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指差呼称

2021-05-01 | 安全、安心、
指差呼称  「安全・安心の心理学」より
———指先と口先で安全の確認

●視差呼称
危険予知訓練とならんで、指差呼称訓練は、安全研修の切り札の一つである。
注意すべき対象を指で差し、思い通りの状態になっているかどうかを確認して呼称するだけのことであるが、これが安全確認には効果がある。
旧国鉄の誰かが発明したらしい。社史の編纂でもする機会に、そのルーツを探してみてほしいものだが、それはさておくとして、ここでは、その指差し確認の心理学的な意味づけをしておくことにする。

●確認を確実に
確認行為を確実におこなうことは、うっかりミスを事故につなげないためには必須であるが、その確認行為もいつも万全というわけではない。そこで、確認行為をより確実なものにすることが求められることになる。
人はいつでも何かをするときには、そうするための意図、おおげさに言うなら行為計画を持っている。だからこそ、その意図と違った行為をした時には、ただちに訂正行為をおこなう。ところが、「意図」と「ただちに」のところで、確認をおそそかにさせるものがある。
まず、行為意図である。いつもいつも何かをするときに、そのことを明示的に意識しているわけではない。食事をするような習慣的な行為の時は、ほとんど行為意図を意識することなしにさまざまな行為がおこなわれる。コーヒーの中に砂糖を入れてしまった時にはじめて行為意図を意識して、しまったとなり訂正行為をする。
やってしまってから訂正すればほとんどのうっかりミスは事なきをえるのだが、車の運転のように事態が時間的に常に切迫している時では、エラーがただちに事故につながってしまう可能性が高くなる。「ただちに」訂正しても間に合わないのである。ちょっとした脇見が魔の一瞬になりがちなのである。

●指差呼称は、ダブルチェックである
 いつものように部屋に施錠する。この段階でも、少なくとも無意識のうちに確認行為をしていることに注意されたい。さらに、鍵を指で差して「施錠よし」と呼称する。施錠を確認するという意図が、指差呼称という行為によって確実に(2重に)おこなわれることになる。
これなら、最初の行為意図が明確に意識化されていない時でも、指差呼称の段階で確認行為の意図ははっきりと意識化できるので、いわば一人でするダブルチェックになっている。

●さらに指差呼称にはどんな効果が期待できるか
指差呼称では、指で差すことで、そこに注意を焦点化することになる。注意を焦点化すれば、それだけ情報処理は効率的かつ精緻になる。ぼんやりしていたら見えなかったものが見えることもある。
これが指差呼称の効果の一つである。さらに、行為の意識化の効果も期待できる。習慣的な行為は意識的な努力をせずとも自動的にどんどんおこなわれていく。いつもと状況が同じなら何も問題ない。しかし、状況は時々刻々と変化する。コンロでお湯をわかそうと火をつけたら、子供が泣き出してしまうこともある。インターフーンに対応しなければならないこともある。
こんな時でも、コンロの火の消化というような、事故と直結する行為は必ず指差確認、と決めている(習慣づけている)なら、魔の一瞬を未然に防ぐことができる。
行為の意識化効果に付随して、行為が記憶に残る効果もある。よくあるのは、施錠したかどうか、火を消したかどうかがはっきりしないために、もう一度、部屋に戻って確認するというケースである。
現実モニタリングの混乱と呼ばれている現象である。意識的な努力なしにおこなう行為は、現実モニタリングが適切になされないために、こうしたことがおこってしまう。指で差して口で言うような行為は、しっかりと記憶もされているので、混乱は起こらない。
指差呼称の4つ目の効果は、行動調整効果である。指で差す、口に出すという行為、やや大げさな感じがするが、それが、習慣的になにげなくやっている一連の行為の流れを調整することに役立っている。危険、事故に直結する行為の直前では、指差呼称を必ずおこなうような仕掛けが必要である。
 指差呼称の効果の最後は、周囲の人との情報の共有である。仕事をするような時には、周囲に仲間がいる。そうした人々に、自分の行為が目に見える、音に聞こえる形で示せることの利点は大きい。とりわけ、組織の安全風土の醸成には寄与するところが大きい。

●指差呼称の形骸化
指差呼称の効果をたくさん挙げきた。ところが、効果があるからいつでもどこでも指差呼称を、というわけにもいかないのである。それは、指差呼称ばかりしていると、それが形骸化してしまって、普通の習慣的な行為と一緒ということになりがちなのである。指差呼称はしているものの、その行為の実質が伴わないである。
形骸化の克服はなかなか難しい。指差呼称をより複雑にするとか、他の確認行為とセットにするとかといった確認の多重構造化も考えられるが、それがひどくなると、確認のために仕事が停滞してしまうというパラドックスに陥ってしまう。(K)

 



目撃「安全・安心の心理学」新曜社

2021-04-29 | 安全、安心、
「安全・安心の心理学」新曜社

目撃———自信のある誤った目撃に要注意

●目撃情報は大事
犯罪の犯人探しのための一つの有力な方策の一つが、目撃者を探すことである。時折、目撃情報を求める立て看板を道路で見かけることもある。
最近は、監視カメラが人による目撃の一部を補完するようになったが、人による目撃も貴重な情報を提供してくれる。
アメリカでバスに乗っていたときに、接触事故が起こった。運転手は車を止めてすぐに乗客に白紙を渡しはじめた。何人かの乗客がそれをとった。目撃証言ができる人の電話番号を集めるためであった。

●目撃の特徴
 我々は、犯行や災害や事故の「後」を見ること/聞くことは多いが、事件、災害、事故が発生した瞬間、ましてやそれが起こるまでの過程をみずから目撃することはほとんどない。
 それだけに、その現場での人による目撃は貴重である。これには、当事者による直接目撃と周辺者による間接目撃とがある。いずれの目撃にも共通しているのは、その時その場でのごく短時間の、しかも、恐怖の感情にとらわれた出来事を見聞きしてそれを一定時間後に想起することである。ところが、想起は思いの外、脆弱なので、本人は真実を述べているつもりでも、そこにはさまざまな歪曲が忍び込んでくるので、扱いがなかなか難しい。
 直接目撃は、出来事に巻き込まれてしまっているだけに、その証言には、フラッシュブルブ記憶的な要素が入りがちである。つまり、その時その場での一瞬の光景をあたかもフラッシュバルブをたいてとった写真のごとく鮮明に思い出せるが、まさにその一瞬だけの想起、ということがある。出来事の流れを正確に想起できることはあまり期待できない。
 これに対して、間接目撃は、出来事を第三者的に観察できる立場にはいるが、やはりフラッシュバルブ的な記憶になってしまうケースも多い。したがって、事の一部始終を見聞きしてることはまれである。事が起こった後から、そう言えば、こんな事があった、という証言になる。後づけ想起である。
 したがって、断片的ではあるが、その出来事にとって意味があるとその人が解釈した「編集された」情報ばかりが出てくることになる。これに拍車をかけるのが、マスコミ報道である。自分の目撃とマスコミ報道との整合性がとれるような方向への変化さえ起こってしまうことがある。
 不審者情報がその典型である。警察による意図的なリークもあるのだと思うが、最近、立て続けに発生した幼児殺害事件の報道内容をみていると、いわゆる不審者に関する情報が実に多く報道される。ところが、犯人がつかっまってみると、それらの不審者情報はほとんど無関係ということがわかることが多い。

●目撃証言
 今手元に「目撃者の心理学」という大著がある。その目次を列挙してみたので、ざっと眺めてほしい。
 アメリカの法廷には、記憶心理学者が引っ張り出されて、目撃証言の信憑性についての証言が求められることが多い。そのためもあって、目撃証言の心理学的研究も盛んである。日本でも、「法と心理学会」もでき、しかも平成21年度までに、陪審員制度に似た裁判員制度も始まることもあって、ようやく研究が活発化する兆しがある。
 閑話休題。目撃証言は、前述したように、直接、間接にかかわらず、それ単独では、信憑性の点で難点がある。  
 しかも、さらに誘導尋問効果として知られている現象もある。目撃情報を引き出す時の尋ね方によって、内容がゆがめられてしまうのである。たとえば、「その不審な車は」と聞くのと「その車は」と聞くのとでは、思い出す内容が異なってしまうのである。
 それでも、一人の人から何回かの繰り返し証言を求めたり、多くの人から目撃者証言を集めることができれば、そして、さまざまな証拠と照合したりすることで、おのずと真実が見えてくるところはある。

注1 最近、地震や事故が起こった瞬間からあとにさかのぼって20秒間程度、映像を再生できるような装置が普及しはじめた。事故原因な発生までの過程を探るのには強力な道具である。

注2 想起で起こる5つの歪曲(編集)
①調和的編集 現在の自分の考えや感情と調和するように編集する
②変化編集 自分が変化した方向にふさわしいように思い出す
③後知恵編集 結果が分かった現在にふさわしいように想起する
④利己的編集 自分の都合のいいように思い出す
⑤ステレオタイプ編集 世間一般の考えに合わせて思い出す
いずれも、意識的に歪曲しているわけではない。
(D.シャクターによる)

注3 Sporer,S.L.ら1996(箱田祐司ら訳)「目撃者の心理学」ブレーン出版
第1章 序;間違った犯人識別200年
第2章 目撃証言の法的諸局面
第3章 目撃者要因、目標人物要因、状況要因が目撃者識別に与える影響
第4章 人物記述の心理学的諸相
第5章 顔の再生—方法と問題
第6章 人間とコンピュータによる音声の識別
第7章 他人種効果と目撃者による識別
第8章 目撃記憶の促進
第9章 ラインナップ研究の裁判への応用
第10章 子どもの人物識別
第11章 高齢の目撃者
第12章 目撃に関する実験心理学研究;理論と方法
第13章 結語
 


 





安全・安心の心理学 2011-04-20 | 安全、安心、 ワードマップ 安全・安心の心理

2021-04-20 | 安全、安心、
安全・安心の心理学
2011-04-20 | 安全、安心、


ワードマップ 安全・安心の心理学―リスク社会を生き抜く心の技法48
クリエーター情報なし
新曜社
@@@@

第1部 危険予知の心の技法
第2部 安全保持の心の技法
第3部 危険対処の心の技法
第4部 安全・安心回復の心の技法





見ない、触らない医者

2021-04-11 | 安全、安心、
手がこんなにはれて、といっても、一瞥さえしない。
聴診器での触診さえ、してもらったことがない。
肩が痛いと整形にいったら何もせず3回,1か月ほっておかれた<<これは、完全な誤審ともいえる行為

などなど

最近の医療、検査と医薬に依存し過ぎていないかなー



過剰安全———安全にコストをかけ過ぎる?

2021-04-08 | 安全、安心、
05/11/26
「安心・安全の心理学」2部 新曜社 より

過剰安全———安全にコストをかけ過ぎる

●危険から隔離する
最近のプラットホームは、新幹線のように、線路とホームの間に仕切りドアが設置されるようになってきた。道路でも歩行者と車の分離がなされるようになってきた。危険から人を隔離する設備である。安全のためには好ましい環境である。
しかし、お金がかかっているであろうことは、容易に推測できる。安全をお金で買う象徴的な設備である。多分、その効果は、年に1人か2人のホーム転落者、事故被害者を救うくらいであろう。だからこその必要なコストと考えるか、それくらいの危険率ならもっと安上がりでと考えるか。これがここでの話である。

●安全にかけるコスト
大は原子力発電所から小は家庭まで、安全にはそれなりのコストをかけている。リスク工学に従うまでもなく、どれくらいのコストをかけるかは、危険の発生率と程度の見積もりによることになる。
保険業界には、そのあたりを査定するための精緻な数学的公式があると思われるが、一般には、そんな面倒な計算はしない。直感的な見積もりに従って、安全のためのコストを計算して実践している。
直観的な見積りなので、そこに関与する要因はきわめて心理的である。家庭で言うなら、「最近、犯罪が増えているから鍵をもう一つ」「地震が多いので家具留めを追加しよう」「寝る前の安全確認をもっときちんと」となるが、どこまでコストをかけて安全対策をすれば十分かの判断は、その人の体験や犯罪恐怖や災害不安などにかかっている。

●安全のコスト・パフォーマンス
安全を保持するには、それなりのコストをかけなければならないのは当然のことである。しかし、企業論理、あるいは損得論理からすれば、コストをかけたらそれによるパフォーマンスを考えるのも、これまた当然である。これが、コスト・パフォーマンスという考えである。安全コストの計算には、このコスト・パフォーマンスの考えも強く入っている。
一般的に言うなら、安全が長期間にわたって持続しているときには、コストあたりのパフォーマンスを高く見積もる。つまり少ないコストで安全を保とうとする。安全が脅かされると、あるいは脅かされる不安が高まると、パフォーマンスを度外視してでも安全のためのコストを注ぐことになる。
このあたりはシーソーゲームのようなものである。コストとパフォーマンスのバランスが崩れると、安全が脅かされるか、次に述べる過剰安全という事態になる。
もっとも、安全だけは、こうした考えからはずすべし、という極論もないわけではない。行政分野では、コスト意識が希薄なので、こうした考えが受け入れられやすい。これも過剰安全を押し進めることになる。

●安全が過剰
 空港での身体検査は、テロ防止対策のために一層その厳しさを増している。そこに設置されている機器もさることながら、チェックの仕事にかかわっている人々の多さには驚く。また、道路工事には最近は必ず警備員がつく。
いずれも安全のためのコストを押し上げているが、統計をみるまでもなく、その効果(パフォーマンス)は上がっていることは容易に推測がつく。
しかし、一方では、それほどまでにお金をかけてそこまでやらなくともという感じも抱くことがある。
ホーム全体を覆ってしまったり、セキュイティ対策のため送金額の上限を定めたり、複雑な手順を踏まないと使えないパソコン、何段階ものチェックシステムなどなど。
これらすべてを過剰安全と言うわけではない。ただ、安全対策は、想定される危険を念頭に置いて立てられるので、その想定範囲や想定される危険の程度の見積もりが、安全対策を講ずる側と、それを守らされる側とで必ずしも一致しないことが多い。銀行などの例にみられるように、危険の発生が責任問題、保障問題と直結するような場合には、安全対策を講ずる側の見積もりがかなり高くなりので、過剰安全ではないかとの思いを、守らされる側は持つ。
 
●やや過剰かなくらいが丁度良い
安全であるほど安全対策には目がいかない。したがって、コストもかけない。そこをねらうかのようにして、危険が突然襲いかかってくる。
したがって、安全対策はやや過剰かな、と思われるくらいで丁度良い。それによって発生する不便は、それこそ、安全のための心理的、行動的なコストとして我慢するしかない。
 ただ、過剰安全が危険ゼロを目ざすまでになると、世の中が円滑に動かなくなる。挑戦心が殺がれることにもなる。もっと恐ろしいのは、安全帝国主義と呼ぶにふさわしい事態の発生である。安全を錦の御旗に、有無を言わせぬ権力をふるうような事態である。行政権力の中にこうした傾向があるで、警戒したい。(K)

 







 
 


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危険予知————安全を先取りする

2021-04-02 | 安全、安心、
05/9/13

危険予知————安全を先取りする

●安全を先取りする
危険に遭遇してからでは間に合わない。かりに間に合っても、うまく対処できないこともある。そこで、あらかじめ想定できる危険の芽は摘み取ってしまおうというのが、危険予知の考えである。いわば、安全の先取りである。
むろん、こんなことが完璧にできるわけではない。人間の予知能力には限界があるし、状況のほうも時々刻々と変化し危険を潜在化してしまうからである。それでも、やらないよりはまし、さらに上手にやれば、危険回避には強力な方策の一つになることは間違いない。

●危険予知力を構成するもの
 危険予知力を構成する要素には「危険察知力」と「危険回避力」の2つがある。
 まず、危険察知力から。
 状況の中に潜在する危険を察知し、それへの対処をあらかじめ的確に予測できる力である。これも、さらに2つからなる。
一つは、しかるべき状況に入る前のオフライン危険察知力である。仕事をする前、スポーツをする前などに、想定内の危険を指摘できる力である。次章で取り上げるKYT(危険予知訓練)では、もっぱらこちらの予知力の養成を行う。危険との時間的、空間的距離が大きいのが一つの特徴である。
2つは、状況の中でのオンライン危険察知力である。今現在自分がいる状況の中で危険を発生する可能性を事前に察知する力である。最近では、現場力*の一つとして、その劣化が指摘されている。危険との時間的、空間的距離が小さいのが特徴である。
 危険察知力に加えて、危険回避力も大事である。
 必要に応じて想定される危険に応じて、それをどう回避するのがよいか、万が一、危険に遭遇してしまった時の適切対処を考えることができる力である。
オフライン危険察知での危険回避力としては、次の2つ。
・あらかじめ想定される危険の発生を押さえる対策を取る
・危険情報を共有することで危険回避行動を取る
オンライン危険察知での危険回避力としては、次の2つ。
・その発生を認識して周囲に報知する
・行為の中止、状況の進行停止も含めた危険の発生を押さえる適切な緊急行動をとる

●危険予知力を支える基盤能力
 危険予知は、すぐれて人の推論能力に依存しておこなわれる。その推測能力を支えるものとしては、次のようなものがある。
①危険についての知識
 どこにどんな危険が潜んでいるかについて、知識として知っているかどうかは、危険予知の質の基礎をなす。たとえば、雨中で夕方にどんな交通事故が多いのを知識として持っているかどうかである。当然、知識の有無によって、危険予知の内容は異なり、したがって、実際の運転も代わってくる。
②危険についての体験
 危険体験はヒヤリハット体験も含めても、それほど多くはない。多いとすれば、それは、自分か回りに何か問題があるので早急な点検が必要である。
危険体験は多くはないが、それでも、皆無という人もまれであろう。そこで、数少ない危険体験を危険予知に有効に活かす方策を考えることになる。
予期図式という考え方がある。危険予知に関する予期図式とは、過去の危険体験の結果として、眼前の危険を察知してそれに対処するための構造化された知識のまとまりである。この予期図式は、オンライン察知力と回避力の鍵となる。
予期図式は、しかし、教えられて身につく知識ではない。一種の勘のようなものである。長年にわたり、その状況(現場)で体験を通して作られる現場力の一つである。
③危険想像力
危険予知は、推論に加えて、これから起こるであろう危険についてあれこれと想像してみる力も必要である。状況を限定してもそこで起こるであろう危険のすべてをあらかじめ予知することは無理であるが、それでも想像力を働かせて、あれこれと危険について思いをめぐらしてみることは、無駄ではない。知識の活性化にも役立つし、危険に対する感受性を高める効果も期待できる。
④状況認識力
オンライン危険察知には、状況認識力は必須である。いつもと同じなのか、どこかに危険信号がないかを瞬時に見きわめる力である。予期
図式は知識駆動であるが、状況認識力は状況駆動である。いつもと機械の音が違う、何か臭う、といったような個別感覚ベースの認識と、さらに、状況全体をパターン(ゲシュタルト)としてとらえる認識とがある。

●残りはあと5行******
(K)

 
***
脚注
******
図 危険予知力の構成
        オフライン危険察知力
危険察知力  
    オンライン危険察知力
危険回避力

****
 現場力
 製造業の工場長227人を対象としたアンケートの結果によると
(日経ビジネス2004年3月8日号)
「現場の力が落ちていると感じているか」と聞かれ
そう思うと答えた割合が、54.2%
「技術の伝承や教育体制の不備で、働く人に十分な知識や経験が与えられていない」と指摘した割合が、71.7.%。









第2.危険予知力の到達目標 <中学校>

 
「到達目標」
●危険察知力
○オフライン
・しかるべき想定される状況で、危険の存在とその内容を複数個指摘できる
・それぞれについて、対処、回避の仕方を複数個指摘でき
○オンライン
・実際の危険が存在する状況で、それを指摘できる
・周囲にそのことを知らせることができる

●危険回避力
○いくつかの状況において、みずから、危険予知行動ができる

  
 




恐れ ———恐れが安全を保証する

2021-04-01 | 安全、安心、
05/11/14=228文字を含む)

恐れ ———恐れが安全を保証する

●恐れが消費を動かす
これは、05年11月8日付け朝日新聞朝刊の見出しである。この見出しのもとで、東急エージェンシーの調査結果を紹介している。
20代から50代800人の回答として、「自然災害への備え」73%、「凶悪する犯罪への対応」44%、「生活の安全を守るためのセキュイティ対策」41%が、トップ3であったとのことである。
安心、安全が保証されていると感じているときには、人はそれを求めない。こうした調査結果が出てくるのは、よほど、安心、安全が脅かされているとの感じを人々が強く持っていることの証であろう。

●恐れの感情を分析する
 恐れは、不安と違って、対象がはっきりしている。地震が怖い、火事が怖いとなる。それだけに、あらかじめそれになりに対処できる。
前出の調査でも、「2重ロック」「地震保険」「ホームセキュイティ」がトップ3の対処方策になっているのは、恐れの対象がそれなりはっきりしているからに他ならない。もっとも「地震保険」だけは、事後対処になるのだが。
恐れの感情には、本能的、つまり人に生来的に備わっているものに由来するものと、体験によって作られるものに由来するものとがある。
本能的な恐れとは、生命を脅かすものが身の回りに近づいた時に感ずるものである。地震や自然災害などのような突発的な環境変化、未知の対象と突然の遭遇の接近は、誰にも恐れを感じさせる。**注1
もう一つの体験に由来する恐れの感情とは、地震や自然災害に対する恐れにも一部あるのだが、過去に自分が体験した被害体験がベースになっているものである。交通事故を体験した人は、車に対して人一倍、恐れを感ずるはずである。
いずれについても、知識が恐れを作り出すこともある。とりわけ、マスコミ報道などを通して得られる知識は、恐れの感情を広く浅く人々の間に伝播する。

●恐れを活用する
危険を恐れることによって、あらかじめ危険に備えることは大事である。安心、安全の行政施策としても、恐怖キャンペーンは定番である。「こんな怖いことがあるから、こんな備えを」はそれなりに有効である。**恐怖キャンペーンの例を脚注に**
交通事故を恐れる人は、慎重な運転を心がける。地震を恐れる人は、地震対策をしっかりとする。
しかし、恐れも結局は個人の感情であるから個人差がある。恐れの感情が弱い人、つまり勇敢な人もいる。また、体験も人それぞれなので恐れの対象にもかなり個人差がある。したがって、いつも恐怖キャンペーンが効を奏するとは限らない。

●無謀な人への対策
 車を運転していても、実に無謀な人がいる。速度制限なにするものぞ、追い越し禁止車線こそ追い越し時とでも思っているかのような無理な追い越しなどなど。危険きわまりないが、それこそが運転の醍醐味のように思っているらしいのでやっかいである。しかも、無謀運転は、注意を集中してやっているので、ただちに事故、ということにはならないだけに余計、事が面倒である。
法規違反には厳重対処してほしいものだが、取り締まりにも限度がある。免許更新時などの通り一片の教育の効果も期待できない。
無謀な人は、災害、防犯にもあまり関心がない。その時はその時という諦観もあるだろう。危険に怖じ気づくのもいさぎよしとしないとの思いもあるかもしれない。
リスク・テーキングな(危険を見込んでの)行動には、一般に、ポジティブで挑戦的というイメージがある。スポーツや研究開発などでは、その通りである。スポーツや研究開発が、安心、安全第一ではまるで面白くないし、創造的な発明発見は期待できない。
しかし、事が安心、安全にかかわる領域では、リスクのある行動は、不安全行動に直結するので、厳に戒められている。ハインリッヒの法則*注2 を持ち出すまでもなく、不安全行動の放任は、いずれ必ず取り返しのつかない事故につながってしまうからである。
対策としては、早い時期からの安心、安全教育の教育くらいしか思いつかない。それも、危険体験をさせることが必須であるが、その危険性におびえてしまって学校ではなかなか手が出せないのが現状である。これは、家庭の責任でおこなうしかない。
 
●恐れに怯えない
恐れも過度になると、生活に支障をきたす。それだけが気になって恐れへの対処で日々をびくびくして過ごすことになる。
恐れの実現は確率問題である。直下型地震の発生を恐れてそれなりの備えをすることは大事であるが、そのために日常生活を劇的に変えたりするのはやりすぎである。
気持ちのどこかに、その時はその時、という居直り感があってもよい。あるいは、これだけ備えたのだから大丈夫、ということもあってよい。
一人で恐れていると、恐れが恐れを呼んでしまうことがある。窓中鍵だらけ、それでも恐ろしくてーーーとなりがちである。可能な限り、安心、安全のためには、人とのつながりを保つことも大事である。(K)



*注1 感情と情動の区別は心理学でもややあいまいである。ここでは、恐れは感情、恐怖は情動を意味する。情動とはその時その場での全身体的な反応であるのに対して、感情は状況から一定の時間的、物理的な距離をおいた穏やかに持続する気持ちである。

注2 ハインリッヒの法則

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2021-02-10 | 安全、安心、
安全工学上の工夫


①フール・プルーフ
ミスにつながる行動が無意識のうちに行われないようにすること
例)
・パソコンのデスクトップの「ゴミ箱」は、データを入れても完全に消去されない
・電子レンジはドアを閉めないと加熱されない


②インターロック
☆決まった手順で操作しないと稼働しないように設計すること
例)・ロックを外さないとお湯が出ない電気ポット
  ・ドアを閉じなければアクセルベタルを踏めない自動車


③アフォーダンス
☆物をどのように取り扱ったらいいかのメッセージをもののデザインに組み込むこと
例)・ドアのノブがないところでは、必ず向こう側に押して開けるようになる
  ・登ると危険な坂道を回避するために階段をつけると、自然と階段を使う

④リダンダンシー
☆あらかじめ「余裕」「余地」をとることでリスクを低減させること
例)・飛行機は、1つのエンジンが壊れても対応できるよう設計される
  ・災害時に備えて、通常の道路とは別の経路を設けておく

⑤多重防護
☆何重にも安全対策を施しておくこと
例)・原子力発電所では、異常を防止する・異常発生時に拡大させない
  ・事故に至った時に影響を少なくするといった何重もの安全対策を講じて     いる
  ・重要な決定事項については、判断に誤りがないように何重にも稟議を回す