝塚市議会、東京都杉並区議会などです。特に杉並区は、女性区長(岸本聡子さん)に、半数以上が女性の区議会が対峙する--という、日本では歴史上あまり例がない事態を迎えることになります。
逆に、①に属する自治体は全国至る所にあります。地方議員の「なり手不足」が言われているところはたいていこのパターンです。閉鎖性・排他性に嫌気がさし、女性・若者が町を出て行ってしまい、定着しないため、持続可能性に赤信号が灯っています。平たく言えば「10年後に滅びる町」です。
今回、みなさんにはご自分の住む町や周辺の町、また自分が関心や注目を寄せている町でどんな人たちが当選しているか、よく見てください。もし当選者が①のパターンになっているなら、その町は10年後に滅びます。
<補論:自治体の適正規模について>
今回の統一地方選では「自治体の適正規模」が見えてきた感じがします。上で私が挙げた②の典型例、つまり「女性・若者が躍進している町」の人口規模を見ると、明石市29万人、宝塚市22万人、杉並区56万人--と、おおむね20~50万人規模の自治体に集中しています。女性や若者の意見が取り入れられ、多様性も尊重された結果、民主主義が適切に機能する人口規模が見えてきました。
これより人口が多いと(100万人以上)、住民ひとりひとりの顔が見えなくなり、きめ細かな住民サービスを行うことが難しくなります。一方で、これより人口が少ないと(20万人未満)、密室で町を取り仕切る「地域ボス」が生まれ、やはり民主主義は機能しなくなります。
「地域ボス」に密室で町を仕切られないよう、多数による監視が働く程度に大きく、ひとりひとりの顔が見え、きめ細かな住民サービスが行き届く程度に小さい--これが民主主義が機能する条件であることが見えてきました。市町村のうち「市」には政令指定都市(認定基準人口100万人)、中核市(同50万人)、特例市(同20万人)がありますが、中核市・特例市クラスが民主主義が機能する自治体として最も適正な規模といえそうです。
<今回の統一地方選の特徴その2:組織政党の明らかな退潮>
一方で、今回の選挙では、自民・公明・共産のような、大勝もしない代わりに大敗もしない「安定の組織政党」が揃って退潮傾向を見せたことも大きな特徴です。自民党・公明党は統一協会問題や物価高批判、共産党は党員除名問題が響いていると思っていました。一般的には、投票率が下がっている今回のような選挙の場合、固定票を持っている組織型政党が有利のはずです。にもかかわらず、組織型政党が揃って退潮していることの説明がつきません。
ところが、前回(2019年)から今回の統一地方選までの4年間が丸々、コロナ禍だったという点を考慮すると、組織型政党が、通常は有利なはずの低投票率下の選挙で揃って退潮傾向を示した原因が見えてきます。
これら「組織型政党」は、対面型の選挙運動を全面展開してこそ最大のパワーを発揮します。どぶ板をこまめに踏み、手が筋肉痛になるまで有権者と握手し倒して1票1票、獲得していくのがこれら組織型政党の選挙運動です。コロナ禍で対面での運動が十分できなかったことが、組織型政党に不利に働いたという面を、こと今回の選挙に関しては見逃すことができないように思います。
今回がコロナ禍による「特殊事例」だったかどうかは、4年後の次の選挙で明らかになるでしょう。対面型選挙運動が通常通りにできるようになり、これら組織型政党が盛り返すのか、それとも退潮傾向が続くかによって、この先20~30年の大まかな流れが決まるでしょう。
今回の統一地方選、全体としては、私たち市民派にとって自民党以上に「好ましからざる勢力」の日本維新の会が躍進しました。好ましい面としては、与野党、左右、老若問わず女性が躍進したことです。私が個人的に感じたことを書きます。
<今回の統一地方選の特徴その1:「世襲・高齢・多選」「女性・若者躍進」の二極化>
統一地方選全体を通じて、地域・自治体の「二極化」が進んでいるように感じました。左右、上下、貧富といった昔のようなわかりやすい階層・イデオロギーによる分断でなく、①世襲、高齢、多選批判なんのその、世襲、高齢、多選政治家ほど楽々当選する自治体、②世襲、高齢、多選に対する強い批判で女性、若者が躍進する自治体--の二極化が進んだことです。詳しく分析したわけではありませんが、もともと①に属していた地域・自治体では世襲、高齢、多選がさらに進む一方、もともと②の傾向があった地域・自治体では、女性、若者の躍進がさらに進む--という形で、「①世襲・高齢・多選の町」「②女性・若者躍進の町」の二極化が鮮明になってきた感があります。
かつて(10年くらい前まで)は、①②のほぼ中間領域に位置し、どちらにも分類できない地域・自治体が多くありました。しかし、ここ数年、過密・過疎がさらに進んだ結果、中間領域に属していた地域・自治体が次第に①②のどちらかに収斂して行っているように感じます。
②の典型例は、手厚い子育て支援と、その裏腹の相次ぐ「暴言」で有名になった泉房穂・前市長の後継指名を受けた女性が当選した兵庫県明石市や、女性議員が半数を超えた兵庫県宝塚市議会、東京都杉並区議会などです。特に杉並区は、女性区長(岸本聡子さん)に、半数以上が女性の区議会が対峙する--という、日本では歴史上あまり例がない事態を迎えることになります。
逆に、①に属する自治体は全国至る所にあります。地方議員の「なり手不足」が言われているところはたいていこのパターンです。閉鎖性・排他性に嫌気がさし、女性・若者が町を出て行ってしまい、定着しないため、持続可能性に赤信号が灯っています。平たく言えば「10年後に滅びる町」です。
今回、みなさんにはご自分の住む町や周辺の町、また自分が関心や注目を寄せている町でどんな人たちが当選しているか、よく見てください。もし当選者が①のパターンになっているなら、その町は10年後に滅びます。
<補論:自治体の適正規模について>
今回の統一地方選では「自治体の適正規模」が見えてきた感じがします。上で私が挙げた②の典型例、つまり「女性・若者が躍進している町」の人口規模を見ると、明石市29万人、宝塚市22万人、杉並区56万人--と、おおむね20~50万人規模の自治体に集中しています。女性や若者の意見が取り入れられ、多様性も尊重された結果、民主主義が適切に機能する人口規模が見えてきました。
これより人口が多いと(100万人以上)、住民ひとりひとりの顔が見えなくなり、きめ細かな住民サービスを行うことが難しくなります。一方で、これより人口が少ないと(20万人未満)、密室で町を取り仕切る「地域ボス」が生まれ、やはり民主主義は機能しなくなります。
「地域ボス」に密室で町を仕切られないよう、多数による監視が働く程度に大きく、ひとりひとりの顔が見え、きめ細かな住民サービスが行き届く程度に小さい--これが民主主義が機能する条件であることが見えてきました。市町村のうち「市」には政令指定都市(認定基準人口100万人)、中核市(同50万人)、特例市(同20万人)がありますが、中核市・特例市クラスが民主主義が機能する自治体として最も適正な規模といえそうです。
<今回の統一地方選の特徴その2:組織政党の明らかな退潮>
一方で、今回の選挙では、自民・公明・共産のような、大勝もしない代わりに大敗もしない「安定の組織政党」が揃って退潮傾向を見せたことも大きな特徴です。自民党・公明党は統一協会問題や物価高批判、共産党は党員除名問題が響いていると思っていました。一般的には、投票率が下がっている今回のような選挙の場合、固定票を持っている組織型政党が有利のはずです。にもかかわらず、組織型政党が揃って退潮していることの説明がつきません。
ところが、前回(2019年)から今回の統一地方選までの4年間が丸々、コロナ禍だったという点を考慮すると、組織型政党が、通常は有利なはずの低投票率下の選挙で揃って退潮傾向を示した原因が見えてきます。
これら「組織型政党」は、対面型の選挙運動を全面展開してこそ最大のパワーを発揮します。どぶ板をこまめに踏み、手が筋肉痛になるまで有権者と握手し倒して1票1票、獲得していくのがこれら組織型政党の選挙運動です。コロナ禍で対面での運動が十分できなかったことが、組織型政党に不利に働いたという面を、こと今回の選挙に関しては見逃すことができないように思います。
今回がコロナ禍による「特殊事例」だったかどうかは、4年後の次の選挙で明らかになるでしょう。対面型選挙運動が通常通りにできるようになり、これら組織型政党が盛り返すのか、それとも退潮傾向が続くかによって、この先20~30年の大まかな流れが決まるでしょう。