cnet 3/29(月) 15:53
東日本旅客鉄道は3月28日、JR新大久保駅ビル3階~4階に「シェアダイニング」「コワーキングスペース」「ファクトリーキッチン」を備えたフードラボ「Kimchi, Durian, Cardamom,,,(略称K,D,C,,,)」を開業した。同社は山手線を起点にそれぞれの駅周辺の街の個性を引き出し、街や人が有機的につながる都市生活空間「東京感動線」を創り上げる取り組みを進めており、今回のフードラボもその一環となる。
「東京感動線」に取り組む東日本旅客鉄道 山手線プロジェクト グループリーダーの古田恵美氏は、新大久保駅一帯は非常に国際色豊かで食文化も豊かなため、新大久保駅上にフードラボを立ち上げたと語った。
「食を軸にいろいろな人がつながり、そこから新しい食べ方や新しい食材との出会い、食体験そのものが生まれればと考えてK,D,C,,,を作り上げてきた。3階は3つのキッチンをそろえ、一般のお客様と生産者、料理人の方、新しい食のプロジェクトを始める方が出会える場にしていきたいと考えている。4階はコワーキングスペースになっており、食を軸に働く人や、食に興味を持った人が気軽に働ける場を提供しつつ、小ロットの製造・生産ができる『ファクトリーキッチン』を設けた」(古田氏)
シェアダイニングは実験的な料理と一般の生活者が出会う場
フードラボの3階は、3つの厨房と1つの共同厨房、出店者同士が共有で使用できる客席などを備えるシェアダイニングになっており、さまざまな出店者が実験的な料理を提供したり、イベントを行ったりできるようになっている。
主に3階の運営を行うオレンジページ 代表取締役社長の一木典子氏は、シェアダイニングの役割は主に4つあると語る。
「1つめは食にかかわる起業や挑戦の敷居を徹底的に下げていくこと。食の起業や食にかかわる学びの場がここで得られる。2つめは資金。オイシックス・ラ・大地が運営する『Future Food Fund』やJR東日本スタートアップのほか、Campfireからも連携の申し出をいただいており、さまざまな資金調達へのアクセスがある。3つめがマーケットアクセス。たとえば4階でできた新しい商品を新大久保駅1階のNewdaysで売ってみるとか、駅ナカの催事場へ紹介するといったこともできるかもしれない。4つめが実験の場。こちらのキッチンは食器もそろっており、身一つで挑戦して、短期間で使える。ここは生活者が日常的な動線で来られる場所なので、ふらっと来てその中で新しい実験に出会うというような生活者との接点を作っていきたい」(一木氏)
一木社長は社会的な問題に対して意識の高い人だけでなく、普通の生活者の実感に沿ったコミュニケーションができることが重要だと続ける。
「この場では、新しい実験をしたい方々が生活者に密着した中でテストマーケティングができることで、大きな挑戦、変革のステップにしていただきたい。3階は3つの厨房があるイベントスペースになっており、大企業の食のイノベーションが3つ競演する、同じ『海洋資源のサステナビリティ』でも違うスタイルの3つが競演する、日本中の郷土食の新しい解釈が3つそろって競演するなど、生活者が『ちょっと行ってみようか』と思える体験デザインを私たちがすることで、新しい食文化の創造に貢献できると思っている」(一木氏)
シェアダイニングでは、オープニング企画として5月まで多様な趣向で食を楽しんでもらえるポップアップショップを開催する予定だ。
「さまざまな食を楽しんでもらいたいという思いから、エシカルやSDGs、フードテック、地域性といった切り口でセレクトしたポップアップショップを展開する。5月中旬からは、毎週食の本質や食の未来をテーマに、食にかかわる好奇心を満たすプログラムを開催する予定」(JR東日本 東京支社 事業部 企画・地域共創課 山手線プロジェクト 齊藤千明氏)
食のプロフェッショナルたちが出会うコワーキングスペース
4階はシェフや生産者、ライター、研究機関、ベンチャー企業、調理機器・食品メーカーなど、食に携わる企業や個人が利用できるコワーキングスペースになっており、人材育成や起業支援などさまざまなプログラムを提供していく。
「“食にまつわるさまざまな食のプレーヤーが集い、交流を生む場所”をコンセプトに、食にまつわるさまざまな方々が集まる場所。奥に見えるコミュニティキッチンでは、アイデアやレシピをすぐに実験できるような環境を整えている」(斎藤氏)
4階のコワーキングスペースの運営には、札幌や京都で共創を生み出すコミュニティを運営し、シンガポールでは東日本旅客鉄道とともにコワーキングスペースを運営するCO&COが手がける。
CO&CO 事業統括部長の伊崎陽介氏は、「世界50カ国以上から多国籍、多職種、多人種の方々が集う空間作り、コミュニティ作りを行っており、K,D,C,,,でも食をテーマとしたコミュニティ作りに参画する」と語った。
「新大久保は日本でも有数の多国籍タウンで、世界各国の方々が集う空間になっている。新しいものは“カオス”から生まれると思っており、私たちのコミュニティ作りでも大切にしている点。『食』も、エリアや個人でこだわりや個性があふれているカオスなものと思っており、K,D,C,,,でも新しいものが生み出される、カオスな場作りをしたい」(伊崎氏)
特徴的なのが、惣菜製造業、菓子製造業、飲食店営業の許可を得た「ファクトリーキッチン」だ。
「オイシックス・ラ・大地の『Future Food Fund』にファクトリーキッチンに協賛いただき、新商品の開発をスタートアップと大手企業などが連携してやっていく、あるいはスタートアップが料理人とやっていくというような形をイメージしている。それとはまた別に、フードプレナーと言われる食のプロフェッショナルや、プロフェッショナルを目指す“食のチャレンジャー”が集い、その方々が相互に情報交換しながら、そこで新しいものを生み出していく。そして情報が集積、あるいは情報を発信する基地というものをK,D,C,,,は目指したい」(伊崎氏)
さまざまなコラボで、新たな食文化を
K,D,C,,,の内覧会の後には、試食会も行われた。新大久保で長年アイヌ料理店を営む「ハルコロ」の監修の下で、アイヌ料理に新しい解釈を加えた「MODERN AINU」料理を昆虫食で有名な馬喰町「アントシカダ」シェフの白鳥翔大氏、元「レフェルヴェソンス」パティシエの佐川優氏、野草研究家でフードプロデューサーの古谷知華氏による料理やスイーツ、カクテルなどが提供された。
東日本旅客鉄道 東京支社 事業部 企画・地域共創課 山手線プロジェクトの服部暁文氏は試食会でモダンアイヌ料理を提供した狙いについて、「新大久保の国際性多様性豊かな食をどういうふうに表現できるか考えてこの形になった」と語った。
「一般の方は新大久保というと韓国のイメージが強いと思うが、実は非常に多様な国籍や文化を持つ方がいる。アイヌ料理の『ハルコロ』さんにお店に出会い、長年アイヌの文化を表現されていることに感銘した。ハルコロさんにそのまま出ていただくのでも良かったが、ここがフードラボということで、新進気鋭の白鳥さんや佐川さん、古矢さんにアイヌ料理というものを再開発していただき、新しい食体験や、今の、未来のアイヌ料理はどういう風になるだろうというのを体感していただきたいと思い、『モダンアイヌ』をテーマにした」(服部氏)
今回のフード・ドリンクを提供した方々はハルコロをたずねてアイヌ文化やアイヌ料理の本質についてのレクチャーを受け、それをヒントに素材や技術などを組み合わせて料理を仕上げたという。
「これは一つの例で、今後こうした地元の方、地域の方ともコラボしていき、新しい食文化や食体験を生み出すだけでなく、生活者の方々、飲食関係の方々にも実感していただき、新たな食文化を作っていきたい」(服部氏)
https://news.yahoo.co.jp/articles/b5f638c6a823323c4ca4e445d9a98b994f449a6f