昨夜は夕食を済ませ、小雨が降る中、病院最寄り駅に近いホテルに向かった。翌朝も雨の予報でちょっとブルーである。統計的に確認したわけではないが、どうも通院日の水曜日は雨が多い。
行きの電車で林真理子さんのエッセイ「美を尽くして天命を待つ」(マガジンハウス文庫)を読み始めた。元気のない時に、くすっと笑いながらさらりと読めるエッセイは疲れなくて良い。放っておくと最後まで読み進めそうなのでぐっと堪えて明日用に3章のうち1章だけにしておく。
チェックイン後はお風呂にゆっくり浸かり、早めに就寝。明け方に一度お手洗いで目覚めたが難なく寝直し、モーニングコールをセットした時刻の30分ほど前に自然に目が覚めた。まだ少し眠い。家族ラインに「おはよう」の挨拶。息子は先週までの駅務研修を終え、一昨日から1か月ほど車掌業務の座学研修に通っている。覚えることが沢山で大変そう。新聞片手に和食の朝食をたっぷり頂いて、朝の連続テレビ小説を視てからチェックアウト。
傘を差していない人が大半だが、外はぽつりぽつりと雨。あの猛暑はどこへやら、といった感じでひんやりしているが、日中は晴れ間が戻るという。
今月3回目の通院だ。到着すると2週間前と同様で受付のIDカードを通す機械3台のうち1台が点検中。長めの列が出来ていた。
採血受付へ移動。待合い椅子はそれほど混んでいないように見えたが、待ち時間は14分と出ている。対応してくれるスタッフが少ないのか、と荷物整理をしながら待っていると、かなり早めに採血室に入れた。
今日は何度もお世話になっている看護師Kさん。今日はマーカー等の測定を含むので5本。Kさんは上手だから、とリラックスして腕を出したところ、いつになく痛み、思わず肩をすくめ顔をしかめる。刺した瞬間、Kさんも血管の硬さに気づいたようで、「ごめんなさい、痛いところを刺してしまいました・・・」と仰る。刺す時に痛いと、試験管を替える時、抜く時も痛い。痛くて涙が出たのではなく、涙目になって脇のティッシュを1枚お借りしたら、「え?そんなに痛かったですか・・・」と言われ、「いえいえ、睫毛がないのでいつも涙目なのです。」とお答えする。ちょっとタイミングが悪く申し訳ないことをした。止血したまま腫瘍内科へ移動する。
まだ朝早いので待合い椅子は空いている。定位置を確保して腫瘍内科の受付に並ぶ。
本日のお伴は昨日の林真理子さんの続きから。anan連載の「美女入門」の文庫化なので、ダイエットやらお洋服やら着物やら、ウフフとニヤリの連続で、待ち時間に読むには肩もこらず丁度良い塩梅ですんなり読み終えた。
採血してから1時間ほどで「中待合いへどうぞ」に番号が出る。慌てて血圧測定すると124-76、脈拍は81。慌てた結果が脈拍数の数字である。15分ほどして先生から声がかかった。病院到着から1時間ちょっと。これはかなり順調である。
「さて、2週間経ちましたが?」と訊かれ、「前回同様、当日翌日まではなんとか大過なく過ごし、金曜日から熱っぽさ、だるさ、気持ち悪さが強くなり、土曜日はやはり寝込み、日曜日後半から大分盛り返してきて・・・でした。普通便があっという間に下痢になるパターンが数回ありました。」とご報告。先生が「大体前回とパターンは同じですね。」とPCに打ち込んでいかれる。
「ただ、手足の痺れと痛みが酷くなってきました。手の平、特に指先が痛みます。針で刺されるような、ドライアイスを触ってしまったようなビリビリジリジリした強い痛みです。PCを打つ時、気になります。足も同様に足裏、指先が常時ジンジンしています。浮腫みもあり、今朝は足湯をしてマッサージをしてきたので、今はそれほどではありませんが、常時膝から下の感覚が隔靴掻痒といった感じで違和感があります。夕方になると足首も足の甲も血管が見えなくなり、象足のようになってとてもだるいです。階段の登り降りも靴が脱げそうで怖いです。」と言うと、先生が足を触診され、「うーん。やはり出ましたか。」と仰る。1か月ほど前から気にはなっていたが、吐き気対策が優先だったので、痺れと痛みを先生に訴えるのは初めてである。
「このままの状況なら何とか我慢しますが、これ以上強くなるとちょっときついです。」と言うと、「第二段階(ハラヴェン最終段階の減量:現在1.1mg/㎡→0.7/㎡)の減量をしてやってみて、もしそれでも厳しかったら、止めますか。それとも思い切って今日から止めてしまうというのもアリです。痺れが出ているのは事実ですし、だんだんきつくなり、軽快するのに時間がかかります。」と仰る。
「今日から止めるというのはちょっと冒険ではありませんか。」と言うと、「出来るやり方を探っていきましょう。治療はどうしてやるか-それは、生活するためですから。」と仰る。なるほど、これ以上の痺れと痛みが出れば、QOLはかなり下がるだろう。
「これから先もあるわけですから、残された最後の薬というのなら、もう少し頑張って続けようと言いますが、そうではないわけだし・・・」と。
「例えば今の8割減量であと6月まで2クール(4回)続けるのと、5割減量にして8月まであと4クール(8回)続けるのとどちらが良いのでしょう。」と訊くと、「うーん、やはり今日から減量しましょう。そして、痺れと痛みの薬を出します。ビタミン剤、漢方、以前も飲んでいたものです。」ということになった。「減量してみて痛みと痺れがどうなるか、次週また相談しましょう。」とのこと。
確かに5割にして吐き気やだるさが軽快し、さらに痛みや痺れも増悪しなければ、一石二鳥である。
「採血の結果は・・・」と伺うと、「いや~びっくりです。(腫瘍マーカーが)正常範囲内になっていますからね。」と仰る。PCにグラフが出ると、まさに2月から3月、4月、今回と急降下。今月は先月の半分以下になっている。2月に比べると4分の1の値である。凄い。ハラヴェン恐るべき威力である。
正常範囲内になったのは、いつ以来だろうと帰宅してグラフをチェックしたら4年ぶり。カドサイラを投与している頃以来の快挙だった。
「それ以外は問題ありませんでしたか。」と訊くと、「ハイ、大丈夫です。」ということで具体的に数値を伺わずじまいだった。(後から化学療法室の看護師さん経由で頼んで頂き、ペーパーを出して頂いたところ、白血球4,400、好中球1,280とのこと。)
「それでは今日は減量でいきましょう。」と先生が薬剤部に変更(ハラヴェンの減量)の電話をされる。診察室での体温は6度8分。
「痛みや痺れが悪くならなければ今の治療が続けられる。ケガをしない方がいいですから。転倒でもして骨折等ということになったらそれこそ治療どころではなくなってしまう。」と。仰るとおりである。
処方して頂いたのは吐き気止めに明日、明後日と吐き気止めイメンド+ステロイドのデカドロン、就寝前に安定剤ワイパックス3日間、これを来週の分まで2セット。ロキソニン、タケプロン、ドンペリドン(ナウゼリン)を3週間分。さらに今回の痛みと痺れ対策として加工ブシ末、牛車腎気丸、ビタノイリンを、下痢対策としてミヤBM錠を3週間分処方して頂いた。来週は薬局に寄らずに済むので、有難いことであるが、またまた薬が増えてしまったのはちょっとトホホである。今回はしっかり効いてくれると良いのだけれど・・・。
ご挨拶をして診察室を後にし、化学療法室へ入る。待合い椅子にはお一人だけ。いつものように夫やお友達にLINEで報告し、呼んで頂くのを待っていると、ほどなくして「イメンド飲みましょう。」とKrさんからお薬が届く。飲み終えるとすぐ看護助手さんから窓側の奥から3番目の席に案内された。
お手洗いを済ませ、身支度を整え、読書再開。今日もフェルメール風ケア帽持参でかつらを外してリラックス。15分ほどしてKrさんが針刺し。全く痛まない。素晴らしい。びっくりして拍手である。
その後30分ほどしてOkさんから薬が届く。3剤併用の治療5クール目スタート、ハラヴェン5割減量での再開である。Okさんに痺れと痛みの状況をご報告。「状況をちゃんと(先生に)言えてよかったですね。」と言われる。
点滴棒に5本の薬液パックと生理食塩水のシリンジがぶら下がる。フルコースは点滴順にパージェタ、ハーセプチン、吐き気止めデキサート・アロキシミックス、5割減量ハラヴェン、生理食塩水である。
パージェタ、ハーセプチンはそれぞれ1時間で、吐き気止め2剤混合は15分、ハラヴェンは5分、ラストの生理食塩水は15分。ということで合計2時間半強の予定だったが、今日もあちこちで点滴終了の合図の音が鳴り響いていたし、薬剤師さんに相談したいという患者さんやら何やらで、看護師さんたちは相変わらず大忙し。今日もたっぷり3時間かかった。ツイていないことに、2つ隣の患者さんの付き添いの方がずっと一緒についていらして、大声でのお喋りが延々と続き、さらにお二人が帰った後も、お隣の方はそんな逆境の中で、大鼾で爆睡が続いた。
そんなわけで、気が散ってしまって(まだまだ修行中の身だ。)楽しみにしていた本日2冊目、奥田亜希子さんの「五つ星をつけてよ」(新潮文庫)がなかなか読み進められなかった。私もいっそのこと熟睡したかった。
帯には「レビュー★★★☆☆を見なければ、なんにも買えない。評価し、評価される人々の心を描き出す6編」とある。奥田さんの作品は初めまして、だったが、解説で綾瀬まるさんが書いているとおり「奥田さんの小説を読むと、幸せを感じる。今まで認識できなかった生活の欠片が、砕いた飴のように降り落ちて、「恋愛」だの「青春」だの大粒で目立つ飴が生じさせてきた隙間を埋めてくれる。・・・ほんの数年で生活習慣や物事の考え方が変わってしまう現代において、奥田さんのような強靭な日常性を書ける人に出会えたのは本当に幸せなことだと思う。」は言いえて妙。まだ30代半ば。凄い人である。
抜針は最近異動されてきたSさん。衝撃はあったが、痛みはそれほどでなかった。今日は採血でついていなかったが、こちらは刺抜ともラッキー。終了時の血圧は116-72、脈拍は61。安定していた。
化学療法室に滞在した時間は4時間。針を抜いて頂いてから、慌ててお手洗いへ行くというのがすっかりパターンになってしまったが、あいにく今日は先着がいて結構青くなった。
ご挨拶して部屋を後にする。会計へ移動して受付。待合い椅子は相当混んでいる。受付番号を頂いてから、薬局へ2枚に渡る処方箋を送信した。
20分ほど待ってようやく会計番号が出る。ハラヴェン減量のおかげで点滴代が43万円相当の点数。支払いは13万強。
病院を出ると、なんだかまた雨になりそうな黒い雲が出ている。ぽつりぽつりとしているが、傘を差すほどではない。病院前の桜並木の緑が一段と濃くなっている。濡れたせいか木々も植物も元気が漲っている感じ。
薬局へ到着して、「病院内から処方箋を送りました。」と申告。2,3人の方が待っている。今日は「今準備しています。」と受付番号を頂いたが、次の番号の人に抜かれた。20分ほど待って呼ばれ、合計で10袋、たっぷりと準備された。「増えていますね。」と言われ「痺れと痛みが酷くて、今日から(抗がん剤は)減量になりましたが、以前も飲んでいた漢方2種、ビタミン剤はあまり効かなかったので、今回は効いてほしいです。」と報告する。。
「大体10日分の薬が出ていますが、副作用が軽減するのにそれほど時間がかかりますか」と問われ、「来週こちらにお寄りしなくて良いように2回分出して頂いています。」と説明する。2回分と痺れ痛み対策で7,000円弱。カード払い。
本日の病院と薬局の滞在時間は今日も合計で6時間半強。気持ち悪さは殆どない。夜になったらまた味覚異常で食欲不振かもしれない。今日はギリギリでランチタイムに滑り込めたので、高層まで上がらず、1階で和風のパスタ。デザートまで堪能し本も読み切った。
JRに乗ると、もう夕方。かなり混んでおり、優先席も空いていなかった。仕方なく連結部のドアに寄り掛かってた過ごすが、とにかく足がだるくて浮腫んでくるのが分かる。常時手も足も痛む。冴えない。途中駅で空いたので道中の3分の1の区間は座ることが出来た。ヘルプマークは持っているが、なかなか出して席を譲ってもらうまでの勇気はない。
乗換駅のスーパーで階段の上り下りをする元気がなく、駅ナカのベーカリーで夫の分もサンドイッチにしてしまう。最寄り駅では迷わずタクシーに乗る。今日もフルタイムで仕事をして帰宅するのと殆ど違わない時間になった。生協から配達された食品をよいしょこらしょと運び入れ、一通り収納を済ませた。最低限の片づけものを済ませ、あまりに足がだるくて痛むので、クッションを積みあげてリビングで横になって夕刊を読み出したら夫が帰宅。
今日は眠ってしまうことはなかったが、お昼を摂り終わったのが夕方近かったので、お腹も空かず。ようやく先ほど夫とサンドイッチとインスタントのスープで夕食を済ませた。
気持ち悪さはまだそれほどではないし、味覚異常もあまり感じず、夫の半分くらいはサンドイッチが頂けた。それにしてもこうして座っているだけで、どんどん水分が足元に下がっていく感じがして、とにかく痛くて重くてだるい。入浴を先に済ませてきたら、少し楽になった。
明日は会議で東京横断出張もないし、少し余裕をもって仕事が出来そうだ。痺れ痛み対策が功を奏しますように。