語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【震災】原発>マスコミ報道の虚構と事実 ~ストレステスト審査~

2012年01月20日 | 震災・原発事故
 1月18日、関西電力大飯原発3・4号機のストレステスト結果に係る原子力安全・保安院の意見聴取会が開かれた。保安院(の職員=事務局)は、傍聴を認めず、会場からの中継画像を別室のモニターで視聴する方法を取った。
 これに、市民約20人が反発。
 (a)市民は、開会予定時刻(16時)過ぎ、会場(経産省別館11階の会議室)に入り込み、同会場で傍聴させるよう求めた。
 (b)同会議の司会進行役、岡本孝司・東京大学工学研究科教授、阿部豊・筑波大学大学院 システム情報工学研究科教授、山口彰・大阪大学大学院 工学研究科教授は、それぞれ三菱重工業から200万円、500万円、3,385万円の献金を受け取っている、とされている。市民らは、会議の中立性が疑われる、と3人をメンバーから外すよう求めた。この要求に対し、委員の沈黙が続き、3時間余り会議が 開かれない異常な状態が続いた。

 19時30分頃、保安院は、ふたたび会場に現れ、会議を再開すると宣言。市民の傍聴を許さず、別室に会場を移す、と伝えた。20時過ぎ、会場を別室(本館17階)に変え、会議を再開。市民の傍聴を認めないまま、「ストレステスト(耐性検査)」の1次評価は「妥当」だ、とする審査書案をまとめた。
 なお、保安院が委員に対し、対応を協議するため別室に移動するよう呼びかけた際、井野博満・東京大名誉教授および後藤政志・芝浦工業大学講師/元プラントメーカー技術者は「公開は絶対の原則」と主張。2人は「傍聴者を認めれば会議に出席したい」とし、公開されない会議は無効である、と訴えた。しかし、保安員側は「傍聴を認めないのが省の方針」として譲らず、2人は事務局の指示をボイコット。
 再開した会議は、出席予定の8人の委員のうち、他の2人の委員も途中退席したため、最後まで残ったのは4人のみだった。

 以上、「【ドキュメント】ストレステスト審査~市民を締め出して強行」に拠る。

    *

●毎日新聞
 「混乱」の報道はない。丁寧な解説記事。 【「福井・大飯原発:3、4号機安全評価 「見切り発車」批判続出 福島事故の教訓、反映されず」 毎日jp 1月19日 東京朝刊】

●読売新聞
 <これに関する専門家からの意見聴取会には、反対派活動家らが多数押しかけて混乱した。> 【原発耐性検査 再稼動の判断を先送りするな」 1月19日付・読売社説」 YOMIURI ONLINE 2012年1月19日01時04分】

●朝日新聞
 <意見聴取会には開催前から原発反対を訴える市民らが詰めかけ混乱。約3時間半後に再開した。> 【「大飯原発の耐性「妥当」 保安院素案 意見聴取会は混乱」  1月18日23時29分】

●日本経済新聞
 <傍聴希望者の抗議で約3時間半にわたり開会できない騒ぎとなった。><午後4時すぎに経産省別館の会議室で始まる予定だったが、保安院側が傍聴を認めず別室でのモニター上映としたため、原発再稼働に反対する市民ら約20人が会議室に入り抗議。傍聴希望者の一部が「流会させろ」などと詰め寄った。> 【「大飯原発の安全評価会議、抗議で3時間半開けず」  日本経済新聞WEB刊 2012/1/18 21:47 】

●NHK
 <会議は、当初は午後4時すぎから始まる予定でしたが、運転再開に反対する人たちが、会議室での傍聴が認められなかったことなどから抗議を続けたため、別の会議室に移ったうえで3時間半余り遅れて始まりました。また、専門家8人のうち東京大学の井野博満名誉教授と芝浦工業大学の後藤政志講師の2人が「傍聴人を閉め出すのはおかしい」として欠席しました。> 【「大飯原発の2基 テスト妥当の評価」 NHK NEWSWEB 1月18日 21時44分】

●日テレ
 <協議に反原発派の団体が乱入し、警察が出動する騒ぎとなった。その後、協議は約4時間遅れで始まった。><反原発を掲げる市民団体らが別室に設けられた傍聴席から会議室になだれこんで協議を妨害したことから、経産省が警察の出動を要請する騒ぎとなった。> 【「反原発派乱入で警察も 保安院の協議始まる」 日テレNEWS24 2012年1月18日 22:08】

●テレビ朝日
 <しかし、前回の会議で傍聴者から不規則発言があったとして、国はこれまで認められていた傍聴を今回は制限するとし、一般の人には「別室傍聴」という形で、いわば締め出した形で会議を始めようとした。これに反原発を訴える人々が抗議する騒ぎとなり、結局、国は別の建物の部屋で完全に傍聴者なしで会議を行うことを決めた。> 【「原発ストレステストの審査で大荒れ」 tv aahi(報道ステーション) 2012年1月18日 (水)】

●TBS
 <会場には傍聴を求める市民らが押しかけ混乱したため、会議は一般傍聴者を締め出す形で、3時間半以上遅れて開かれました。/「ぜひ開かれた議論を行っていただけませんか?」/「傍聴者の締め出しをやめてください。なぜ密室で議論するのか?」><会合では、保安院が一般傍聴者に対し会場に入ることを認めず、別室でモニターを見るよう求めたため、反対派の市民らが強く反発、結局、委員は別の部屋に移り、一般の傍聴を締め出した形で、3時間半あまり遅れて始まりました。これに対し、2人の委員が「傍聴を認めないのはおかしい」と会議の運営方法に抗議して欠席しました。/「密室の中でやるような議論には参加しません」(芝浦工業大学 非常勤講師 後藤政志委員)> 【「大飯原発の評価「妥当」、会議は混乱」 TBS News 19日 00:21】

●フジ
 <意見聴取会には、同じ場所で傍聴を認められなかったことに反発した市民らが乱入し、大混乱となった。><経産省で、18日に行われたストレステスト意見聴取会で、傍聴を求める市民と保安院で、もみ合いが起きた。傍聴を求める市民は、「暴力をやめろよ」、「傍聴者を締め出して何を決めるんだよ。大飯原発だけが安全なわけないだろうが」と話した。> 【「関電・大飯原発安全評価「妥当」 意見聴取会は大混乱、地元では反発の声も」 FNN 01/19 12:46】
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【震災】原発>年明けからセシウムの量が急増 ~国の対応、東電の対応~

2012年01月20日 | 震災・原発事故
 文部科学省は、ホームページで「定時降下物放射能測定結果」【注1】を発表している。
 福島市のそれは、通常NDか、出ても5メガBq/平粁がほとんどだったのに、1月2日、突如432メガ/平粁という桁外れに大きな測定結果が出た。【武田邦彦・中部大学教授】
 この数値は、調査から2日遅れの1月4日14時にアップされ、放射能汚染に敏感な地元住民たちのメーリングリストで話題になった。
 1月6日、武田教授が自身のブログ【注2】で警告を発し【注3】、情報が一気に広がって、大騒ぎになった。
 <速報 福島中心にセシウム急増 マスク必要!! 文部科学省が1月6日に発表した福島県、並びに他県のデータを見ると、福島県および関東一円のセシウム降下量は、事故後とほぼ同じぐらいのレベルに達しています。原因は不明ですが、とりあえず、マスクをする必要があります。今、緊急に調べています。結果がでたらすぐブログに上げます。念のための措置ですが、お子さんをお持ちの方はあまり外に出ないように。データの信頼性もチェック中です。データは危険なレベルです。マスコミが報道していないのは不思議ですが、1平方キロメートルあたり100メガベクレルを超えていて、かなり危険です。逃げる必要はありませんが、マスクをして外出は避けてください。しばらく後に葉物野菜が汚染されます。(データが正しければ)>

 武田教授は、国や自治体は情報を市民にまったく伝えようとしていない、と批判する。
 事実、テレビや新聞はこうした情報を流していない。
 原発事故以来、情報の出し方についてあれだけ批判を浴びたのに、東電も原子力安全・保安院も文科省も、いまだに情報をきちんと出していない。強い憤りを覚える。【高橋誠子・福島市在住】

 千葉市でも、福島市ほどではないが、セシウムが急増した。そのデータは、国や自治体ではなく、「財団法人日本分析センター」が発表した。
 12月26日~1月4日の蓄積データで、54メガという測定結果が出た。10月末に同レベルで検出されて以来の数値だ。ただ、今回の数値だけでは、はっきりした原因がわからない。【日本分析センターの広報担当者】

 1平粁=100万平米だから、432メガBq/平粁とは、1日に1平米あたり432Bqのセシウムが蓄積する、ということだ【注4】。電離放射線障害防止規則第8条により、「危険だから除染しなければならないレベル」は4万Bq/平米とされている。つまり、1月2日の数値が継続した場合、100日足らずで人間が住むには危険な放射能レベルになる。内部被曝量は、定時降下物が500メガだと仮定して試算すると、1年間で0.11mSvになる。つまり、これまでの被曝量に0.11が加算される、ということだ。年間被曝量は1mSvと法律で定められている。その1割分が増えてしまうわけだ。これは明らかに「注意しなければならない量」だ。年間被曝量が5mSvを超えると、白血病のリスクが高まる。【武田教授】

 1月2日、多くの福島市民は、マスクをせずに街中を歩いていた。

 年明けに福島市や首都圏の一部で急増しているセシウムが、新たに原発から漏出したものか、すでに地表にあったものが舞い上がったのか、まだハッキリとはわかっていない。
 国や自治体がきちんと調べれば、わかる。原子炉から直接飛んでくる「死の灰」の粒径は0.3~30ミクロンくらいで、比較的小さな粒だ。他方、一度地面に落ちたセシウムは、土の粒子と結合したりシリカ(二酸化ケイ素で構成される物質)が付着したりするので、粒径が大きくなり、2~50ミクロンくらいの大きさになる。今回の定時降下物も粒径分布を調べることで、由来を特定できるはずだ。粒径がわかれば、対策もとれる。粒径が大きければ花粉用のマスクで対応できるし、粒径が小さければインフルエンザ用のマスクが必要となる。【武田教授】
 だが、国も自治体も東電も、粒径を調べた形跡はない。
 東電にいたっては、定例会見で記者から質問され、脳天気にも聞き返した。
 「定時降下物って何ですか?」

 「週刊現代」誌は、セシウム急増の原因と対策について、経産省原子力安全・保安院、原子力委員会、文科省、東電に取材した。

●経産省原子力安全・保安院
 定時降下物の担当は文科省だ。原発の外の話は文科省だから。文科省の仕事について、うちはコメントできない。

●文科省
 うちがモニタリングしているが、原因はわからない。うちでは分析していない。評価は原子力安全委員会の担当だ。

●原子力安全委員会
 評価は、現段階ではやっていない。現状の文科省データでは、数値が高いというだけで、原因はわからない。データが足りない。我々は現地で測定する部隊ではない。

●東電
 知らなかった。確認して折り返す。(1時間後)当社のモニタリングポストでは異常な値が出ていないので、原発は関係ないのではないかと。
 
 【注1】「定時降下物環境放射能」は、水を入れた円筒状の容器を建物の屋上に設置し、その中に降り積もった雨や塵を含め、どれだけ放射性物質が蓄積されたかを測定する。その数値によって、被曝蓄積量を推定することができる。空間線量でも土壌含有量でもない。
 【注2】「武田邦彦 (中部大学)
 【注3】「速報 福島中心にセシウム急増 マスク必要!!
 【注4】432メガBq/平粁=4億3,200万Bq/平粁=432/平米  ※1平粁=100万平米

 以上、記事「年明けからセシウムの量が急増している」(「週刊現代」2012年1月28日号)に拠る。

   *

 武田邦彦・中部大学教授が指摘するのは、福島県が県原子力センター福島支所で測定したセシウム降下量のデータだ。
 そのデータによれば、昨年11月の1日あたり平均降下量12メガBq/平粁に対し、12月は32メガBqと3倍近くまで上昇。12月19日、23日には100メガBqを超え、年明けの1月2日には432メガBqを記録した。その後も、3日、8日が100メガBqを超えるなど、異常な数値の検出が続いている。

 原発からのセシウム放出量は、昨年11月時点で0.6億Bq(1~3号機の合計)と推計され、事故から時間がたつにつれ減少している、とされる。
 新たに放出量が増えるようなトラブルはなく、数値が高い1月2、3日に原発周辺や正門での測定値に有意な変動は見られない。これまでにも風でセシウムが舞い上がり、測定結果が左右されたことがあった。【東電】
 1月2、3日は原発に向かって風が吹いていた。原発から飛んで来たのではなく、風で巻き上がった地表の土埃などが検査容器に混入したと考えられる。ただし、数値の高い日の風はやや強かったものの、他の日と比べて特別高いわけでもなく、原因ははっきりとは分からない。【福島県の担当者】
 県は、11日から施設屋上の床面に置いていた検査容器を高さ1mの台に置き換え、巻き上がり混入の影響を極力抑えて測定を始めた。だが、11日の数値は60メガBqで、前日10日の85メガBq、9日の28メガBqと比べて必ずしも低いとは言えない結果が出ている。

 さらに他の都道府県でも、12月に入って検出例が相次ぐ。東京では不検出が続くものの、千葉、栃木、茨城、山形でこれまでにない高い数値が出ている。
 ところが、肝心の12月27日以降の都道府県別の降下量の大半が分からない。文科省が、都道府県による測定結果を取りまとめて毎日実施していた公表を1ヵ月単位の公表に変更したためだ。
 毎日の公表を続ける福島県にしても、結果の公表は測定から2日遅れ。住民にとって何の役にも立たない。

 国、市は何の注意勧告も出していない。多くの住民はこの事実を知らないまま生活していると思う。風が強い日はこれまでにいくらでもあった。原発から新たに放出された“フレッシュ・セシウム”の可能性を本当に除外してよいのか。【菅野吉広・SAVE WATARI KIDS(渡利の子どもたちを守る会)会長】
 測定地点の値が最も高いとは限らない。「危険を煽る」と言うが、「危険そうなのにデータを出さない」というのが最も不安を煽る。花粉の飛散予想をするくらいなら、国はセシウムの予想値も出すべきだ。【武田教授】

 以上、大場弘行「年末年始 セシウム値上昇の謎を追う」(「サンデー毎日」2012年1月29日号)に拠る。

     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする