「築地野口屋」・・・・首都圏で、この旗を立てた小さなリヤカーを引き、若者たちが高級豆腐を引き売りしていた。古き良き時代を再現するかのようなアナログ的商売に暖かな目が注がれ、買物弱者の高齢者を中心に、固定客も多かった。
帝国データバンクによれば、「(株)ターベルモーノ」は、資本金1億4,960万円、野口博明・代表。2003年4月に設立。2011年3月期には、年売上高9億9,000万円を計上していた。
同社は、最大時には、東京都に26ヵ所、神奈川県に16ヵ所、埼玉県に4ヵ所、千葉県に9ヵ所、計55ヵ所の倉庫を持つまでに急成長し、毎日100数十人の引き売りする人(引き士)が街を歩いていた。
アルバイトは、時給1,200円で7時間半/日(日給9,000円相当)働く。他方、33%の歩合給なら、30,000円以上売り上げれば1日1万円以上が自分の収入になった。
だが、2011年夏から11月にかけて、従業員の半数が次々と辞めた。
引き金となったのは、「米のノルマ」だ。
大震災で品薄となった米、水、トイレットペーパーなどを売るようになっていたのだが、昨年9月、米を毎日4~5kg売らなければ歩合制の歩合率を33%→25%に落とす、と会社から口頭で通知されたのだ。
時給制のアルバイターには「買い取り」が強制されていた。例えば、湯葉820円、ざる豆腐350円・・・・割引されても買い取り額は小さくない。盆の時期には駄菓子500円が期間限定で発売されたが、売れず、9月頃には倉庫で在庫が汚臭を放った。会社は、「倉庫のものはバイトが管理すること」と宣言し、バイトに買い取らせた。
売れ残りをアルバイトを含む従業員が買い取ることで、同社は売上げとして計上していたのだ。
これも大量辞職の原因になった(推定)。
しかも、「(株)ターベルモーノ」は、入金報告が終わっても、後片付けなどをサービス残業させた。そして、賃金未払。ここで働いていたビルマ人女性3人は、何ヶ月も給与を受け取っていなかった。
「(株)ターベルモーノ」は、2011年12月19日をもって事業停止し、自己破産を申告した。
急激な規模拡大で厳しい資金繰りを余儀なくされていた中、大震災後の消費低迷で業況が縮小し、資金繰りがさらに悪化。リストラなど経費削減に努めたものの業況は改善せず、事業継続を断念。負債は、1億4,000万円(見込み)・・・・とヤフーニュースは伝える。
奇妙な事実がある。
「(株)ターベルモーノ」の倒産後、同じ引き売り事業を新会社「(株)築地野口屋」が継続していることだ。社長は、武田信介・前「(株)ターベルモーノ」副社長。住所は、「(株)ターベルモーノ」が所有していた都内倉庫の一つ。リヤカーも商品を作る機械も、「(株)ターベルモーノ」から引き継いだ(らしい)。
財産や資産を引き継いだなら、債権者への支払い義務を怠っていることになる。この点をルポライターが武田社長に尋ねると、取材を拒否した。
前目黒区議で引き売り業(屋号「十風庵」)を昨年10月に立ち上げた土屋克彦・「(株)BEPOTS(ビーポッツ)」社長は語る。
買い取りさせるとは信じられない。引き士は、必死に売上げを稼ごうとする。そこにつけこんだのだろう。企業はリスクを背負うから企業なのだ。従業員による買い取り、企業からすればノーリスクを選択しながら潰れたのは乱脈経営していたからだ(推定)。
以上、樫田秀樹「「匹売り」豆腐の野口屋が倒産」(「週刊金曜日」2012年1月20日号)に拠る。
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帝国データバンクによれば、「(株)ターベルモーノ」は、資本金1億4,960万円、野口博明・代表。2003年4月に設立。2011年3月期には、年売上高9億9,000万円を計上していた。
同社は、最大時には、東京都に26ヵ所、神奈川県に16ヵ所、埼玉県に4ヵ所、千葉県に9ヵ所、計55ヵ所の倉庫を持つまでに急成長し、毎日100数十人の引き売りする人(引き士)が街を歩いていた。
アルバイトは、時給1,200円で7時間半/日(日給9,000円相当)働く。他方、33%の歩合給なら、30,000円以上売り上げれば1日1万円以上が自分の収入になった。
だが、2011年夏から11月にかけて、従業員の半数が次々と辞めた。
引き金となったのは、「米のノルマ」だ。
大震災で品薄となった米、水、トイレットペーパーなどを売るようになっていたのだが、昨年9月、米を毎日4~5kg売らなければ歩合制の歩合率を33%→25%に落とす、と会社から口頭で通知されたのだ。
時給制のアルバイターには「買い取り」が強制されていた。例えば、湯葉820円、ざる豆腐350円・・・・割引されても買い取り額は小さくない。盆の時期には駄菓子500円が期間限定で発売されたが、売れず、9月頃には倉庫で在庫が汚臭を放った。会社は、「倉庫のものはバイトが管理すること」と宣言し、バイトに買い取らせた。
売れ残りをアルバイトを含む従業員が買い取ることで、同社は売上げとして計上していたのだ。
これも大量辞職の原因になった(推定)。
しかも、「(株)ターベルモーノ」は、入金報告が終わっても、後片付けなどをサービス残業させた。そして、賃金未払。ここで働いていたビルマ人女性3人は、何ヶ月も給与を受け取っていなかった。
「(株)ターベルモーノ」は、2011年12月19日をもって事業停止し、自己破産を申告した。
急激な規模拡大で厳しい資金繰りを余儀なくされていた中、大震災後の消費低迷で業況が縮小し、資金繰りがさらに悪化。リストラなど経費削減に努めたものの業況は改善せず、事業継続を断念。負債は、1億4,000万円(見込み)・・・・とヤフーニュースは伝える。
奇妙な事実がある。
「(株)ターベルモーノ」の倒産後、同じ引き売り事業を新会社「(株)築地野口屋」が継続していることだ。社長は、武田信介・前「(株)ターベルモーノ」副社長。住所は、「(株)ターベルモーノ」が所有していた都内倉庫の一つ。リヤカーも商品を作る機械も、「(株)ターベルモーノ」から引き継いだ(らしい)。
財産や資産を引き継いだなら、債権者への支払い義務を怠っていることになる。この点をルポライターが武田社長に尋ねると、取材を拒否した。
前目黒区議で引き売り業(屋号「十風庵」)を昨年10月に立ち上げた土屋克彦・「(株)BEPOTS(ビーポッツ)」社長は語る。
買い取りさせるとは信じられない。引き士は、必死に売上げを稼ごうとする。そこにつけこんだのだろう。企業はリスクを背負うから企業なのだ。従業員による買い取り、企業からすればノーリスクを選択しながら潰れたのは乱脈経営していたからだ(推定)。
以上、樫田秀樹「「匹売り」豆腐の野口屋が倒産」(「週刊金曜日」2012年1月20日号)に拠る。
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