京のおさんぽ

京の宿、石長松菊園・お宿いしちょうに働く個性豊かなスタッフが、四季おりおりに京の街を歩いて綴る徒然草。

牛の歩みはのろい

2011-06-04 | インポート

 丑の刻参り、というのがある。

 いわゆる呪いのわら人形というやつだ。

 丑の刻(午前2時前後)、神社の木にわら人形を5寸釘で打ちつける。

 と、まあ、なかなか壮絶な儀式である。

 この丑の刻参りの発祥の地が、京都にある。

 貴船神社が、それである。

 いいや、断定しては角が立つか。

 発祥の地といわれている、くらいがちょうど良いかもしれぬ。

 

 貴船神社は京都の北の奥にある。

 御所から見て真北で、上賀茂神社よりもっと北である。

 貴船川のほとりにぽつんと建つ、あまり大きくない神社。

 しかし歴史は深く、平安遷都よりはるか前の創建という。

 こうした呪詛の儀式と結びついたのも、霊験あらたかであるが故かもしれない。

 

 貴船の名物は、丑の刻参りばかりではない。

 むしろ今や丑の刻参りなどあるまい。

 これからの季節の貴船といえば、なんといっても川床。

 一般的には鴨川の床のほうが有名だが、貴船の川床のほうが風情は上。

 水しぶきに手が届かんばかりの位置に、床が設置されている。

 山の谷間、緑が滴る中で、これはいかにも涼しげである。

 貴船川は、やがて高野川を経て、鴨川となっていくが、上流だから水はきれいだ。

 蛍が住むほどである。

 

 貴船と蛍といえば、和泉式部が思い浮かぶ。

 

      もの思へば沢の蛍もわが身よりあくがれいづる魂かとぞみる

 

 これは和泉式部が貴船に参詣したときに詠んだものといわれる。

 川辺を飛び交う蛍が、恋しさのあまり私の体からさまよい出た魂のようだ。

 訳せばそんな感じだろうか。

 貴船神社は本来水の神様であるが、縁結びの神様としても知られている。

 

 さて、貴船川の東側に聳え立つのは、鞍馬山である。

 表参道は、反対側だが、貴船側からも、鞍馬山に登れる。

 鞍馬山にある鞍馬寺では、6月20日に竹伐り会というものが催される。

 なかなか珍しい儀式なので、ぜひごらんあれ。

”あいらんど”