(1)社会保障の赤字ばかりに世間の注目を集めて増税を正当化しようとしている(最大の問題)。
政府は、高齢者3経費(年金・介護・医療)の不足額が2011年度で10兆円であり、2015年度に13.4兆円に達することから、その穴埋めのためには消費税の5%増税(1%当たり2.7兆円×5)が必要だ・・・・と説明する。
しかし、政府の予算全体を見ると説得的でない。政府の一般会計の予算額【注】の推移は、以下のとおりだ。2006年度:81.4兆円→ 2007年度:81.8兆円→2008年度:84.7兆円→2009年度:101.0兆円→2010年度:95.3兆円→2011年度:107.5兆円→2012年度:96.7兆円。
2009年度(リーマンショック)と2011年度(東日本大震災)はさて措き、2006年度や2007年度は81兆円台で推移していた一般会計予算が、2010年度には95兆円台にまで膨張している。
一般会計全体が、この5年くらいで14兆円程度膨張している。その理由は、民主党政権になってバラマキ(<例>子ども手当)を継続しているからだ。逆に言えば、バラマキを削減して2006年度の頃の予算規模に戻せば、消費税増税は不要だ。
今年度予算でバラマキ(<例>八ッ場ダム建設の再開、整備新幹線3区間の建設着工の認可、東京外環道の建設開始)を続けながら、同時に消費税を増税しようとする姿勢は許容すべきでない。
(2)民主党政権は、「社会保障の安定・強化のため」(平成22年12月閣議決定)に消費税を5%増税する必要がある、と主張している。しかし、この説明にはかなり嘘がある。
政府資料によれば、消費税5%増税の内訳は以下のとおりだ。機能強化3%(制度改革に伴う増、高齢化に伴う増、基礎年金の国庫負担)、機能維持1%、消費税引き上げに伴う社会保障支出等の増1%。
そして、社会保障の充実・増加となって国民に還元される分(「制度改革に伴う増」)は2.7兆円と、消費税1%分に過ぎないことも明記されている。さらに、その内訳を見ると、医療・介護等1.6兆円程度、年金0.6兆円程度、子ども・子育て0.7兆円程度となっている。
すなわち、消費税5%増税のうち、4%分は現在の社会保障の不足分や将来の自然増の穴埋めだ(財政赤字解消のため使用)。ちなみに、「若い世代の社会保障も充実させる」ために使われる金額は、消費税5%増税による13.5兆円のうちわずか0.7兆円でしかない。
社会保障の水準が今とほとんど変わらないのに、さも社会保障の強化のために消費税を増税すると喧伝するのはおかしい。
(3)デフレの下で増税をするとデフレが悪化する。特に日本経済は15年にわたる長期のデフレに悩まされているから、まず大胆な金融緩和などによりデフレを克服し、その後に増税を行うようにすべきだ。
そうしないと、増税してもさほど税収は増えない惨状に陥りかねない。1997年に消費税率を3%から5%に上げて以降、一般会計税収は今に至るまで1997年度の水準を超えていない。
以上3点からしても、「社会保障・税一体改革」は「バラマキと増税の一体化」に過ぎない。
大新聞などのマスメディアがかかる問題点をちゃんと指摘せず、政治の混乱という表面的なことばかりを詳細に報道していることは問題だ。記者が、財務省などの発表・説明を鵜呑みにした記事ばかりを書いているからだ。記者クラブ制度の弊害は、原発報道ばかりではない。
【注】2010年度までは補正予算を含む公式の決算額、2011年度は当初予算と補正予算の合計額、2012年度は当初予算に復興特別会計と年金国庫負担の交付国債を加えた額。
以上、岸博幸「間違った社会保障・税一体改革が進む前に消費税増税の問題点を整理する ~岸博幸のクリエイティブ国富論【第168回】 2012年1月6日」(DIAMOND online)に拠る。
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政府は、高齢者3経費(年金・介護・医療)の不足額が2011年度で10兆円であり、2015年度に13.4兆円に達することから、その穴埋めのためには消費税の5%増税(1%当たり2.7兆円×5)が必要だ・・・・と説明する。
しかし、政府の予算全体を見ると説得的でない。政府の一般会計の予算額【注】の推移は、以下のとおりだ。2006年度:81.4兆円→ 2007年度:81.8兆円→2008年度:84.7兆円→2009年度:101.0兆円→2010年度:95.3兆円→2011年度:107.5兆円→2012年度:96.7兆円。
2009年度(リーマンショック)と2011年度(東日本大震災)はさて措き、2006年度や2007年度は81兆円台で推移していた一般会計予算が、2010年度には95兆円台にまで膨張している。
一般会計全体が、この5年くらいで14兆円程度膨張している。その理由は、民主党政権になってバラマキ(<例>子ども手当)を継続しているからだ。逆に言えば、バラマキを削減して2006年度の頃の予算規模に戻せば、消費税増税は不要だ。
今年度予算でバラマキ(<例>八ッ場ダム建設の再開、整備新幹線3区間の建設着工の認可、東京外環道の建設開始)を続けながら、同時に消費税を増税しようとする姿勢は許容すべきでない。
(2)民主党政権は、「社会保障の安定・強化のため」(平成22年12月閣議決定)に消費税を5%増税する必要がある、と主張している。しかし、この説明にはかなり嘘がある。
政府資料によれば、消費税5%増税の内訳は以下のとおりだ。機能強化3%(制度改革に伴う増、高齢化に伴う増、基礎年金の国庫負担)、機能維持1%、消費税引き上げに伴う社会保障支出等の増1%。
そして、社会保障の充実・増加となって国民に還元される分(「制度改革に伴う増」)は2.7兆円と、消費税1%分に過ぎないことも明記されている。さらに、その内訳を見ると、医療・介護等1.6兆円程度、年金0.6兆円程度、子ども・子育て0.7兆円程度となっている。
すなわち、消費税5%増税のうち、4%分は現在の社会保障の不足分や将来の自然増の穴埋めだ(財政赤字解消のため使用)。ちなみに、「若い世代の社会保障も充実させる」ために使われる金額は、消費税5%増税による13.5兆円のうちわずか0.7兆円でしかない。
社会保障の水準が今とほとんど変わらないのに、さも社会保障の強化のために消費税を増税すると喧伝するのはおかしい。
(3)デフレの下で増税をするとデフレが悪化する。特に日本経済は15年にわたる長期のデフレに悩まされているから、まず大胆な金融緩和などによりデフレを克服し、その後に増税を行うようにすべきだ。
そうしないと、増税してもさほど税収は増えない惨状に陥りかねない。1997年に消費税率を3%から5%に上げて以降、一般会計税収は今に至るまで1997年度の水準を超えていない。
以上3点からしても、「社会保障・税一体改革」は「バラマキと増税の一体化」に過ぎない。
大新聞などのマスメディアがかかる問題点をちゃんと指摘せず、政治の混乱という表面的なことばかりを詳細に報道していることは問題だ。記者が、財務省などの発表・説明を鵜呑みにした記事ばかりを書いているからだ。記者クラブ制度の弊害は、原発報道ばかりではない。
【注】2010年度までは補正予算を含む公式の決算額、2011年度は当初予算と補正予算の合計額、2012年度は当初予算に復興特別会計と年金国庫負担の交付国債を加えた額。
以上、岸博幸「間違った社会保障・税一体改革が進む前に消費税増税の問題点を整理する ~岸博幸のクリエイティブ国富論【第168回】 2012年1月6日」(DIAMOND online)に拠る。
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