語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【震災】原発>国が福島県民に教えない本当の除染基準

2012年01月18日 | 震災・原発事故
 野田政権によれば、2012年は「除染元年」だ。
 細野豪志・環境相は、「除染なくして福島の復興なし」と繰り返す。
 環境省は、除染を本格化させるための「福島環境再生事務所」を2012年1月1日付けで福島市に置いた【注1】。

 野田佳彦首相は、昨年12月16日、記者会見で「発電所の事故そのものは収束に至った」と宣言した【注2】。
 収束なんてとんでもない。再爆発の可能性だって五分五分だ。まだ雨漏りしてんだから、除染よりまず雨漏りを止める。そして、廃棄物の捨て場所(中間貯蔵施設)を確保することが先決だ。いまだに国は、最終処分場は県外、なんて言っているが、そんなもの、どこが引き受けるか。【鈴木二郎(78)・元東電社員/大熊町から郡山市へ避難】

 国は、中間貯蔵施設を「福島県内に置く」と曖昧な方針しか示してこなかった。昨年12月28日、ようやく細野環境相は、福島第一原発のある双葉郡内に置きたい、と佐藤雄平・福島県知事らに伝えた【注3】。
 線量を下げることが難しい地域(年間放射線量100mSv超)がまとまって存在することなどが双葉郡内に置く決め手だ、とされる。
 100mSv超の地域が広範囲にある大熊、双葉両町の町民の間では、何を今さら、の感が強い。十分な補償と引き換えなら中間貯蔵施設の受け入れもやむをえない、という意見がすでに多いからだ。

 ところが、官邸周辺によると、「公式発表」とは異なる別のプランが浮上している(「二枚舌」の疑い・その1)。
 100mSv超の地域だと、作業する時間が限られる。速やかに計画を実現させるため、100mSv超の周辺地域も候補地として検討している・・・・らしい。
 また、細野環境相は中間貯蔵施設は1ヶ所と述べたが、県内の他地域から廃棄物を運ぶ際のアクセスを重視し、複数置くプランも検討している・・・・らしい。

 公式発表とは異なる基準は、除染現場でも出ている(「二枚舌」の疑い・その2)。
 除染作業は、昨年末から1月にかけ、本格作業に先立つ国のモデル事業として、富岡町内2ヶ所で始まっている。ところが、昨年12月、同町で除染作業に関わる地元業者らに、通告があった。
 「7μSv/h以上の地域は除染しない」
 この線引きについて、箝口令が敷かれた。町民は蚊帳の外だった。

 これより少し後、国は現在の「警戒区域」と「計画的避難区域」の線引きを見直し、新たに放射線量に応じて3つの区域に再編する、と決めた。
 比較的線量が低い年間20mSv未満の区域から優先的に除染を進め、順次、住民を帰宅させていく、という。
 もっとも線量が高い年間50mSv以上の「帰還困難区域」では、不動産の買い上げなどが検討される。
 実際の線引きは、3月末をめどに示される(見とおし)。
 
 ところで、7μSv/h=61mSv/年だ。
 年間61mSvを境に除染するか否かを決める。これは、つまり国は表向き住民に示した線引き基準とは異なる「除染地図」が存在することを意味するのではないか(「二枚舌」の疑い・その3)。
 それでなくても、避難区域の見直しなどは、避難範囲を狭めて補償額を抑えようとする意図が見え見えだ。【浪江町の自営業者】

 【注1】記事「環境省福島再生事務所が発足 除染態勢も拡充」(asahi.com 2012年1月4日22時48分)
 【注2】記事「東日本大震災:福島第1原発事故 政府の「収束」宣言波紋 配慮が裏目、被災地反発」(毎日jp 2012年1月3日)
 【注3】記事「中間貯蔵施設、福島・双葉郡に設置方針 環境相が明言」(asahi.com 2011年12月28日11時57分)

 以上、佐藤秀男(本誌)「政府が福島県民に教えない本当の除染基準」(「週刊朝日」2012年1月20日号)に拠る。
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