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職場の安全管理体制に関するチェック項目

2020-08-20 | 安全、安心、
05/11/29


職場の安全管理体制に関するチェック項目(全20項目)
(電力中央研究所ヒューマンファクター研究センター「安全文化の実践」より)(カテゴリー化は海保による。番号は元のもの)

 
●安全使命の徹底 
⑬「職場を快適にしていこう」という企業としての意志が感じられますか?
⑭経営層のビジョンが明確ですか?
⑮経営層は、職場の安全性向上に理解がありますか?職場の安全性は結果だけで評価されていませんか?
⑳安全性を向上させるために、組織の各層(経営陣・管理職・一般職)がそれぞれ「自分たちがどのような役割を果たすべきか」を知っていますか?

●ヒヤリハット、不具合、インシデントの分析と対処
①事故・トラブルが発生した時、その原因を分析・報告する明確な管理体制がありますか?
②蓄積された事故・トラブル情報の共通要因を探り、その分析結果が公表され、職場に活用される体制が整っていますか?
⑤誰かがヒヤリハットを経験したり、危険な作業場所を発見した場合、誰に報告すればよいかきめられていますか?

●安全情報の流通環境 
⑥ヒヤリハットや危険な作業場所が報告された場合、その情報が職場内で共有されて、改善に活かされていますか?
⑯企業内の情報流通はうまくいっていますか? 情報が縦方向(上層から下層)、横方向へとスムーズに流れますか?
⑰組織の下層から上層へも情報がスムーズに上がりますか? 横方向(例えば他部署・他部門など)に積極的に情報を取りにいっていますか?

●安全にかかわる人事評価 
⑨推奨される行動をとった従業員には、何らかの報酬(表彰、上司からの激励、職場での公表など)がありますか?
⑩推奨されない行動をとった従業員には、何らかの警告(罰則、上司からの指導)をしたり、職場内で改善策が話し合われたりしますか?
⑱日常の安全活動を積極的に実施することが、組織の中で評価されていますか(報奨が与えられたり、人事面で評価されたりしますか)?
⑲安全活動が効果的に機能しているかどうかが評価されていますか?

●安全保持努力  
③事故・トラブルがなくても、自分たちの職場の安全点検を日々行っていますか?
④無事故・無災害が続けば職場は安全だと思いますか?
⑦安全管理規則はわかりやすく、職場で浸透していますか?
⑧従業員としてとるべき行動、とってはいけない行動が明確に示されていますか?
⑪仕事のやり方に疑問はありませんか?こうすればもっと安全に、しかも効率的になると思うことはありますか? そう思った時、それを職場に提案できますか?
⑫“⑪”で提案したことは、実際の改善に活かされますか? 職場内でその提案が共有されますか?



安全・安心の心」(旧)

2020-08-09 | 安全、安心、
05/11/24

安全・安心の心


           ———安全も安心も心の問題としてみると
●安全、安心は人の基本的な欲求
図に示すマズロー*の5段階の欲求階層説はよく知られている。人は自己実現を目ざして成長していく存在ととらえ、その過程で、4つの欲求満足の段階を踏むとするものである。
この2段階目に、「安全(safety)と安心(stability)」の欲求満足がある。これが満たされた上での、自己実現へ向けてのさらなる成長ができるというのである。
「安全と安心」は、このように、人にとっての基本的な欲求の一つなのである。それが今、脅かされつつある(満たされない)日本社会は、このままほっておけば、自己実現が脅かされることにもなりかねない。

●安全と安心を保証するもの
 「安全と安心」の欲求に限らないが、およそどんな欲求も、すぐれて人の内部の心の問題である。しかし、それが保証されるためには、人をとりまく状況の力も大きい。「安全と安心」の心をもたらすのは、幼児であれば、親からの愛に満ちたケアーであるし、大人であれば、よそから侵害を受けない、いつもと同じ安定した生活環境である。
しかし、だからといって状況の力の強さにだけ目を向けば、「安全と安心」にまつわる問題は、解決するというわけではない。人の心にも充分に配慮する必要がある。人の心への配慮を欠いた「安全と安心」環境の設計は、へたをすると自己実現を妨げるものになってしまう可能性もあるからである。
たとえば、危険を恐れて子供を家の中に閉じこめてしまったり、失敗を恐れて挑戦的な仕事をしなくなってしまったりでは、本末転倒である。

●安全と安心は手段である
マズローもそうであるが、「安全と安心」は、それ自体が目的ではない。「安全と安心」ができる環境で、何かを達成することがねらいである。「安全と安心」はあくまで手段でしかない。誤解を恐れずに言うなら、仕事の内容、たとえば、戦争などでは、「安全と安心」は手段としては最適でないこともある。
「安全と安心」を自己目的化してしまうと、過度の法律的な規制、自由闊達な行動の抑制、些末安全主義への傾斜、リスクを恐れた保守主義が跋扈してしまう恐れもある。

●安全と安心を組み合わせてみると
「安全と安心」は、実は一体ではない。やや強引であるが、それをあえて直交させてみたのが、図である。安全の反対語「危険」、安心の反対語「不安」で4つの象限に分けてみた。こうしてみると、「安全と安心」は、ごく一部の世界をとらえているだけで、他にも関連する世界のあることに気づかされる。
第2象限「安全と不安」な世界は、遊園地などの遊具に作り込まれている。恐怖に耐えられるかどうかの不安が、遊具での楽しみを深めている。
第4象限「安心と危険」な世界は、旅客機に代表されるように、最新技術を駆使しての便益と安全の提供の一方では、ひとたび何かがあればすべて終わりという世界である。高度技術社会では、こうした世界が拡大の一途をたどっている。
第3象限「危険と不安」な世界は、「安全と安心」な世界の対極になる。この世界を極小化し、「安全と安心」の世界を極大化することが、「安全と安心」の科学や施策の大きなねらいとなる。また、個人の心の問題として、「危険と不安」を心の底に抱いてこそ「安全と安心」への努力がなされることになる。その際、第2象限,第3象限のような世界の存在も忘れてはないことを、この分類は教える。
●不安は安全の番人
 安全な状態が続くと、人は誰しもが安心する。しかし、それがあまりに長く続くと、安全を確保するための工夫や努力が次第になされなくり、安全を脅かす事が起こりやすくなる。そして、心の不安も高まってくる。それが危険の発生を防ぐ工夫と努力をさせることになる。
このように、不安は、安全の心理的な番人のような役割を果たしている。ところが、不安も安全馴れしてしまうと、感度が鈍くなってくる。それを防ぐには、1部で述べる危険予知力を磨くことであるが、ごく日常的な努力としては、事故、災害、犯罪のニュース内容をできるだけ自分の身に引きつけて考える習慣をつけることである。幸いなことに?、ニュース報道では必ず何件かのそうしたニュースを報道してくれる。これを活かすのである。(K)


 

図 「安全対危険」と「安心対不安」とを
組み合わせてみると
     安全
旅客機       警察


不安—————————安心
 BSE        
 戦争
    危険

脚注*
Maslow,A 1943  「A  theory of  human motivation」 Psychological
Review,50, 370-396

図****
自己実現
承認と自尊心
所属と愛情
安全と安定*
生理的満足
*マズローは、safety & stabilityとしているが、もっぱらsafety needに言及している。



あれこれ同時にやるとミスが起こりやすい「安全・安心の心理学」

2020-07-31 | 安全、安心、

あれこれ同時にやるとミスが起こりやすい

 当たり前のことですが、我々は、よくよく考えると、実に巧みにいくつかの仕事を同時に行っています。
・歩きながら音楽を聞きゲームをする
・運転しながら隣の人と会話する
・TVを見ながら料理し、子どもを見守る
これを多重課題と呼びます。これをしている本人の中の頭のなかでは、複数の課題に巧妙に集中力を分割して使っている状態です。
 ここでは、能動的な集中力と受動的な集中力とがせめぎあいをしています。そのせめぎ合いの中で、ミスが多発することになります。

●多重課題事態でのミス防止のための集中対策
①自分の聖徳太子度を知る
 自分はてきぱき仕事ができると自負しているような人は、だいたい多重課題をこなすのが巧みです。さらに次のような項目に当てはまる人も多重課題が好きなほうです。
・何かしながら人の話を聞くことが多い
・電話などの割り込みがあまり気にならない
・ながら族である
・あれこれ気くばりをするほう
 こうした人は、周りからの評価が高く、自分でも有能感にかられやすいところがあります。しかし、集中力を目一杯使って、しかも頻繁に集中力を向けるところを変えますから、周囲からのちょっともう一つの割り込みで集中力が乱れミスを犯すことになります。
 たとえば、運転の難しい個所での同乗者との会話、細かい作業中の携帯電話の呼び出し音などなど。
 というわけで、リスクの高い仕事をしているときには、聖徳太子の真似はしないと決め込むのがよいことになります。
  • 大事なものに集中力を向ける方策を工夫する
多重課題状態にしないのが王道です。一つの仕事をしているときに割り込みがあっても、無視するか、待ってもらうことです。
さらに、自分の頭のなかとの多重課題化も要注意です。たくさんの患者からあれこれの頼みごとを記憶にとどめながらの目先の仕事をするような状態は危険です。
こんなときは、外化が有効です。看護師が手のひらメモでしのいでいるのを病棟でみたことがありますが、記憶情報を外に出して見えるようにしておくのは、非常に有効です。
あるいは、状況によっては、「作業中です。話かけないでください」の看板を立て戦略もあってよいと思います。ある職場では、集中タイムに入っていることを周りに知らせるために風船を上げるそうです。それがあがっているときは、話しかけられたりしないので、仕事に集中できるそうです。
  • 自動化している行為との多重課題にも要注意
歩きながらの携帯電話や脇見もまぎれもない多重課題なのですが、歩くほうにはほとんで自動的で無意識的なので集中力はほとんど使いません。したがって、携帯電話や脇見にその分、集中力を割くことができます。しかし、たとえば、携帯電話での話が込み入ったものになると、そちらに集中力を余分にとられてしまい、歩くほうに振り向ける集中力が足りなくなってしまいます。かくしてちょっとした段差につまずいてころんでしまうことになります。
自動化した行為が自動的に実行できるような状況でも、こういうことがあるので、多重課題は、避けるに越したことはありません。
  • 瞬間処理を必要としない多重課題は見える化と優先順位が決め手
多重課題の範疇からはややはずれますが、たとえば、締切り仕事が3つ重なったという状況も日常的にはよくあります。
こうした多重課題は、これまで想定していた時間切迫時の多重課題の処理よりは余裕がありますので、対応も楽です。
原則は、締切(納期)からの逆算による工程表を見えるようにしておくことです。それによって、今日は何を優先的にするべきかもおのずと見えてきます。そして、同僚との情報共有もできますから、自分一人ですべてを引き受ける重さもなくなります。
こういう配慮を怠ると、締切り(納期)パニック状態になります。ここでは、ミス発生のリスクが異常なほど高まってしまいますから、絶対に避けたいところです。


緊急地震速報、でもなにもおこらなかった!

2020-07-30 | 安全、安心、
スマホがかなり大きな警報を出す。
身構えたが、幸い、何も起こらなかった。
NHKニュースでも、どこにも地震発生はなかったと報道されている。

【速報 JUST IN 】緊急地震速報発表も強い揺れ観測されず #nhk_news

こういう誤報は、自分にはほっとしたで済むが、社会のどこかでは、
何かとんでもないインパクトを与えてしまうこともあるだろうなー

たった数秒後におこることを事前に知ってもできることはしれてる。
今日の警報は読書中だったが、とっさにはからだは身構えるだけ、
TVは倒れないかなーと一瞬思っただけ。
それでも価値があるのかもしれない。


権威主義はエラーの大敵(旧)

2020-07-30 | 安全、安心、
権威主義はエラーの大敵

専門性、管理者心性は権威主義を生みやすい。そして、安全に関する領域では、この権威主義は要注意である。

(1)一方向のコミュニケーションになる
権威主義とは、「威張る」ことである。そこでは、指示は一方向的にしか流れない。どこか一カ所間違えると、それがそのまま、時には拡大されて伝達されていく。
——>疑問、意見を自由に言える雰囲気を作る
  例 ミーティングを民主的に

(2)思い込みエラーをおかしやすい
情報的に孤立しがち。したがって、自分の思い込みによる判断や行動をしがちである。
——>大局的に考える
——>即断即決しない
——>相談相手を身近においておく

(3)ミスが隠蔽されやすい
ミスがどれほどオープンになるかは、組織トップの権威主義の程度に依存している。警笛吹きは誰もがいつでもできるようにしておく必要がある。
——>ミス報告の一元化をする
   例 ミス駆け込み寺

(4)局所最適化の罠に陥りやすい
 自分のところだけが避ければ良いという組織の安全文化が出来がちで、包括的なものにならない。
——>安全に聖域なし
   例 安全に関しては権限侵入も認める



頑張りすぎミスを防ぐための集中対策」安全・安心の心理学

2020-07-27 | 安全、安心、

「頑張りすぎミスを防ぐための集中対策」

①ヒヤリハットや「ちょこミス」を活かす
 集中力はある程度、自分でコントロールできる実感を誰しもが持っています。だからこその「がんばれ」です。人から言われることもありますし、自分で自分に言うこともあります。そして、かんばります。
 しかし、がんばりにも限界があります。その限界を見極めるのが一つのポイントになります。
 仕事の能率が低下してくるのはかなりはっきりと自覚できます。ときには、ヒヤリハットや「ちょこミス」がそれを教えてくれることもあります。
自分一人の仕事なら、では、一休みですが、仲間と一緒のときは、そうもいきませんが、日ごろから、そうした状態での一休みを皆で了解しあう作業環境であってほしいところです。

②時間を区切る
 がんばりだけでもかなりに長時間、見かけ上、集中力を持続することはできます。しかし、がんばっていればいるほど、集中力の枯渇に気づけません。
 そこで、あえて、仕事前に、小休止の時間を強制的に決めておいて、その時間がきたらわかるようにしておくのです。時には、絶好調のときの中断となることもありますが、それくらいでいいのです。
 わずか5分の小休止でも、集中力の補給ができます。ですから、休憩以前よりも高いレベルでの集中力を発揮できることになります。
これは中断効果と呼ばれています。
 ちなみに、強制的な時間の区切りのコツを3つほど挙げておきます。
「飽きっぽい人(集中力のない人)」
小刻みに分割します。そして、小休懇のとり方を工夫をします。たとえば、机を離れて一分間体操をする、お茶を入れて飲む、鉛筆を削るなどなど。短時間でできて、しかも決まった時間内でできるものを用意しておくのです。
「日常生活の自然の区切りの活用」
普段の生活のなかで、集中力を持続させるコツは、生活時間にさからわずに、それに合せて時間設計をすることです。自然の区切りは仕事の区切るとなっていますので、そのたびごとに集中力がリセットされます。
「つらいことは短時間で、楽なことは長時間で」
むずかしいこと・めんどうなこと・やりたくないことは小刻みに、やさしいこと・簡単なこと・好きなことは長い時間単位を設定します。
 「目標を決める」
 どこまでやったら一休みもあります。目標があれば頑張れるからです。これが適切に機能するためには、普段から仕事をするための目標管理が必要です。PDCAサイクルを意識した仕事の仕方です。
 これがきっちりしていないと、頑張りすぎミスが起きてしまいます。

③頑張らせ過ぎない
 頑張るのは自分、したがって、ミスをすれば、自己責任。それで済ませてしまうことはできます・
それでも、ダメージを受けるのは、本人よりも周りや会社です。
ですから、過剰集中状態でないかの監視は周りがお互いのこととして注意しあう環境であってほしいと思います。
なんとかく過剰に頑張らせてしまうような職場環境にも要注意です。定時退社さえも勇気がいるような雰囲気はまずいと思います。




安全カウンセリング」安全・安心の心理学(旧)

2020-07-27 | 安全、安心、
05/12/2
安全カウンセリング———被害者も加害者もケアが必要
●心のケア
日本でもようやく心のカウンセリングが定着してきた。そして、その実践もいろいろの場所でみることができるようになってきた。臨床心理士の資格制度の発足や、1995年から、最初はいじめ問題への対処のため、以後は心のケア全般にかかわる問題に対処するために、学校現場にスクール・カウンセラーが、非常勤ではあるが、配置されたのが大きい。
学校や地域で何か事件、事故が起こると、「児童生徒、住民の心のケアのためにカウンセラーの派遣を」が今では定番になっているほどである。これらを安全、安心カウンセリングと呼んでおく。
安全、安心カウンセリングには、被害者の心のケアだけでなく、加害者の心のケアもある。交通事故を考えてみればわかるように、被害者も加害者も心に傷を負う。両方に癒しと回復が必要なのだ。

●カウンセリングとは
ところでカウンセリングとは何をするのであろうか。
定義的に言うなら、「カウンセラーとクライエント(相談者)とが、もっぱら言葉を介したコミュニケーションによって、クライアントの心の悩みを聞き、それへの対処を考ることで、心の回復を計る営み」となる。
医者とは違って、クライエントへの物理的な処方はしないし、できない。あくまで、言葉的なコミュニケーションだけでクライエントの心の回復を支援する。
カウンセリングのねらいは、その段階によってことなるが、次の2つになる。
一つは、自分自身で自分の心の傷(悩み)を知ることができるようにすること。身体の病気でもそうだが、なんでそんな状態になってしまったのかがわからない不安を抱えているのは、そのこと自体がさらなる悩みを生み出してしまう。不安の因って来る原因をカウンセラーと共に探る営みがまず必要となる。
2つは、クライエントが自分で自分の心がコントロールできるように支援すること。心のコントロール不全は、とりわけ感情の領域では誰にでも頻繁に起こる。それだけに、その自己コントロールの方策を誰もが体験的に身につけていて危機的な状況にならないようにしている。クライエントは、その自己統制力を一時的に喪失して感情に流されて日常生活に支障をきたしている。これを回復させるのを助けるのである。そのためにのさまざまな心理療法***注1 や方策が考案されている。

●被害者の心のケア
被害者や家族や周辺の心身へのダメージは推測するに余りあるものがある。それだけに、周囲からの安易な同情は慎むべきだが、ほっておいてよいというものでもない。
そんな時が、安全、安心のカウンセラーの出番である。カウンセリングは、基本的に受け身である。クライエントのほうから出向いてこなければ、何もしない。しかし、ひとたび出向いてくれば、積極的に受け入れて、辛抱強く話を聞く。ただ聞くだけではない。傾聴するのである。相手の話を受け入れ、内容の確認をし、さらに心の内を話せるようにする。
これだけのことでも、心のケアになる。たとえ家族であっても、自分の心の内は明かしたくない気持ちがある。しかし一方では、それをじっくりと人に聞いてもらいたい気持ちもある。そんな時の傾聴は、カタルシス効果も期待できるし、さらに、話すことで、自分自身の心の内を自覚できるきっかけにもなる。
立ち直りるためにどんな方策や心理療法が良いかに関しては、クライエントの状態とカウンセラーの考えにまかせることになるが、心理療法については、非指示療法の立場を取るカウンセラーだと、あれこれとクライエントに指示するようなことはしない。それに物足りなさを感ずる人は、指示的カウンセリングの立場のカウンセラーをみつけるとよい。

●加害者の心のケア
ここでの加害者は、加害を認め、それに対する謝罪の心があり激しい罪悪感に悩んで人である。どんな加害者にも、というわけではないことを最初におことわりをしておく。
ちょっとした過失で加害者になってしまった人も、たとえ上述のような人であっても、法律的には業務上過失の罪が問われることがある。被害者に加えてもう一人の犠牲者が出ることになる。被害者の気持ちを考慮すれば当然という考え方もある。最近の日本社会は、ややこの傾向が強くなりすぎているように思う。一種の仇討ち心性である。
しかし、そう簡単にもう一人の犠牲者を出して良いものだろうか。それよりも、もう一度立ち直りのきっかけを与えるほうが、社会的にもメリットがあるという考えもあってよい。そんな時、本人自身の立ち直りを支援するシステムとして、安全、安心カウンセリングを用意しておきたいものである。
ある宅配便会社では、事故を起こしてしまったドライバーがカウンセリングを受けるようなシステムを作っているとのことである。本人を立ち直らせ、次の事故防止に役立っているらしい。(K)






注1 心理療法は、療法家の数だけあると言われるくらいに多い。主なものだけを挙げておく。精神分析療法、行動療法、認知療法、森田療法、来談者中心療法などなど。
 


心配してもしょうがない

2020-07-26 | 安全、安心、

杞憂(きゆう)の意味 - goo国語辞書
意味や解説、類語。《中国古代の杞の人が天が崩れ落ちてきは しないかと心配したという、「列子」天瑞の故事から》心配する必要のないことをあれこれ 心配すること。取り越し苦労。杞人の憂え。「杞憂に終わる 」

@@
隕石の落下は、時折、話題になる。
ごくまれ現象(確率)として、落下による被害は、ほとんど話題にならない。
でも2週間前になるか、その隕石の一部が近隣のマンションの庭に落下したのだ。
人や家屋に直撃したらどうなるかは、杞憂かなー
この話題を取り上げて新聞記事は、落下隕石の天文学的価値しか書いてない。
杞憂心性なんて熟語がひらめいた。






振り込め詐欺対策のいくつか

2020-07-26 | 安全、安心、

●振り込め詐欺対策のいくつか
さて、こうした振り込め詐欺に引っかからないための対策を考えてみることにする。
やっかいな事には、思い込みには、「思いこんだら地獄まで」というところがある。ひとたび架空の物語の世界に入ってしまうと、そこから自力で脱出するのは極めて難しい。周囲の人々の助けが必要である。
 となると、詐欺に引っかからないためには、思い込みの世界へと誘導される前に、そのおかしさに気がつくこと(水際対策)、最後のお金を出すところでの工夫(出口対策)しかない。

1)水際対策
①犯罪に関する知識を豊富にしておく
 マスコミが流すニュースは犯罪情報が実に多い。これを自分には関係ないよそ事として見る人もまた実に多い。安全性バイアスと呼ばれている現象の一つである。いろいろの危険情報を得ても、人は自分だけは安全という奇妙な状況認識を強く持つ。とことんまでいかないと危険との認識をしない。
それはさておくとしても、やはり犯罪に強くなるには、どんな犯罪がどのような手口でおこなわているかについて、できるだけ情報を収集し、知識としてもつに越したことない。なんといっても「知は力なり」である。その際、できるだけ自分に引きつけてそうした情報を収集するように心がけておくと、いざという時に役立つ。
②大所高所から状況を眺めるようにする
 思い込みの世界に入ってしまうのは、局所的な手がかりだけに強く依存してしまうからである。普段から、全体や一段高いところから状況を眺めるようにしておくと良い。
たとえば、一つの仕事をするにも、その仕事は全体のどの部分なのか、それは仕事全体にとってどんな意味があるのかなどを考えるよう習慣づけておくことである。
③多角的に見る
 一つだけの限定された見方をしてしまうことから、思い込みがはじまる。もっと別の見方はないかと自問自答してみるようにすると良い。懐疑精神、批判精神を持つことと言ってもよい。
④即断即決をしない
 とりわけ、感情が高ぶってしまっているような時には、それが治まるまで大事な決断はしないようにする。可能ならその事態から一時的に離脱する。トイレに行ってみる、人と相談してみるなどが有効である。
⑤考えていることを周囲の人が聞いてくれる環境を作る
 思い込みは頭の中で発生する。したがって、自分から話さなければ、誰も何が起こっているかわからない。自分の思いを普段から周囲の人に話せるようなコミュニケーション環境にしておく。話すことでみずから気がつくということもある。

2)出口対策
①間合いを入れる
「即断即決をしない」と軌を一にする対策だが、いざ行動に移す際に、一度、深呼吸でもして、さらには、これで大丈夫かの点検をしてから、行動に踏み切るようにする。
②大金の支払いはフールプルーフで
 ATMの利便性が、振り込み詐欺を支えているもう一つのIT技術である。簡単に100万、200万の大金が見知らぬ人に瞬時に送れるからこその犯罪である。
金融機関もようやく送付金額の上限設定の対策を取るようになったが、個人でもそれなりの対策を考えておいたほうが良い。
そのポイントは、フールプルーフ(fool-proof)である。大金を振り込む(動かす)際には、いつもよりやりにくくしておくことである。
フールプルーフとは、うっかりミスの防止策の一つである。無意識に何かをしてしまってついうっかりとなるのを防いだり、危ないことをしてもただちには事故につながらないようにする仕掛けである。
たとえば、ガスを使うには、ガス栓を押してから回す、ポットからお湯を出すには「解除」を押してからでないと出ないようにする仕掛けである。
我が家でも、10万円以上のお金の移動は、一言、その旨を相手に言う、という取り決めにしている。

●関連した余話を3つ
1)振り込め詐欺の被害者にみる日本人のメンタリティ(心性)
「その1;母/父子密着」
 アメリカで活躍していて20年ぶりに帰国したある教授によると、こういう詐欺事件はアメリカでは聞いたことはなかったし、起こり得ないのではないかという。
 その理由は、2つ。
 一つは、母子/夫子分離がきちんと出来ているので、成人した子供の尻拭いを親がすることはありえないというのが理由の一つ。
 もう一つは、金銭決済の方式が小切手なので、お金が決済されるまで時間がかかるというのがもう一つの理由。
後者についてはフールプルーフの話につきるのでさらなる話はないので、前者についてさらに一言。
北海道のある新聞の記者から、自分の母親が振り込め詐欺にあいそうになった。ついてはコメントを、と言われた。彼の母親いわく。「振り込め詐欺ではないかとは思った。でも、200万円で片が付くなら、安い授業料だと思って振り込むつもりだった」。
「その2;リスク感覚の欠如」
 関西人は、振り込め詐欺にあまり引っ掛らないらしい。また、もっぱら、専業主婦や高齢者が被害者になってしまう。
 そこには、リスクに対する感受性の欠如があるように思えてならない。商売をしている人なら、そんなことはまずありえない。金銭の移動に関しては最大限のリスク感覚を発揮するように習慣づけられているからである。
100万円単位のお金の振り込みには、崖から飛び下りるようなリスクがあると思うのだが、いかに大切な人のためとはいえ、いとも簡単に振り込んでしまう。

2)なぜ何度も振り込んでしまうのか
 セールスなどの技法の一つに、「段階的要請法」というのがある。小さいことをまず受け入れさせてから次第に大きなもの(本物)を買わせるのである。まず低い障壁を越えさせるのである。
 昨日の新聞には、28歳の女性が、12回にわたり、1200万円を振り込んだ詐欺が報道されていたが、そのテクニックがまさに段階的要請法だった。最初から1200万円振り込めと言われれば、誰しもが逡巡してしまう。まずは、手付けとして10万円、と言われれば、それならとなる。

3)思い込みをしやすい人
思い込みをしやすい人とそうでない人とがいる。チェック欄でみずからの思い込み度をチェックしてみてほしい。
無論、詐欺被害にひっかるのは、その人にだけ責があるというつもりはまったくない。被害にひっかりそうな人と状況とをうまくかみあわせて、一人の人を追い込むのが詐欺犯罪である。蛇足であるが、付け加えておく。

チェック「自分の思い込み度をチェックする」*******
次のリストに従って、自分の思い込みやすさを判定してみよ。

1)直感的判断に頼ることが多い( )
2)理詰めで考えるのは嫌い( )
3)判断に迷うことはあまりない( )
4)人と相談することはあまりない( )
5)何ごとも自分なりに納得しないと我慢ならない( )
******************************
(事例の引用を許可していただいた朝日新聞に対して、謝辞を表します。)


リスク認知とリスク行動」心理学基本用語

2020-07-24 | 安全、安心、

  • リスク認知とリスク行動(risk recognition behavior)(risk recognition behavior)

リスク認知とは、たとえば、原子力発電所をどれくらい危険なものとみなすかである。リスク認知は、事故の発生についての客観的な確率や災害の規模などよりも、「恐ろしさ」「未知性」「情報接触頻度」さらに、「リスク事象への能動的な関与の度合い」などの心理的な要因によっても強く規定されている。
リスク行動とは、リスクをどの程度まで見込んで行動するかである。これをリスク・テイキング(risk taking)行動という。航空機利用などのように、利便性が高いときは、リスクは低く見積もられ、行動として選択されやすい。



池田信夫さんがリツイート 池田信夫

2020-07-24 | 安全、安心、

@ikedanob
返信先: @sshitaroさん
東京都の統計でおかしいのは、(感染者1万人で)「重症」(18人)以外の入院者が「軽症・中等症」(898人)しかなく、「無症状」というカテゴリーがないこと。「宿泊療養」とか「自宅療養」が無症状だろうが、重症が18人しかいないのに、本当に入院の必要な人が916人もいるとは思えない。

@@@

感染を防ぐには、外出自粛とか3密を避けるとかマスクをつけるとか手洗いするとかといった
ややアナクロじみた対策しかない新型コロナ。
毎日のニュースショーの定番になって半年。
感染者数の増減に一喜一憂だが、たしかに、池田氏の指摘のように、
「感染なんてたいしたことないよ」といいたくなる。
むしろ、感染者であるとレッテルを張られてしまうことによるあれこれのほうが怖い。
うーん、むずかしいなー


●組織の安全管理「心理学基本用語

2020-07-23 | 安全、安心、
組織の安全管理

安全は保持されていて当たり前。そこから「安全性バイアス」、つまり、危険なことが見えない、あるいは見えてもそれが大事に至るとの判断をしない、さらに危険を除去する行為をすることに思いが至らない、ということになりがちである。
安全管理担当者だけが声を大にして「悪魔の代弁者」をすることも大事であるが、それだけでは限界がある。組織文化として、安全を保持することの大切さを作り込む必要がある。



「4つのタイプのエラーのおかしやすさの自己チェックリスト」(旧)

2020-07-20 | 安全、安心、
05/11/29海保 

——————————————————————————————
「4つのタイプのエラーのおかしやすさの自己チェックリスト」
各項目について、
「自分によくあてはまる時に3」「まーあてはまる時は2」
「あてはまらない時1」
のいずれかを入れて、4つのリストごとに数値を合計する。判断は直感的でよい。*10点以上なら、それぞれの傾向が強いほうと言える。

●使命の取り違え傾向度チェックリスト(得点; 点)
1)人に喜んでもらうのが好き( )
2)決まりや手順より、その場にふさわしいやり方でやる( )
3)人に自慢をすることが多い(  )
4)競争では負けるのが嫌い( )
5)何よりも時間厳守が大事(  )

●思い込み傾向度チェックリスト(得点;  点)
1)直感的判断に頼ることが多い( )
2)理詰めで考えるのは嫌い( )
3)判断に迷うことはあまりない( )
4)人と相談することはあまりない( )
5)何ごとも自分なりに納得しないと我慢ならない( )

●うっかり傾向度チェックリスト(得点; 点)
1)一日一回くらいはひやりハットすることがある( )
2)見落としや聞き間違いが多い( )
3)計算ミスをよくする( )
4)注意が散漫で持続しない( )
5)感情的になることが多い( )

●確認ミス傾向度チェックリスト(得点;  点)
1)寝る前に火の消し忘れや施錠忘れがないかを気にすることはほとんどない( )
2)確認よりもやるべき事をしっかりやるようにしている( )
3)メモや貼紙はあまりしない( )
4)複数の手段で複数の人から確認をとるようなことはあまりない( )
5)人に、確認したかと問うことはあまりない( )
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確率問題にどう対処するか

2020-07-19 | 安全、安心、
確率は、自分が所属する集団に適用される。
そこで、確率問題には、個人の主観確率にもとづくいくつかの典型的な対応がありうる。
①自分はその集団には属していないから無関係と考える
 例 東京都のコロナ感染率は、岩手にすむ人は無視
②あまりに低確率事象なので、ほぼ無視
 例 東京直下地震発生の確率
③無視できない確率なので、その高低によって、あるいは事象によって、対応を変える
 例 コロナ感染確率なら、10%でも怖いが、インフル感染なら20%くらいまでなら大丈夫。あるいは、自分は感染には強いので、あるいは籤運があるので、大丈夫。
 例 買占めや避難などのリスク回避行動が発生する。

ただ、一つやっかいなのは、コロナ感染のように、集団を構成するサンプル間に独立性を仮定できないときの確率問題の場合である。
さらに、確率問題であることを忘れさせるのが、たとえば、有名人が罹患したなどというマスコミ報道である。一時的に主観確率が高まってしまうことがある。