インテリジェント ワークス

子供達との泣き笑い

復活

2020年05月07日 | 塾長の独り言

あれほど準備期間を費やして、散々走り回って作った自分のチーム。
それをリハビリの為に誘ってやった奴と、目の前の事しか見えない父兄に取られた事は、普通なら心が折れても仕方が無い出来事だったでしょう。
ですが、この時の僕は原口教頭から聞かされた、自分の力ではどうにもできない現実にもがいている子供がいる事が、どうしても頭から離れませんでした。

元々自分が住んでいる地域では、耳を疑うような出来事に遭遇する事が多々あります。
スーパーなどで自分の子供に暴力的な言葉を浴びせる母親。
人殺しさえしなければ、何とか生きていけるものだと、堂々と自慢する父親。
そんな環境で育った子供達が、まともに育つ筈がありません。
何とかして、この地域の子供達にまともな価値観、そして学習する事の尊さを教えたくなっていました。

そして丸西校長、原口教頭からの依頼を引き受けます。
最初は小さな事から始めますが、まずは辰沼小学校の学級崩壊を無くし、この学校に通う子供達へ社会での価値観、正しい言葉遣いを教える事を決意しました。

これには丸西校長、原口教頭が本当に喜んでくれます。
どんなにやる気があってもそこは教員、自ずと行動範囲が限られてしまっていたからです。

そうと決まれば新しい団体を作る為に、また奔走を始めます。
足立ポップスを作った時の経験が生き、今回は全ての事務作業が速やかに完了しました。
後は自分の身体を元に戻すだけです。

身体を休めて半年が過ぎた頃、足立ポップスの練習しているグラウンドの前を通る機会がありました。
そこには自分が教えていた選手達が居たのですが、順番に朝礼台の上に立たされ来年の抱負を叫ばされていました。
「来年は~ 素振りを毎日するので、よろしくぅ~」
「来年は~ 毎日何キロ以上走るので、よろしくぅ~」

なんと言う情けない宣言でしょう。
そこで聞いたのは、まるで暴走族の叫びのようにも聞こえました。
あの礼儀正しいと評判だった足立ポップスは、この僅かな期間で全員が聞くに堪えない言葉遣いになっていたのです。
このチームは間も無く終わるだろうと思った瞬間でした。

それから間も無く、娘を通じて会費が値上がりした事を聞かされます。
毎月1500円だった会費は3000円を経て5000円に値上がりしました。
この会費が本当に子供達の為だけに使われていたのかは、僕には知る由もありません。

そんな時、足立ポップスに残った女の子が、泣きながら僕の家を訪ねて来ました。
その子は当時5年生でしたが、あの初代女性主将の妹です。

この妹は野球センス抜群で、足立ポップスの低学年チームが優勝した時のMVPであったと言っても過言ではないでしょう。
そんな素晴らしい選手でしたが、5年生になる事と他のチームが女の子を募集していなかったので、仕方なく足立ポップスに残っていました。
泣きながら話す内容を聞くと、新監督に野球を続けたかったら頭を坊主にして来いと言われたそうです。

なんと言う事でしょう。
これには愕然としたばかりで無く、心から腹が立ちました。
野球をしたかったら坊主にして来い?
それを女の子に言える新監督の神経に、人としての感性を全く感じる事ができません。
そして、この新監督を後押しする父兄2名は、そこまで傍若無人の奴をおだててでも自分の子供をレギュラーにしたいのかと、怒りを通り越して呆れかえります。

この泣いている女の子は、後にトヨタ自動車ソフトボールチーム、レッドテリアーズで内野手を務め、姉と同じように日本代表にまで上り詰めた鈴木鮎美選手です。
なぜこんな豊かな才能を持つ子供を見抜けないのか、どうすれば女の子に丸坊主になったら野球をやらせてやると言えるのか、この時僕はこの新監督と父兄、更には足立ポップスを指示する指導者、父兄を決して許さない決意をします。



レッドテリアーズで三塁を守る鮎美。

捕球の仕方は足立ポップス時代から変わりません。
平成塾にも遊びに来てくれましたね^^



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