ロッキングチェアに揺られて

再発乳がんとともに、心穏やかに潔く、精一杯生きる

2020.4.28-29 寝ても寝てもまだまだ眠れる2日間

2020-04-29 22:08:06 | 日記
 
 火曜日。
 昨夜もやはり残業になってしまった。夫が在宅勤務で夕食を作ってくれているからなんとか回るのであるが、これで帰宅後、一から夕食の支度・・・ではかなりしんどいだろう。一日交代で在宅勤務にして良かった。
 今日は、非常事態宣言期間最後の在宅勤務日である。祝日明けの木金は出勤、GWが開けた5月からは、オンライン上とはいえ学内が始動するので、通常出勤に戻る予定である。

 夫を送り出し、勤務開始。PCに座っていると、職場から届くメールがこれまでで一番多かった。お昼は相変わらずの冷凍食品で済ませる。味気ないけれど、もたもた料理を作っていたら午後の勤務開始に間に合わない。外に出て気分転換が出来ないのがちょっと辛い。わかり切ってはいるが、自宅は仕事をする場所ではない。
 日が長くなって外はまだ明るいのに早くも就業時間が終わる。結局靴を履かず、新聞を取りに行っただけ。そのまま夕食の支度に移行し、夫が帰宅してすぐに食事を摂れるのは在宅勤務だからこそ、だけれど。

 食後の薬を飲んでリビングで夫好みの映画を見始めたら、ほどなくしてタリージェの眠気に勝てず、あっという間に寝落ち。夫に起こされて時計を見ればもう日付が変わる頃。なんと・・・背中が痛いのにもめげず、クッションを枕に3時間半ほど眠っていたことになる。のそのそ起きてお風呂に入って、夫から頼まれた本をネット注文。自分のものも何冊か見繕ってGW用にポチっとして、ベッドに入ったのは丑三つ時になった。

 水曜日。昭和の日の祝日。
 いつも通りの時間に目覚ましが鳴ったのをしっかり消して、二度寝突入。朝の連続テレビ小説が始まるちょっと前にお手洗いに起きて、寝ぼけ眼でドラマを視、沢山笑ってからしつこく寝直す。1時間くらい、のつもりがうとうとうとうと眠り続け、結局2時間以上寝込んでしまった。昨日から一体どれだけ眠れるやら・・・。ろくに身体を動かしていないのにこの眠さは一体どうしたことだろう。

 ブランチは夫が用意してくれた。お友達に頂いたという新玉ねぎのステーキがメインディッシュ。甘くてみずみずしい。食後の片付けをしていると早くも生協のお届け物が到着。冷凍ものや野菜・果物の欠品が予想以上に多い。普段の1.5倍ほどの注文があり追い付かないようだ。確かに我が家も注文金額が普段に比べてかなりアップしている。

 外はいいお天気。溜まった洗濯物を洗って干し終えると、夫がベランダに鯉のぼりを飾った。新緑の中、気持ちよさそうに泳ぐ姿にちょっと気持ちが癒される。
 午後はオンラインで試行することになった瞑想ヨーガクラスの組み立てを考える。録画した映画を1本観て、夕方夫と買い物に出た。日曜日と同じで、夫は外で待っていてもらってドラッグストアと小さなスーパーを梯子して1時間ほど。店内ではなかなか距離を取ってくれずに近づいてくる人もいるし、こちらから離れるしかない。緊張しながら外出すると、短時間であっても本当に疲れる。

 夕食も夫任せ。ということで、瞬く間に2日間が過ぎた。
 明日から2日間はまた、お仕事である。願わくば早く帰宅出来ると良いのだけれど。
 
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2020.4.25-26 ステイホーム週間スタートの2日間

2020-04-26 21:20:17 | 日記
 土曜日。いいお天気だ。緊急事態宣言発令中でなかったら今日から温泉行きの予定だったな、とぼんやり思う。
 ベッドで朝の連続テレビ小説のおさらい編を視た後、のろのろと起き出した。夫が先に起きて朝食の用意をしてくれたので、有難く頂く。
 予報通り外は快晴。これは洗濯日和だわと普段の洗濯物に加えて、ずっと気になっていた冬物コートやニット等のお家洗いを合わせて2回洗濯機を廻し、ベランダ一杯に干した。ところが、とんでもない強風。取り込もうと思った時には諸々飛ばされ、階下まで拾い集めに行くことになった。トホホである。

 夫はその間、2週間分(と言っても今は週3勤務だから、実質は1週間+1日の6日分)のワイシャツクリーニングを出しに出かけ、帰りに直販の野菜や隠れ家パン屋さんのパンをお土産に買ってきてくれた。
 一日家にいてやったことといえば、患者会のZoomミーティングの準備やテスト等をし、リビングでダラダラと録画した映画を1本観ただけ。お昼は手抜きのインスタントだったので、夕食の支度までは何等動かずじまい。

 子どもの頃から外で元気よく遊ぶというより、家で読書やらお絵描きやらが好きだったから、基本的に家にいるのは苦ではない。一人でお留守番するのは大好き。とはいえ、ステイホーム期間中、心して動かないと本当に運動不足である。
 一人でいられるならヨガやストレッチをしたり、本を読んだり・・・がスムーズなのだけれど、隣室やら同室に夫がいて、PCをしていたり、音楽を聴いていたり、となるとなかなか一人やりたい放題というわけにもいかない。どこのお宅も色々苦労して工夫されているのだろうなと思う。

 日曜日。今日も朝寝坊。
 ステイホームクーポンという名の甘い誘惑にまんまと乗っかってしまった浅はかさよ。百貨店はクローズ、いつから開くかもわからないことだし・・・と金曜日の夜、お出かけする当てもないのにご贔屓ブランドの春物上下をあれこれ注文したものが、早々と到着した。既に夏物が出てくるシーズンだけれど、店舗がクローズだから普段より早く春物セールが始まっているようだ。店頭に出せない在庫の保管が大変なのだろう。早3週間近くクローズしているアウトレットモールのウインドウは季節が止まっている。

 遅めの朝食後は掃除を済ませ、録画したドラマ等を見てのんびり過ごす。ドラマの収録も今やストップしているだろうから、早晩新しいドラマを視ることも出来なくなるだろう。昨日の夫のお土産パンで昼食。
 3日に1回どころか1週間ぶりにドラッグストアとスーパーへ必要物資だけ買い出しに。木曜日の夜に帰宅して以来、およそ60数時間ぶりに靴を履いて外に出た。本当なら何も買わないでOKの筈だったが、生協宅配の欠品が多かったため、予定が狂ったものだけぱぱっと。夫と2人でお店に入るのは避けた。

 とはいえ一人で重い荷物を持って帰れないので、夫に自転車で一緒に来てもらい、夫は店外で待ってもらうことにした。駅前の大きなスーパーはそれほど混んでいないが、見ればレジ数を絞っており、結局長い列が出来ていそうだったので、止めて小さいスーパーで買い物を済ます。1時間ほど外の空気を吸ってお日様に当たった。いいお天気だが、今日も結構風が強い。

 夕方から患者会のスタッフと今後の活動について1時間ほどZoomミーティング。久しぶりにPC越しにお顔を見て、お喋りが出来てちょっと不思議な気分だったけれど、楽しかった。
 夕食後は別の患者会のZoomミーティングで1時間、ボランテイア講習会に参加した。

 そんなこんなでステイホーム週間スタートの2日間が終わった。PCを通してではあったけれど、久しぶりな方たちとの再会が叶ったこともあり、世の中の進歩を改めて有難く思った。
 明日はまた出勤日。金曜日が在宅勤務だったことを考えると、また仕事が溜まっていることだろう。ちょっと咳き込んだり、息苦しかったりすると、まさか・・・とかもしや・・・とか不安が首をもたげてこないわけでもない。けれど、とにかく日々出来ることをして過ごしていかなくては。
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2020.4.24 在宅勤務の週末に思うこと

2020-04-24 20:10:50 | 日記
 
 治療週の週末、金曜日。在宅勤務5日目である。
 案の定、朝は腹痛で目覚め、朝食後は下痢が始まった。我ながら笑えるほど分かり易い身体である。
 こんな頻繁に繰り返す下痢になったことがない人だと、ああ、今日は調子悪い・・・と思うのかもしれない。けれど、一日おきに下痢しようが、とにかく普通に起きて普通に食事が摂れているのだから、私にとっては体調不良とは言えない、ごく普通の状態である(普通のハードルがかなり低いのかもしれないが・・・。)。

 昨日は、火曜日の在宅勤務、水曜日の通院治療明けで3日ぶりの出勤。覚悟はしていたものの、溜まったメールと頻繁にかかってくる電話とZoomの会議等に忙殺された。これまで殆ど残業らしい残業はしていなかったのに、在宅勤務が始まってからの出勤日は定時に帰宅出来たためしがない。まあ、ただでさえ年度初めの繁忙期であり、週5日勤務しても足りない中、新型コロナウィルス感染拡大が止まらない前代未聞の事態。
 職場は混乱の真っ最中。急ごしらえの在宅勤務をしながら、GW明けからはオンライン授業実施という目の前に迫った至上命題をクリアしていかなければならないのだから、それはもう致し方ないわけだ。

 ちょっと愚痴をこぼせば、門外漢の夫は「授業は5月からスタートなんて無理なことは止めて、GW明けに出勤してから準備して、出来るようになった段階から授業を始めればいいじゃない。」等とのたまう。だが、巷では授業料返還要求やら、オンライン対応のための一時金一律支給やらと大変なことになっている。

 そんな中、夕方、職場で岡江久美子さんの訃報が流れた。志村けんさんの訃報の時より出勤している職員が大分少ないので、あの時ほどの騒然ぶりではなかった。けれど、今回はさらに若く溌剌としたイメージの女性だったこともあって、女性の多い職場内では「どんどん年齢が下がっている・・・次は50代?怖いですね。」という話で持ち切りになった。

 私が再発乳がん治療を続けていることを知っているかつての部下は、あえて乳がんと明言せず、「がんの放射線の治療中で、免疫力が下がっていたみたいですよ。」と言った。
 「ああ、もう他人事ではないわ。早く帰りたい・・・」と思わず口走っていた私。
 岡江さんは初期の乳がん術後の放射線治療だったというから、初発がステージⅠだった私と同じ状況だろう。私も術後、3月に丸々1か月以上をかけて月曜日から金曜日まで(久しぶりに定期券を買って!)週5日照射を繰り返すこと5回、計25回の放射線治療を受けた。

 途中、小3だった息子からインフルエンザをもらって高熱で寝込み、数日間治療をお休みせざるを得なかったという苦い記憶がある。だが、治療が終われば、主治医からは「いつでも職場復帰していいですよ。」と言われ、4月、繁忙期の職場に復帰した。職住近接だったから満員電車での通勤がないという恵まれていた環境だったこともあるけれど、2か月ぶりの仕事は復帰直後に疲れやすかったこと以外は特に問題もなく、時短を申請するわけでもなく通常勤務だった。

 岡江さんも2月半ば迄で放射線治療が終わっていたというのなら、事務所のコメントのような免疫力云々・・・ということはそれほどないだろうに、と正直な感想を持った。もちろん人により副作用の出方は千差万別だから、決めつけるようなことは言えない。けれど、これを聞いた乳がん治療中の人が不安になって治療を恐れて・・・なんてことになると、良くないのにな、と思った。

 今朝の朝刊で、がん研有明病院の大野真司先生が「早期の乳がん手術後に行う放射線治療が、新型コロナウィルス感染症の重症化を招くという科学的根拠は現時点ではなく、考えにくい。不安な乳がん患者は治療を勝手に中断せず、まずは主治医に相談してほしい。」というコメントを出されていた。本当にそうだ。どうか冷静に対応してきちんと初期治療を全うしてほしい、万一治療を止めて再発することになったら、泣くに泣けない、と強く思う。

 さて、そんなわけで昨夜も心身ともにヨレヨレの状態で帰宅した。定時でライナー帰宅した夫に夕食の支度をさせてしまって申し訳なかった。
 そんな時、タイミング悪くLINEをキャッチした。
 あるグループの友人からだった。個人的にうんと親しいわけでもないので、グループLINEではやりとりがあるけれど、一対一でのやりとりは殆どない。その彼女から「岡江久美子さん、乳がん治療だったとか。○○(私のニックネーム)もくれぐれもお大事に❕❕」というコメントと、笑顔の猫が両手にダンベルを持って筋トレ中「健康第一」というスタンプがセットで飛んできた。

 普段なら笑って返信してお終いに出来る筈だった。空腹と疲労となんとなくささくれ立った気持ちが「思い出して頂きありがとうございます。」で終わらせなかった。「でもちょっと複雑。何とか生きてます。仕事も病院も行っています。」と返した。
 それを見た彼女がちょっとでもまずかったな・・・と思ってくれれば、ごめんね、の一言があれば、それで済んだのだけれど。ほどなくして「仕事も病院も、よーく気をつけてね❕」と来た。
 よーく気を付ける?これ以上どうやって?貴女に言われなくても、私は今、自分なりに出来ることはやっている。

 これはちゃんと私の気持ちを伝えておかないと、また同じことが起こるな、と反射的に思った私は、止せばいいのに、また続けた。「気を付けていますよ。もちろん。ハイリスクなのは自分が一番わかっているから。でも仕事も病院も行かないわけにいきません。既に延命治療を12年間続けているわけです。今も6月からの新薬を使えるのを待っているのです。健康第一、なんて言われるとどうレスポンスしてよいやら。善意で言ってくださったのはよくわかるけど、本当はそっとしておいて頂くのが一番ありがたいです。我儘だと思ったらスルーしてください。コロナ騒ぎで仕事も忙しく、気持ちに余裕がないのかもしれません。いつもなら笑ってやり過ごせたかもしれないけれど、タイミング悪かったですね。すみません。」と。

 我が家としては遅い食事を摂りながら(もう22時近かった。)そんなやりとりを入力している私を見た夫が、ため息をつきながら「今、貴女はよほどストレス溜まっているんだね。いつもならスルーするのに。」と言った。そして、「これを機会に仕事を辞めることも選択肢に入れた方がいいんじゃないの?」とまで。彼女からはその後「かえってごめんね❕」と返事が来て、そのやりとりは終わった。

 いつだったかこのブログでも、この新しいウィルスとは闘うというよりも(私ががん細胞と長く共存してきたように)共存していく必要があるのではないか、と書いた記憶がある。今朝のニュースで山中伸弥先生が同じようなことを言っておられた。この闘い(あまり好きな言葉ではない。闘病中と言われるのも苦手である。)長期戦になることがわかってきた。ずっとファイティングポーズを続けていては疲れ過ぎてしまう。皆が皆、生まれて初めての非常事態で慣れぬ状況のもと、何とか折り合いをつけながら、ただでさえストレスが溜まって心身ともに疲れているのだ。

 今、家にいられる人は、絶対家にいた方が良い。「歩かないと足が動かなくなってしまうから・・・」が口癖で「今日は駅前のスーパーまでぐるっと一回り散歩してきたの。」という母にもしつこく言って聞かせている。私のことを、「持病がある人は酷くなるそうよ。」と心配しているけれど、自分だって高齢でダブルキャンサーのサバイバー。十分ハイリスクなのだから、と。

 このところ考えていたことであるが、なかなか記す勇気がなかった。あえて誤解を恐れずに言えば、70年以上続く戦争のない時代に私たちは生きている。医療の目覚ましい進歩により、かつては生き永らえることの出来なかった高齢者や病弱者が命を繋いでいる。自然淘汰という言葉のとおり、弱き者は倒れていく運命なのかもしれない。となれば、高額な治療で命を繋いで頂いている私は間違いなくその一人である。年長の夫もしかり。

 夫がしみじみ「自分たちが同時にいなくなった時のことを真剣に考えておかないと。遺された〇〇(息子)が困らないように、通帳やら家の権利書やら一か所にまとめておかないと・・・」と言い出した。そう、冗談でなく、準備を始めておかなければならないかもしれない。
 一旦新型コロナウィルスに感染して重症化したら、がん患者の終末期の1,2か月どころか半月足らずで命が持っていかれるのを目の当たりにして心が泡立つ。

 というわけで、色々なところで歪みや疲れが目立ち始めている週末だ。それでも窓の外を見れば眩しいほどの新緑、青い空、白い雲。大きく深呼吸をしながら、久しぶりに職人さんたちが行き来しないベランダに出られる幸せを噛み締めた。
 とにかくこの週末からGW終了までの12日間は、より一層の“ステイホーム”期間。私たちの心と身体が試される時である。都立公園の駐車場もクローズされるという。スーパーでの買い物も単独で、3日に1回でとのことだ。
 来週も3日出勤の予定だ。週末からは早くも風薫る5月が始まる。GW明けはまた怒涛の日々が待っている。心と身体を出来る限りフラットな状態に整えておかなくては、と思う金曜日の夜である。

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2020.4.22 腫瘍内科診察、パージェタ・ハーセプチン20クール目

2020-04-22 22:53:54 | 治療日記
 
 昨日は在宅勤務日だった。居住する棟の大規模修繕工事の最終段階で、朝から南側の足場解体取り外し作業の騒音が続く。セールスの電話等も結構入って来るし、やはり自宅は執務環境に適した環境ではない。お腹は一日おきの下痢の日。夫を送り出してからは落ち着かなかった。職場とのメールのやりとりなどをし、結局一歩も出ずに夕方新聞を取りに行っただけ。
 夫が帰宅して、用意した夕食を済ませ、出かけるのが嫌にならないうちに、と夫が送ってくれて病院最寄り駅に向かった。明日はお天気が崩れるようなので、折り畳み傘を出がけに荷物に足した。

 行きの車内は空いている。ロングシートの隅とせいぜい真ん中にしか座る人はいない感じ。皆マスクをしている。今はなかなか手に入らないといっても、皆さんどうにかして調達しているのだなあ、と思う。
 車内で原田マハさんの「たゆたえども沈まず」(幻冬舎文庫)を読み始めた。帯には「この本と旅をしました。そこには会えるはずのないゴッホがいました。」という女優・北川景子さんのコメント。表紙はゴッホの「星月夜」である。序章だけ読み、これは面白いに違いない!と確信し、明日大事に読むことに。
 病院最寄り駅に到着すると、3週間前に比べてより一層駅が閑散としている。売店も当面の間休業の貼り紙。駅ビルも空いているのは食料品の階だけのようだ。

 宿泊は前回とは違うが、これまで何度もお世話になっているホテルだ。チェックインカウンターには距離が取るためのポールが置いてあり、メディカルチェックアンケートも記入するように言われた。他の宿泊客にはどなたとも会わずにチェックイン。空いているのだろうか。

 本の続きを読みたい気持ちは山々だったが、これから読み出したら眠れなくなってしまう、と我慢。テレビをつけると新型コロナウィルス感染の話題がエンドレスだ。都内は200人の大台には達しないけれど、相変わらず3桁の感染者数が続いている。
 早めに入浴したら、あっという間に眠ってしまった。夜中一度目覚めたが、またすんなり寝直してモーニングコールのちょっと前に自然と目が覚めた。7時間以上たっぷり眠った。

 足湯を終えて、身支度を整え、レストランに降りる。いつもは焼きたてデニッシュがビュッフェ形式で置いてあるが、今日はビニール袋に一人分ずつパッケージされていた。そして、私以外1人だけ。途中で2人降りてきたが、入れ替わりに出ていく人もいて、なんだか恐ろしいくらいしーんとしている。早々に食事を終えて、朝刊を頂いて部屋に戻り、新聞を読み、朝の連続テレビ小説を視てからチェックアウトした。

 外はまだお天気が良いし、割と暖かい。病院前の川沿いの遊歩道にはパンジーやチューリップ等が咲き乱れている。春爛漫なのである。桜の木はすっかり緑が濃くなっていた。
 正面入り口はいつも2か所解放されているが、今朝は1か所が入り口専用、1か所が出口専用になっていた。入ると、再来予約がある人は自動再来受付機に動線が繋がっており、それ以外の人はカウンターで健康チェックがあり、症状がある人は受付窓口に行く形になっていた。ちょっと緊張して、IDカードを通す列に加わる。今日は採血・レントゲンがなく、直接腫瘍内科の診察、化学療法室というシンプルなスケジュールである。

 予約時間までに30分以上ある。腫瘍内科の受付はすんなり。今月2回目なので、保険証チェックもなし。やはり待合いは皆さんかなり間を置いて座っている。定位置は確保できなかったので、2列後ろに荷物を置く。少し落ち着いたところで血圧測定。118-72、脈拍は91。

 すぐに昨日の本の続きを読み始める。裏表紙には「19世紀後半、栄華を極めるパリの美術界。画商・林忠正は助手の重吉と共に流暢な仏語で浮世絵を売り込んでいた。野心溢れる彼らの前に現れたのは日本に憧れる有名画家ゴッホと、兄を献身的に支える画商のテオ。その軌跡の出会いが“世界を変える一枚”を生んだ。読み始めたら止まらない、孤高の男たちの矜持と愛が深く胸を打つアート・フィクション」とある。

 そう、フィクションなのだけれど、解説で美術史家の圀府寺司さんが書いておられる通り、“全編にわたって物語の細部に至るまで歴史的史実がしっかり押さえられている”ため、どこまでが本当でどこまでがフィクションなのか、架空の人物や出来事がどれくらい挿入されているのかわからないほどぐいぐい引き込まれた。
 私が初めてパリを訪れたのは、知人・Hさんの家に夏休みに40日もお世話になった大学2年の時。その春、彼女から聞いた、頭文字がHだと仏語でHは発音しないので、違う名前で呼ばれるという話が新鮮だった。私も同じ頭文字だったので同じことだった。この画商ハヤシもHを発音されずアヤシと呼ばれている。

 その知人宅では春に3人目の赤ちゃんが生まれたばかりだったから(今思えばそんな状況でよくも転がり込んだものだが、1年前から何度もお誘いを受けていた。)、乳飲み子を抱えた彼女と一緒に観光するわけにいかず、メトロの乗り方と簡単な単語と数字だけ教わって、あとは一人で朝食後から夕食前まで、ろくにお昼も食べずに歩き廻った。学生だと美術館も割安だったし、毎日のようにどこかの美術館に通った。ルーヴル美術館だけでなく、オルセーやロダン美術館、ギメ(東洋)美術館、楽器博物館にも・・・。その後も、卒業旅行やら結婚後の観光で訪れたのに加え、研修で3か月住んだことがある。〇区と言われてもなんとなく土地勘があるから読んでいて楽しかった。

 今は本当に凄い時代になったなあと実感するのは、こうして本を読みながら、この絵はどんなだったかしら、とスマホで検索すればその絵がぱっと画像で出てくるところ。うーん、なるほど、この絵の描写をこう書くか、とうんうん頷きながら読み進めた。本当、原田さん、凄い・・・。400頁超え、実に堪能した。

 30分ほどで「中待合いへどうぞ」の番号が掲示板に出た。大荷物を抱えて移動する。今日は診察トップバッターだ。採血の結果待ちがないと、こんなにも予約時間通り。すぐ先生がお顔を出されて、名前を呼ばれ診察室へ。ご挨拶をして、大荷物をカゴに入れてから席に着くのはいつもと同じだ。
 
 「まずは」と体温計を差し出され、検温。6度8分。そして「職場はどうですか。」と尋ねられ、「週に2度ほど在宅勤務が始まりましたが、なかなか環境が整っていないので・・・出勤した日は却って忙しく残業になっています。」と言うと、「週3なら頑張れますね・・・」と。
 ああ、在宅勤務なんてどこの世界の言葉か、という先生に対して、申し訳ないことを言ってしまった。

 先生の正面の壁のカレンダーの下には「コロナ対策のため、中待合いに呼ぶのは1人でお願いします」と貼り紙があった。なるほど、2メートル距離を取るにはそういうことだろうが、外待合いが結構混むことになる。なかなか難しいことだ。「体調はいかがですか。」と問われ、「相変わらずで、一日おきに下痢をし、たまに口内炎が出来、気圧の変動で痛みが出たり、マスクをしていると咳き込んだり、です。痺れは変わりません。」とご報告。先生はPCに入力されていく。

 「そろそろCTを撮りましょうかね。」とのこと。「6月の新薬(エンハーツ)を使う前の確認ということですね?」と言うと「そうですね、前回1月から4か月ですから、6月の診察の前に入れましょう。」と言われ、5月末に予約を入れて頂いた。6月は1週目と4週目に治療があるので、1週目に結果を聞き、その時は結果がどうであれ今の治療を行い、変えるのであれば4週目から、との算段だという。
 というわけで次回3週間後の5月には採血後、治療を続行することになった。

 「新型コロナ・ウィルス感染の方は(この病院にも)おられるのですか。」と訊くと「いますよ。」とのこと。大学病院等も数多くある都と違って、この病院のある神奈川県方式は役割分担がしっかりしているので、それほど混乱もないという。なるほど、統計を見ると、患者数は都と比較すれば随分少ない。

 薬はビタノイリン、タリージェ、タケプロンが21日ピッタリだと痺れた手で落としてしまった時等怖いので、少し多めに頂けないか、とお願いしたところ30日分出して頂けた。相変わらず消毒で手の痛みも酷いのでヒルドイドローションも出して頂く。それでは、とご挨拶をして席を立った。

 化学療法室へ入ると、待合い椅子にお一人だけ。そしてビジネスマンが2人。受付機械が新しく入ったようだ。ラインに繋がっていて、番号札をQRコードで読み込ませると、待ち人数が分かるという説明を受ける。今日は待ち人数もいないので5分ほどで案内して頂けたが、混雑していると、あと何番目なのかがは分かると有難いことだ。本当にどんどん進化している。

 最初Cさんから内側の古いタイプのリクライニングチェアを案内されたが、腰痛のことを言って窓側に移動させて頂いた。荷物を整理し、お手洗いを済ませ、夫やお友達に報告LINE。
 Cさんが刺針に見えたのは10分ほどしてから。こんなに早く点滴が始まるなんてすごい。普段より1時間半以上早い。まだ病院に入ってから1時間ほどである。刺針は残念ながらちょっと痛くて顔をしかめてしまった。

 その後15分ほどしてCさんから薬が届く。2剤併用の治療20クール目。点滴棒には2本の250mlの薬液パックと50mlの生理食塩水の小さなパック、シリンジ。パージェタでスタート、ハーセプチンを挟み、最後に生理食塩水はいつものとおりである。点滴が始まって15分のチェックでOkさんが顔を出されたが、本読みに没頭していたのでご挨拶だけ。
 
 ふと看護師さんたちのマスクを見て気づいたこと。皆が皆、マスクの上に不織布やガーゼのようなカバーをしている。つまりマスクを何度も使い回ししているのだ、ということに驚く。そういえば、前回3週間前に「毎日マスクの配布がなくなっているんですよ。週に〇回になって・・・」と言っておられたことを思い出した。6週間前は「今のところ毎日配られているけれど・・・」、ということだった。医療現場ですらこれほどマスク不足は深刻なのだ、ということを改めて思い知らされる。私たちに回ってくるわけがないな、と思う。一般人が買い占めなんてもってのほかなのである。

 最後の生理食塩水になったところで、Kwさんが血圧測定にみえる。先日Kwさんのお気に入りのケーキ屋さんに行ってみたら三密状態だった、なんてことをお話しする。終了時の血圧は125-70、脈拍は67。抜針はKwさん。やはり衝撃があって涙がじんわり。化学療法室に滞在した時間は3時間強。

 大荷物を携えて、会計へ移動。普段より大分早いのかそれほど混雑していない。番号札を頂くのには並ばずに済んだ。窓口には前回はなかった飛沫防止のビニールカバーが下がっていた。待合い椅子の場所を確保してから処方箋を薬局に送るテーブルまで移動すると、「調整中」とあって、送付が出来なかった。ああ、せっかく早く終わっても薬局で待つのだなあ、としょんぼり。

 割と早く番号が出たので、自動支払機に行ったが、「窓口で確認してください」と出る。窓口に行くと、まだ計算が終わっていないという。番号が出たのは間違いだったようだ。「計算が終わったらこちらの窓口で番号をお呼びします」とのことだったが、今度はまた電光掲示板に番号が出てしまい、直接呼ばれない。試しに自動支払機に再トライしたら支払いが出来たので、窓口まで「支払い出来ました」と報告に行く。なんだか行ったり来たり。結局会計で30分以上かかった。お支払いはカードで10万弱。

 病院を出ると、大分お天気が悪くなっている。傘を持ってきてよかった、と思う。薬局に到着すると待っているのは3,4人。「処方箋を送る機械が調整中でした。」と言って番号札を頂く。ここでも前回はなかった飛沫防止のビニールカバーが下がっていた。今日は30分ほどで呼んで頂けた。
 「今日は30日分のものが何種類かありますが」と問われ、「ぎりぎりでちょっと心配なので追加して頂きました。」と事情をお話しする。「タリージェはどうですか。」と言われ、夕食後とても眠くなること、期待したほど画期的に効いてはいないようであること、をお話しする。
 まだ1か月ちょっとなのでだんだん効いてくれると良いのですが、と。カード支払いを済ませ、大きな袋一杯の大量の薬を受け取る。本日の病院と薬局の滞在時間は合計で5時間半弱。

 帰路、どのレストランにも「当面の間休業」の貼り紙。ファストフードもテイクアウトオンリーになっていた。駅ビルがクローズなのは昨夜のうちに確認していたので、さてどうしようか・・・、とダメ元で、今年になってオープンしたタイ料理・インド料理のレストランを覗いたらオープンの札が出ていたので、ほっとする。

 これまではランチタイム終了ギリギリの入店だったので殆ど貸し切り状態だったが、今日は少し早い時間だったし、他が閉まっていたせいか、お客さんが何組かいた。そして三密を避けて1テーブル置きに案内していたので程よく混んでいた感じ。なんとか雨が降り出さない前に帰りたかったので、ぱぱっと食べて駅に急ぐ。うまいこと快速に乗れて、帰りの乗り換えも順調だった。

 帰宅すると、ようやく居住棟の足場がすっかりなくなって片付いていた。ようやくだ。本当に長かった。在宅の夫が迎えてくれたが、やはり騒音は酷かった模様。
 疲れていたけれど、最低限の片づけものをし、溜まっていた洗濯物があったので、洗濯機を廻して夫と一緒に干してから休む。生協はやはり冷凍品・冷蔵品とも今までで一番欠品が多かったようだ。配送センターも大変な様子である。頑張ってくれているので本当に有難い。

 夕飯は夫が作ってくれるというので、母に電話をしたり、リビングでビデオを見たりしてダラダラ。
 明日は3日ぶりの出勤だ。2日空けてしまったのでメールがどれほど溜まっているかと思うと憂鬱であるが、今はじっと我慢の時である。 
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2020.4.19 掃除・洗濯・新緑浴のご褒美は

2020-04-19 20:45:32 | 日記

 日曜日。昨日のように寝坊をしては一日が短くなってしまう・・・ということで、今朝はちょっぴりの寝坊で留め、朝食の支度。お天気は良好で気持ち良い青空だ。まずは溜まった洗濯物で一杯の洗濯機を1回廻しながら朝食を摂る。洗濯が出来上がったところで、3か月振りにベランダで洗濯物を干す。目の前にはまだ足場が残っているとはいえ、やはり外干しは気持ちよい。続いてもう一度、冬物のダウンコートやセーター等、気になっていたものをお家洗い。久しぶりにベランダ一杯に洗濯物が翻った。
 ちょっと一休み方々、押川勝太郎先生のYou tubeを拝見。がん患者のコロナ対策やらなにやらのお勉強をしてから、掃除を済ませる。

 先週来、夫が「どこかでお弁当を買ってピクニックでもしようよ」と言うので、では・・・と重い腰を上げた。かくいう本人はお散歩ではなく、電動自転車である。私は歩くしかないのだけれど。まあ、荷物を全て籠に入れてもらえるので、身一つで歩けるのが有難い。
 本当に久しぶりに息子の通った保育園より先の方まで歩いた。普段は行かないスーパーに繰り出して、お寿司や色とりどりの懐石風のお弁当、夫の好みの道明寺やお茶等を買い込んで、いざピクニック兼お散歩に出発。

 スーパーはそれほどの混雑ではなかったけれど、遊歩道は普段よりもかなりの人出と言った感じ。家族連れ、カップルがほぼ皆マスクをして歩いている。日傘を差してきてよかった、というくらいの結構な陽射しである。青紅葉が美しい。京都に行かなくとも、こんなに近くで新緑浴が楽しめる。

 ちょっと上高地を思わせるような池を超えて、都立公園の広場に到着。お弁当を広げられそうなめぼしい所を探す。皆考えることは同じなようで、ピクニック中の人が結構いた。なんとか座れそうな木の下を見つけ、持ってきたレジャーシートを敷いて腰を下ろす。青空の下でのお弁当タイムなんてどのくらいぶりのことだろう。
 公園管理事務所でお手洗いを借りたら「都から緊急要請が出ておりますので、不要不急の公園利用はお控えください」というアナウンスが流れた。公園に不要不急の利用というのは似つかわしくないのではないか。皆、どうしても公園に今、来なければいけない、という用事はないと思うけれど、逆に、今行けるところは広々とした公園以外はない、ということか・・・。まあ、何にしろ、こういうアナウンスをするほど本当に非常事態なのだと思う。

 ということで、お昼を頂き終えたら、長居も出来ず。とにかく歩け、歩けで公園の遊歩道をぐるりと歩く。ジョギングする人、サイクリングする人、ウオーキングする人たちで賑わっている。
 シャクナゲ、モクレン、椿、ハナミズキや山吹の花が咲き乱れている。道端にはタンポポ。ツツジは咲き始め、八重桜やユキヤナギはもう終わりか。色々な鳥たちの囀りも心地よい。
 階段を避けてちょっとアップダウンのある坂道をもくもくと歩く。息子が自転車に乗れるようになった頃、3人でサイクリングに来て以来だ。となるともう15,6年ぶりか。その頃はもっと自然がそのまま手付かずの状態で、お手洗い等もなかったし、長く歩くにはちょっと不便だったけれど、すっかり整備されていてびっくりした。
 息子が小さかった頃、沢山お世話になった色々な小さな公園を懐かしく見ながら、最後は足の裏がジンジンするほど。夫によれば、ここまでで7キロほど歩いたという。

 沢山お散歩したご褒美があった。帰りに何の気なしに寄ったドラッグストアで、全く並ぶことなく、段ボールから出したばかりの7枚入り個包装のマスクに遭遇した。これは無欲の勝利である。夫と1袋ずつ静かに手に取り、レジに進んだ。税抜きワンコインだったから、先週レンタルビデオショップで見かけた3枚入り350円よりも随分リーズナブルだった。

 それにしても、昨日ネットでちょっと検索してみたら、今は新型コロナウィルス騒ぎが始まる前の10倍の値がついていて、それすら予約販売になっているのだなあ、と改めて知って驚いた。

 というわけで、昨日の予定通り、掃除・洗濯・お散歩に精を出した充実した日曜日になった。帰宅すると、ベランダに干した洗濯物は皆気持ちよく乾いていた。
 夕飯は手抜きでカレーとサラダで簡単に済ませた。

 明日からまた新しい1週間が始まる。4月も下旬になった。明日は私が出勤日、夫は在宅勤務である。明後日の火曜日は在宅勤務を終えたら、夕食を済ませ、空いた電車で移動してホテル最寄り駅に前泊。3週間ぶりの通院治療である。
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