何度もご紹介している朝日新聞静岡版に連載中の渡辺先生のコラムの最新号。またも深く頷いた。以下、転載させて頂く。
※ ※ ※(転載開始)
がん内科医の独り言(2015.1.24)
がんサバイバー
■経験生かし他者のため
「がんサバイバー」の勉強会を開きました。治った人、治らない人、再発した人、家族まで含めてがんサバイバーと呼び、日本には約600万人いるそうです。私たちが診療で接する患者だけでなく、治療は終わったけれど、不安や心配が抜け切れない人、我々からみると「元患者」と思える人などが含まれます。
看護師、医師、薬剤師などの医療者が広く社会に目を向け、がんサバイバーをどう支援するのか。その考え方や、技術を学び、共通認識をもつため、土曜日の午後を使った勉強会です。講師にがんサバイバー2人を招きました。
ひとりは30代の女性。浜松市でがんサバイバー向けショップの店長をしています。抗がん剤による脱毛に対応するウィッグ(かつら)や帽子などの販売、治療中の体調管理やお化粧、お肌のケアの指導をしています。まさに、がんサバイバー自らが、がんサバイバーの生活を支援しているのです。
治療中の体験談も聞きました。誰にも相談できないつらい日々を過ごし、離婚を乗り越え、家族や友人の支援を受けて希望を見いだした――など、胸に迫るものがありました。
もう一人の講師は、岐阜県でがん患者団体を主催している60代の女性です。「患者お茶会」や、医師などを講師に招いた勉強会を定期的に開き、正しい情報を提供することで、患者の心配や不安を軽減し、がん検診普及活動や地域の医療行政と連携して数々の提言などをしているそうです。
がん治療の真っ最中の患者は自分のことで精いっぱいで、他人のことなどとても考えていられません。しかし、その経験を生かし、他の患者、世の中のために役に立ちたい、という「利他の心」で活動している講師の姿勢に感銘をうけました。
看護師や医師は天職として利他の行為が基本です。「利他の心」を共有できた実り多い勉強会でした。(浜松オンコロジーセンター・渡辺亨)
(転載終了)※ ※ ※
医療関係者に接していると、実に天職としての利他な仕事であることを痛感する。普通の暮らしをしていれば、人はどうしても利他よりまずは利己ということになるだろう。それは当然のことだと思う。けれど、がんになってからは、確かに利他の心が目覚めているように感じる。
自分の経験が、患者として辛い思いをしている人に何かの役に立てるなら、と素直に思うからだ。それほどがんという経験(特に、再発後のエンドレスの治療)は私にとって肉体的には勿論、精神的にそれほど大きなストレスだったということだろう。
患者会で話をさせて頂くのも、原稿を書かせて頂くのも、こうして日々ブログを綴るのも、私にとってはそういうことだ。加えて、これには自分の気持ちを整理して落ち着かせるため、家族に言い辛いことを書くことでやんわり伝えるため、などという意味もあるのだけれど・・・。
もちろん治療が終わったわけではない。それどころかこれからも生ある限りずっと続くわけだから、残念ながら全て自分の生活を投げ打って・・・というわけにはいかない。あくまでも自分の生活(仕事や趣味を含む)をうまくコントロールしながら、それ以外の時間をこうして利他のことに使っていくのが、今の私に出来るベストの選択だと思う。
これまでも多くのお友達を見送ってきた。皆、どこかにそうした気持ちを持っていたのではないかと思う。残酷なことだけれど、どんなに立派な人も、どんなに素敵な人も、もっともっと長生きして欲しかった人も、旅立っていかざるをえないのを見てきた。
彼女たちがどんな思いで利他の気持ちを持って、自分が病気と闘う中で、患者会の仕事に尽力したり、その生き様をブログに綴ったり、発言したりしてきたのか。そのことに思いを馳せると、あらためてその尊さを想う。
私も生ある限り自分が経験したことを自分だけに留めることなく、その一端でも担っていくことが出来たら本当に幸せだな、と思う。
※ ※ ※(転載開始)
がん内科医の独り言(2015.1.24)
がんサバイバー
■経験生かし他者のため
「がんサバイバー」の勉強会を開きました。治った人、治らない人、再発した人、家族まで含めてがんサバイバーと呼び、日本には約600万人いるそうです。私たちが診療で接する患者だけでなく、治療は終わったけれど、不安や心配が抜け切れない人、我々からみると「元患者」と思える人などが含まれます。
看護師、医師、薬剤師などの医療者が広く社会に目を向け、がんサバイバーをどう支援するのか。その考え方や、技術を学び、共通認識をもつため、土曜日の午後を使った勉強会です。講師にがんサバイバー2人を招きました。
ひとりは30代の女性。浜松市でがんサバイバー向けショップの店長をしています。抗がん剤による脱毛に対応するウィッグ(かつら)や帽子などの販売、治療中の体調管理やお化粧、お肌のケアの指導をしています。まさに、がんサバイバー自らが、がんサバイバーの生活を支援しているのです。
治療中の体験談も聞きました。誰にも相談できないつらい日々を過ごし、離婚を乗り越え、家族や友人の支援を受けて希望を見いだした――など、胸に迫るものがありました。
もう一人の講師は、岐阜県でがん患者団体を主催している60代の女性です。「患者お茶会」や、医師などを講師に招いた勉強会を定期的に開き、正しい情報を提供することで、患者の心配や不安を軽減し、がん検診普及活動や地域の医療行政と連携して数々の提言などをしているそうです。
がん治療の真っ最中の患者は自分のことで精いっぱいで、他人のことなどとても考えていられません。しかし、その経験を生かし、他の患者、世の中のために役に立ちたい、という「利他の心」で活動している講師の姿勢に感銘をうけました。
看護師や医師は天職として利他の行為が基本です。「利他の心」を共有できた実り多い勉強会でした。(浜松オンコロジーセンター・渡辺亨)
(転載終了)※ ※ ※
医療関係者に接していると、実に天職としての利他な仕事であることを痛感する。普通の暮らしをしていれば、人はどうしても利他よりまずは利己ということになるだろう。それは当然のことだと思う。けれど、がんになってからは、確かに利他の心が目覚めているように感じる。
自分の経験が、患者として辛い思いをしている人に何かの役に立てるなら、と素直に思うからだ。それほどがんという経験(特に、再発後のエンドレスの治療)は私にとって肉体的には勿論、精神的にそれほど大きなストレスだったということだろう。
患者会で話をさせて頂くのも、原稿を書かせて頂くのも、こうして日々ブログを綴るのも、私にとってはそういうことだ。加えて、これには自分の気持ちを整理して落ち着かせるため、家族に言い辛いことを書くことでやんわり伝えるため、などという意味もあるのだけれど・・・。
もちろん治療が終わったわけではない。それどころかこれからも生ある限りずっと続くわけだから、残念ながら全て自分の生活を投げ打って・・・というわけにはいかない。あくまでも自分の生活(仕事や趣味を含む)をうまくコントロールしながら、それ以外の時間をこうして利他のことに使っていくのが、今の私に出来るベストの選択だと思う。
これまでも多くのお友達を見送ってきた。皆、どこかにそうした気持ちを持っていたのではないかと思う。残酷なことだけれど、どんなに立派な人も、どんなに素敵な人も、もっともっと長生きして欲しかった人も、旅立っていかざるをえないのを見てきた。
彼女たちがどんな思いで利他の気持ちを持って、自分が病気と闘う中で、患者会の仕事に尽力したり、その生き様をブログに綴ったり、発言したりしてきたのか。そのことに思いを馳せると、あらためてその尊さを想う。
私も生ある限り自分が経験したことを自分だけに留めることなく、その一端でも担っていくことが出来たら本当に幸せだな、と思う。