JR直営の印刷場名は国鉄時代の印刷場名を使用します。
10年以上前に御紹介した券も再度御紹介しようかと思います。
古紙蒐集雑記帖
いすみ鐵道の急行券・指定席券一葉券 ~大多喜駅発行分
いすみ鐵道の急行券の続きです。
キハ52による臨時急行列車には16席分の指定席スペースが設けられており、指定席を利用するには急行券の他に別途指定席券が必要です。
こちらが指定席を利用する場合の急行券・指定席券一葉券です。
緑色国鉄地紋のD型券で大人・小児用券となっており、発駅の大多喜と着駅の大原の印刷された常備券です。国鉄時代の昭和50年11月改定以降の三角矢印様式をモデルにしているようです。
国鉄様式ですと、題字の左側に余白があって列車名を記載できるようになっており、料金はライン上ではなく着駅の右側もしくは右下に表記されておりましたので、やはりこちらも「国鉄券に準じたオリジナル様式」といったところでしょうか?
A型急行券では小児断片には発駅が記載されていますが、指定席一葉券の場合は着駅が記載されているのが特徴です。
急行券同様関東交通印刷によって調製されたものと思われる券で、国鉄晩年の東京印刷場の券を彷彿させます。ただし、東京印刷場では「急行券・グリーン券」はD型で調製されましたが「急行券・指定席券」はA型で調製されていましたので、当時のものより堂々とした感があります。
同駅には急行券同様、小児用券の設備もあります。
小児用券は着駅が記入式となっていますが、大人・小児用券同様に緑色国鉄地紋となっています。
裏面です。
注意書きが印刷されています。普通急行券に書かれていた、JR線の急行列車には乗車できない旨の文言がありませんが、これは乗車区間が指定されているために必要ないと判断されたのかもしれません。
やはり、急行券同様、なぜか「(いすみ鉄道)」という表記になっています。
いすみ鐵道の急行券 ~大原駅発行分
いすみ鐵道の急行券は、大多喜駅と同じく急行列車の始発駅である大原駅にもあります。
大原駅で発行された急行券です。
様式的には大多喜駅のものと同一の大人・小児用券ですが、発駅および小児断片が「大原」となっていることと、発行箇所名が「〇社 大原駅」となっている点が異なります。
同駅には出札窓口はありませんので、お土産屋さん(いすみ鐵道売店)のレジで、硬券の入場券などど共に発売されています。
大多喜駅窓口でも、帰り用としてでしょうか、大原駅発の急行券を発売しています。ただし、発行箇所名は大多喜駅ではなく、〇社大原駅となっています。
やはり小児用の設備もあります。
臨時急行列車は途中、国吉(風そよぐ谷国吉)駅と上総東駅に停車します。ただし、その他の全通過駅も安全確認のために停車しますが、客扱いはしません。交換駅であっても無人である上総東駅は別として、日中有人駅である国吉駅についても乗車は原則できないようですので、急行券の発売はしていません。
同線は全線特殊自動閉塞式を採用していますが、国吉駅ではファンサービスとして臨時急行列車に限ってタブレットの交換風景を見ることができます。
国吉駅でのタブレット交換風景
国吉駅の駅長さんは、乗物精密画家の栗原大輔先生が、「ボランティア駅長」として勤務されています。
(栗原先生のカード)
先生の精密な絵を御覧になられた方も多いのではないかと思います。(栗原大輔精密画美術館HP)
話が逸れましたが、同鉄道の急行券はこのほかにもたくさんありますので、次回以降に御紹介いたしましょう。
いすみ鐵道の急行券 ~大多喜駅発行分
いすみ鐵道では、かつてJR大糸線を走っていたキハ52型気動車を譲り受けて、大多喜~大原間に臨時急行列車を運転しています。
いすみ鐵道キハ52 125
今や貴重になった旧国鉄型気動車による運行で大変興味のそそられる同社の急行列車ですが、今回の運転に際して急行料金が設定され、硬券による急行券を発売しています。
これから数回に亘り、同社の魅力的な急行券のいろいろを御紹介したいと思います。
まずは自由席扱いである急行券です。
本社のある途中駅である大多喜駅で発行された急行券です。
国鉄の昭和42年3月改定以前の発駅表示に矢印のない様式をモデルとしているようですが、当時の様式は実際には等級制があることと、「発売日共2日間有効」以下の部分の配置は昭和44年5月のモノクラス券に近いことから、「国鉄券に準じたオリジナル様式」といった感じの券です。
赤色国鉄地紋のA型で、かつて国鉄東京印刷場で調製された券に似た体裁の券です。恐らく、関東交通印刷で調製されたものと思われます。
発駅は印刷されたものとなっており、大多喜駅から乗車する旅客専用に設備されています。
この券は大人・小児用となっていますが、観光鉄道を謳った同社ですから家族連れでの利用客も多く見込まれ、また、小児用として小児断線を切断した券を発売するのもいかかがなものかと考えられたのでしょうか、同じ区間の小児用券も設備されています。
小児用券です。
大人・小児用券同様に「国鉄券に似たオリジナル様式」券で、赤色国鉄地紋のA型券となっています。
急行券の裏面です。
注意書きと、社名が書かれています。
急行券ではありますが、「普通急行列車」と「準急行列車」に乗車できる旨が書かれています。
昭和43年10月以前の準急列車が運転されていた時代、急行券は「普通急行券」と「準急行券」に別れていましたが、準急行列車が存在した末期には、概ね走行キロが100km程度の列車を準急行列車、それ以上が普通急行列車、それより速い列車が特別急行列車であり、準急行列車と普通急行列車の急行料金は同額でしたから、それで良いのでしょう。
これはキハ52の写真のヘッドマークからお分かりと思いますが、運転日によって千葉所縁の列車のヘッドマークを掲げて運転されるため、日によって急行列車だったり準急行列車だったりすることからこのように記載されているものと思われます。
(急行そと房運用時のキハ52)
その他、JRの急行列車には乗車できない旨が記されていますが、現在JR外房線には急行列車は走っていませんので、単なる遊び心か、もしくは、将来的にJRが臨時急行列車を運転させた時にトラブルが起きないように事前に危険予知をしているものと思われます。
最後に社名が記されていますが、なぜか(いすみ鉄道)となっており、なぜ(いすみ鐵道)としなかったのかが疑問です。
しかし、ある意味、観光鉄道だからこそできる遊び心がいっぱい詰められた券です。
乗車券蒐集家にとっては国鉄地紋の硬券を見せられるとハッとしますが、この券を手にされた一般の旅客は、いったいどのように感じられるのでしょうか?
営団地下鉄 東京駅発行硬券乗車券の発駅表記
平成元年6月に東京駅で発行された、金額式硬券乗車券です。
JPR緑地紋の大人・小児用のB型金額式券で、営団地下鉄関連の印刷業務を引き受けていた、山口証券印刷系の帝都交通印刷による調製と思われます。
当時、営団地下鉄(帝都高速度交通営団・現、東京メトロ)の主要駅にある駅事務室には最短区間の金額式硬券乗車券が設備されており、通常は発売されていませんでしたが、お願いすれば大抵は発売していただけました。
券売機券に準じたレイアウト様式で、比較的視認性に優れています。
裏面です。
「⑤」という循環番号と、発行箇所名が表記されています。循環番号を見る限りでは相当数が発売されているようですので、突発的な混雑の時などに臨発をしていた可能性があります。
同時に購入した小児用券です。
JPR緑地紋の小児用のB型金額式券で、大人・小児用券同様、帝都交通印刷による調製と思われます。
注目すべきは発駅表記で、大人・小児用券は「東京」となっていますが、小児用券の発駅は「地下鉄東京」となっています。2枚の乗車券を見比べると、同じ駅で発行されたものとは思えない程の違いがあります。
やはり大人・小児用券と同様に循環番号と発行箇所名が表記されていますが、大人・小児用券の発行箇所名が「東京駅」となっているのに対し、小児用券の表記は「地下鉄」を示す「〇地 東京駅」と表記方法も異なっています。
参考までに、現在の東京メトロ荻窪駅で購入した券売機券です。
荻窪駅はJR中央線との接続駅となっていますが、発駅である荻窪の表記の下に、「〇地」の表記があります。
この表記は地下鉄と他社線の接続駅で、かつ同じ駅名である場合、発行駅が営団地下鉄の窓口であることをはっきりさせるために表記されているものと思われ、このルールは硬券が無くなった後の東京メトロに継承され、現在に至っているようです。
箱根登山鉄道 特別補充券
箱根登山鉄道の特別補充券です。
JPR緑地紋の券で、特段オリジナル性のない一般的な様式です。
同社には特別補充券の他に車内補充券の設備もありますが、車内補充券のコレクション目的の発券についてもNGなことが殆どなくらい、補充券の類についての発券基準が大変厳しいようです。
そのためか、車内補充券についてはちらほら見かけますが、特別補充券については殆ど見かけません。現在は有人駅には出札端末機が設置されており、自社線内は勿論のこと、連絡運輸区間についても網羅されているようで、あまり出番が無いようです。册番も0001というくらいですので、使用実績についてもさほど多くはなさそうです。
最近確認いたしておりませんが、現在も特別補充券の設備があるのかは不明です。
摺沢駅発行 一ノ関→上野 繁忙期用新幹線指定席特急券
昭和61年4月に摺沢駅で発行された、一ノ関→上野間の繁忙期用新幹線指定席特急券です。
東京印刷場調製のD型券で、繁忙期用のため、橙色国鉄地紋の券となります。
発駅の一ノ関駅は東北新幹線開業時からありますが、着駅である上野駅は昭和60年3月に延伸開業された部分であるため、この券は上野延伸時に設備されたものと思われます。
図示いたしませんが、通常期用同様に指定記入欄と発行駅である摺沢駅発行の表記とともに裏面にあり、券番は1000番代となっております。
ということは、上野延伸後約1年の間、1日あたり2~3枚発売されている計算になります。
摺沢駅は大船渡線の駅であまり規模の大きな駅ではありませんが、政治的な経緯で開設された駅であるからなのでしょうか、比較的需要があるように思われます。
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