「AERA」2012年1月2-9日合併増大号の特集「日本を立て直す100人」は、雑誌に明るい話題があまり載らない昨今、爽快な企画だ。
巻頭に紹介されるのは、5人。
西辻一真(29)・「マイファーム」社長は、塩分を除去する土壌改良材を開発した。宮城県岩沼市の農家の協力を得て、6月に畑とビニールハウスに土壌改良材をまいた。8月下旬にはトマトを収穫できた。糖度は通常をうわまわり、「復興トマト」と名づけた。
御手洗瑞子(26)は、2010年秋から1年間、ブータン政府のGNH委員会に首相フェローとして赴任した。担当は政府観光局。アクセスの不便さ、観光客が春秋に集中していること。航空会社にかけあって、バンコク~ブータン便の時刻を調整し、深夜に東京をたてば翌朝10時にブータンに着けるようにした。日本の女性誌、著名人の来訪を働きかけ、大手旅行社にも営業。知名度を上げた。各国の観光客のニーズを分析し、新たなマーケッティングを検討した。かくて、ブータンは「幸せの国」として日本人に定着した。
瀬谷ルミ子(34)・認定NPO法人日本紛争予防センター事務局長は、NGOや国連PKOなど所属を変えながら、ルワンダやシエラレオネで武装解除の専門家として経験を積んだ。アフガニスタンの日本大使館職員となった27歳、軍閥の解体についてカルザイ大統領から助言を求められるまでになっていた。日本に戻り、現職に就いた今、日本企業の力に着目している。日本のブランディング会社の協力を得て、平和を「流行」にするキャンペーンを国連と進めている。南スーダンでは、日本企業が寄贈したシェルター(簡易住居)が、自暴自棄だったストリートチルドレンが職業訓練をして収入を得るきっかけになった。
日本を立て直すのは、日本人だけではない。ピーテル・フランケン(44)・マネックス証券常務もその一人だ。松下電器産業(現パナソニック)でのインターンシップ参加をきっかけに、日本で働くようになった。日立製作所、シティグループ、新生銀行などを経たコンピュータとエレクトロニクスの専門家だ。東日本大震災の翌日、世界に散らばる旧知の研究者やエンジニアと連絡を取り合い、1週間後「SAFECAST」を立ち上げた。日本各地の放射線量を測定し、データをネット上で公開していくプロジェクトだ。今ではボランティア100人以上が常時携わる。数百台の機器で日本中を測っている。12月までに150万地点以上の測定を終え、福島第一原発から20km圏内のデータも揃った。
尾野寛明(29)・「エコカレッジ」社長については、少し詳しく記そう。
「エコカレッジ」は、インターネット通販の専門書古書店だ。過疎地は宝の山だ・・・・尾野は、そう語る。
尾野は、2011年12月、島根県の中山間地、雲南市の工場を丸ごと借りて、古書倉庫として生まれ変わらせた。工場は、田畑の中にぽつんと立つ。建物面積1,500平米のミシン部門の工場で、農業以外に目立った産業のない地域に貴重な雇用を生んでいた。しかし、17年前に海外生産シフトの波を受けて閉鎖された。
壁に張り紙や配電盤などが残る工場に、新しい書棚が所狭しと並ぶ。10万冊を越える書籍が運びこまれた。
尾野は、埼玉県出身だ。その父親は、大手専門商社に勤めていた。身体の不調もいとわずに猛烈に働いた。役員ポスト目前、尾野が高校3年のとき、父親は癌で亡くなった。尾野は、父親の死をきっかけに起業を志した。大企業で必死に働いても報われる保証はない・・・・。
大学に入って、専門書の価格が高すぎるのに気づいた。起業のヒントになった。仲間とともに専門書の古書売買を手がける会社を設立した。学年が変わって不要になった専門書を買い取り、必要な人に売る。専門書は漫画や小説と違って書棚に滞留することが多いため、関心をもつ古書店は少なかった。順調に利益が積み上がった。
2006年、ゼミの実地調査で島根県川本町を訪れた。これが拠点を移すきっかけになった。
同年10月、本社を川本町に移した。当時の在庫は15,000冊。東京で借りていた事務所+倉庫は計30平米で家賃10万円ほど。川本町ではその十倍の面積の店舗+倉庫を3万円で借りることができた。インターネットと宅配便を使えば、古書の買い取り・販売に不利はなかった。
町をあげて支援してくれた。経理、社会保険、登記などの複雑な業務について、地元の商工会や役場、銀行が親身に相談にのってくれた。人的リソースを使い放題だった。
2010年、雲南市に2号店が開店。地元に雇用をもたらした。17人が働き、売上高は5年間で8倍近く増え、5,000万円を得た。
尾野は、川本町から「空き店舗活用アドバイザー」に任命された(起業家誘致)。雲南市が開催する「幸雲南塾」(地域活性化を担う若者の養成講座)の運営にも関わる。
以上、太田匡彦/小林明子/山根祐作(編集部)「日本を立て直す100人 ~停滞する日本に力を吹き込む」(「AERA」2012年1月2-9日合併増大号)に拠る。
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巻頭に紹介されるのは、5人。
西辻一真(29)・「マイファーム」社長は、塩分を除去する土壌改良材を開発した。宮城県岩沼市の農家の協力を得て、6月に畑とビニールハウスに土壌改良材をまいた。8月下旬にはトマトを収穫できた。糖度は通常をうわまわり、「復興トマト」と名づけた。
御手洗瑞子(26)は、2010年秋から1年間、ブータン政府のGNH委員会に首相フェローとして赴任した。担当は政府観光局。アクセスの不便さ、観光客が春秋に集中していること。航空会社にかけあって、バンコク~ブータン便の時刻を調整し、深夜に東京をたてば翌朝10時にブータンに着けるようにした。日本の女性誌、著名人の来訪を働きかけ、大手旅行社にも営業。知名度を上げた。各国の観光客のニーズを分析し、新たなマーケッティングを検討した。かくて、ブータンは「幸せの国」として日本人に定着した。
瀬谷ルミ子(34)・認定NPO法人日本紛争予防センター事務局長は、NGOや国連PKOなど所属を変えながら、ルワンダやシエラレオネで武装解除の専門家として経験を積んだ。アフガニスタンの日本大使館職員となった27歳、軍閥の解体についてカルザイ大統領から助言を求められるまでになっていた。日本に戻り、現職に就いた今、日本企業の力に着目している。日本のブランディング会社の協力を得て、平和を「流行」にするキャンペーンを国連と進めている。南スーダンでは、日本企業が寄贈したシェルター(簡易住居)が、自暴自棄だったストリートチルドレンが職業訓練をして収入を得るきっかけになった。
日本を立て直すのは、日本人だけではない。ピーテル・フランケン(44)・マネックス証券常務もその一人だ。松下電器産業(現パナソニック)でのインターンシップ参加をきっかけに、日本で働くようになった。日立製作所、シティグループ、新生銀行などを経たコンピュータとエレクトロニクスの専門家だ。東日本大震災の翌日、世界に散らばる旧知の研究者やエンジニアと連絡を取り合い、1週間後「SAFECAST」を立ち上げた。日本各地の放射線量を測定し、データをネット上で公開していくプロジェクトだ。今ではボランティア100人以上が常時携わる。数百台の機器で日本中を測っている。12月までに150万地点以上の測定を終え、福島第一原発から20km圏内のデータも揃った。
尾野寛明(29)・「エコカレッジ」社長については、少し詳しく記そう。
「エコカレッジ」は、インターネット通販の専門書古書店だ。過疎地は宝の山だ・・・・尾野は、そう語る。
尾野は、2011年12月、島根県の中山間地、雲南市の工場を丸ごと借りて、古書倉庫として生まれ変わらせた。工場は、田畑の中にぽつんと立つ。建物面積1,500平米のミシン部門の工場で、農業以外に目立った産業のない地域に貴重な雇用を生んでいた。しかし、17年前に海外生産シフトの波を受けて閉鎖された。
壁に張り紙や配電盤などが残る工場に、新しい書棚が所狭しと並ぶ。10万冊を越える書籍が運びこまれた。
尾野は、埼玉県出身だ。その父親は、大手専門商社に勤めていた。身体の不調もいとわずに猛烈に働いた。役員ポスト目前、尾野が高校3年のとき、父親は癌で亡くなった。尾野は、父親の死をきっかけに起業を志した。大企業で必死に働いても報われる保証はない・・・・。
大学に入って、専門書の価格が高すぎるのに気づいた。起業のヒントになった。仲間とともに専門書の古書売買を手がける会社を設立した。学年が変わって不要になった専門書を買い取り、必要な人に売る。専門書は漫画や小説と違って書棚に滞留することが多いため、関心をもつ古書店は少なかった。順調に利益が積み上がった。
2006年、ゼミの実地調査で島根県川本町を訪れた。これが拠点を移すきっかけになった。
同年10月、本社を川本町に移した。当時の在庫は15,000冊。東京で借りていた事務所+倉庫は計30平米で家賃10万円ほど。川本町ではその十倍の面積の店舗+倉庫を3万円で借りることができた。インターネットと宅配便を使えば、古書の買い取り・販売に不利はなかった。
町をあげて支援してくれた。経理、社会保険、登記などの複雑な業務について、地元の商工会や役場、銀行が親身に相談にのってくれた。人的リソースを使い放題だった。
2010年、雲南市に2号店が開店。地元に雇用をもたらした。17人が働き、売上高は5年間で8倍近く増え、5,000万円を得た。
尾野は、川本町から「空き店舗活用アドバイザー」に任命された(起業家誘致)。雲南市が開催する「幸雲南塾」(地域活性化を担う若者の養成講座)の運営にも関わる。
以上、太田匡彦/小林明子/山根祐作(編集部)「日本を立て直す100人 ~停滞する日本に力を吹き込む」(「AERA」2012年1月2-9日合併増大号)に拠る。
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