通販大手の「カタログハウス」は、3・11以降「脱原発」を標榜している。その直営店では放射能の値を明示して販売している【注1】。季刊誌「通販生活」でも、原発国民投票を呼びかけ、「原発国民投票のための勉強」を2011年冬号から連載している。その講師は、田中三彦(サイエンスライター/国会原発事故調査委員)だ。田中は、「勉強」第2回(「通販生活」2012年春号)で、既に岩波の「世界」などでも触れているが、福島第一原発は津波が来る前に地震の揺れで破壊されていた、と指摘する。これが事実であれば、今の日本で原発を稼働/再稼働することはできない。
「通販生活」連載の落合恵子の対談は、今回ゲストに古賀茂明を迎える。古賀は言う。経産省にいたときは左遷されて仕事がなかったが、今は無職なのに仕事が増えた。メディアに出ることも多いし、講演、政治家のサポートもやっている【注2】。
この1年間、古賀が少なからぬ対談で述べている内容は、基本的にはその著書や論文で開陳済みだ【注3】。古賀の対談は、いずれも『日本中枢の崩壊』の注釈だ、とも言える。これは、古賀が言いたいことは政治家的な森羅万象ではなく、主題が一定している(限定されている)ことを示す。そして、その発言にはブレがない。
もっとも、著書の単なる再放送ではない。対談ごとに、(1)新たな視野(または大づかみな総括)、(2)新たな情報(または突っ込んだ情報)・・・・が少しずつ盛り込まれている。落合との対談について言えば、次のようなものだ。
<(1)の例>
<古賀 原発事故の問題は今に始まったことじゃなくて、何十年という歳月をかけて築かれた日本の構造問題そのもの。「日本中枢の崩壊」の1つの縮図なんです。原子力の世界を変えられるかどうかは、日本が変われるかどうかの象徴ですね。>
<(2)の例>
<古賀 そうなんです。実は【原子力安全・保安院は】素人の集まりで、原子力の専門家なんて数えるほどしかいない。それに、本当は資源エネルギー庁も「規制機関」なんですよ。
落合 そうなんですか!?
古賀 たとえば、電力会社はコストを全部電力料金に上乗せできる「総括原価方式」をとっています。だから、資源エネルギー庁が国民に代わって「こんなコストを料金に上乗せしていいのか」と、領収書を1枚1枚厳格にチェックすべきなんです。ところが、これまでそんなことは全然やっていないかった。だから、この間「東京電力に関する経営・財務調査委員会」が調査したら、莫大な無駄が出てきたんです。>
なぜ、そういうことになるのか。昔ながらの規制と予算によって産業をコントロールし、それぞれの企業や団体に天下りポストをつくる、というシステムがきっちりできているからだ。だから、資源エネルギー庁も産業側に軸足があって、何か起きたときも、まず産業を守ることを考える。これは産業途上国の体質だ。明治時代以来の殖産興業の仕組みがそのまま残っている。
かくて、原発事故が起きても、経産省は東電に文句を言えない。
<(2)の例>を追加しておこう。古賀は言う。電力会社は民間企業であって、<しかも独占企業なので競合する会社ができない仕組みになっているから、電力会社は儲けようと思えばいくらでも儲けられる。ただ、儲けすぎると「料金を下げろ」と文句を言われるので、実際にはあまり利益が上がらないように社員の福利厚生など消費者の目に見えないところに儲けたおカネを投入していたんですね。逆に発送電のコストが上がったら、その分は料金に転嫁できる。>
古賀は、大阪府知事選、神奈川知事選および岩手県知事選で立候補を打診されたが、全部断っている。「地方のことはその地方の人がやったほうがいい」というのが辞退の理由だが、根っからの行政マンだ、という理由のほうが強いだろう。選挙にはほとんどの時間を選挙に費やすことになってコストが大きすぎるし、国政選挙も仮に当選しても一議員にすぎないからコスト・パフォーマンスが悪すぎる・・・・いくぶん韜晦の気配があるものの、自分のやりたいことをハッキリ知っていて、そこからはみ出す気はない、ということだ。政治的人間は、政治をすべてに優先させる。
その古賀の政治との付き合い方は留意してよい、と思う。
(a)今の課題は、若者をはじめ一般市民の声をどうやって政治を動かすところへ繋げていくか、だ。それにはインターネットが一つの鍵になる。今ではお年寄りもやるようになった。ツイッターやフェイスブックをやる人も増えた。それらが広がっていけば、ネットの世界がだんだん現実に近づいていく可能性は十分にある。
(b)個人献金をしてほしい。政治に対して自分のカネを1,000円でも払ってくれる人は、投票する可能性が非常に強い。
(c)いい政治家を探そうと思う。あまりいないが。政治家を育てることも必要だ。政治家は、やはり市民が育てるものだ。
(d)日本が本当に破綻するのではないか、と心配している。だから、破綻の準備をやってもよいかな、と。一番犠牲になりそうなお年寄りとか、頑張っても社会から落っこちてしまった人たちを助ける仕組みを今から作っておくことが最優先課題だ。そういう政策を打ち出してくれる政治家だったら、「この人に賭けてみようか」という気になる。
【注1】「【震災】原発>餅、おせち料理は大丈夫か?」
【注2】「古賀茂明・非公式まとめ」
【注3】古賀茂明の著者や論文。→こちら
以上、対談:古賀茂明/落合恵子「東電は最高の天下り先だから、経産省は原発事故が起きても東電に文句を言えないんです ~落合恵子の深呼吸対談 第13回 連続原発講座その2~」(「通販生活」2012年春号)に拠る。
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「通販生活」連載の落合恵子の対談は、今回ゲストに古賀茂明を迎える。古賀は言う。経産省にいたときは左遷されて仕事がなかったが、今は無職なのに仕事が増えた。メディアに出ることも多いし、講演、政治家のサポートもやっている【注2】。
この1年間、古賀が少なからぬ対談で述べている内容は、基本的にはその著書や論文で開陳済みだ【注3】。古賀の対談は、いずれも『日本中枢の崩壊』の注釈だ、とも言える。これは、古賀が言いたいことは政治家的な森羅万象ではなく、主題が一定している(限定されている)ことを示す。そして、その発言にはブレがない。
もっとも、著書の単なる再放送ではない。対談ごとに、(1)新たな視野(または大づかみな総括)、(2)新たな情報(または突っ込んだ情報)・・・・が少しずつ盛り込まれている。落合との対談について言えば、次のようなものだ。
<(1)の例>
<古賀 原発事故の問題は今に始まったことじゃなくて、何十年という歳月をかけて築かれた日本の構造問題そのもの。「日本中枢の崩壊」の1つの縮図なんです。原子力の世界を変えられるかどうかは、日本が変われるかどうかの象徴ですね。>
<(2)の例>
<古賀 そうなんです。実は【原子力安全・保安院は】素人の集まりで、原子力の専門家なんて数えるほどしかいない。それに、本当は資源エネルギー庁も「規制機関」なんですよ。
落合 そうなんですか!?
古賀 たとえば、電力会社はコストを全部電力料金に上乗せできる「総括原価方式」をとっています。だから、資源エネルギー庁が国民に代わって「こんなコストを料金に上乗せしていいのか」と、領収書を1枚1枚厳格にチェックすべきなんです。ところが、これまでそんなことは全然やっていないかった。だから、この間「東京電力に関する経営・財務調査委員会」が調査したら、莫大な無駄が出てきたんです。>
なぜ、そういうことになるのか。昔ながらの規制と予算によって産業をコントロールし、それぞれの企業や団体に天下りポストをつくる、というシステムがきっちりできているからだ。だから、資源エネルギー庁も産業側に軸足があって、何か起きたときも、まず産業を守ることを考える。これは産業途上国の体質だ。明治時代以来の殖産興業の仕組みがそのまま残っている。
かくて、原発事故が起きても、経産省は東電に文句を言えない。
<(2)の例>を追加しておこう。古賀は言う。電力会社は民間企業であって、<しかも独占企業なので競合する会社ができない仕組みになっているから、電力会社は儲けようと思えばいくらでも儲けられる。ただ、儲けすぎると「料金を下げろ」と文句を言われるので、実際にはあまり利益が上がらないように社員の福利厚生など消費者の目に見えないところに儲けたおカネを投入していたんですね。逆に発送電のコストが上がったら、その分は料金に転嫁できる。>
古賀は、大阪府知事選、神奈川知事選および岩手県知事選で立候補を打診されたが、全部断っている。「地方のことはその地方の人がやったほうがいい」というのが辞退の理由だが、根っからの行政マンだ、という理由のほうが強いだろう。選挙にはほとんどの時間を選挙に費やすことになってコストが大きすぎるし、国政選挙も仮に当選しても一議員にすぎないからコスト・パフォーマンスが悪すぎる・・・・いくぶん韜晦の気配があるものの、自分のやりたいことをハッキリ知っていて、そこからはみ出す気はない、ということだ。政治的人間は、政治をすべてに優先させる。
その古賀の政治との付き合い方は留意してよい、と思う。
(a)今の課題は、若者をはじめ一般市民の声をどうやって政治を動かすところへ繋げていくか、だ。それにはインターネットが一つの鍵になる。今ではお年寄りもやるようになった。ツイッターやフェイスブックをやる人も増えた。それらが広がっていけば、ネットの世界がだんだん現実に近づいていく可能性は十分にある。
(b)個人献金をしてほしい。政治に対して自分のカネを1,000円でも払ってくれる人は、投票する可能性が非常に強い。
(c)いい政治家を探そうと思う。あまりいないが。政治家を育てることも必要だ。政治家は、やはり市民が育てるものだ。
(d)日本が本当に破綻するのではないか、と心配している。だから、破綻の準備をやってもよいかな、と。一番犠牲になりそうなお年寄りとか、頑張っても社会から落っこちてしまった人たちを助ける仕組みを今から作っておくことが最優先課題だ。そういう政策を打ち出してくれる政治家だったら、「この人に賭けてみようか」という気になる。
【注1】「【震災】原発>餅、おせち料理は大丈夫か?」
【注2】「古賀茂明・非公式まとめ」
【注3】古賀茂明の著者や論文。→こちら
以上、対談:古賀茂明/落合恵子「東電は最高の天下り先だから、経産省は原発事故が起きても東電に文句を言えないんです ~落合恵子の深呼吸対談 第13回 連続原発講座その2~」(「通販生活」2012年春号)に拠る。
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