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「人間と認められず」研究材料に 樺太アイヌの遺骨、豪から初返還へ

2023-03-04 | アイヌ民族関連
毎日新聞 2023/3/4 05:00(最終更新 3/4 05:00) 2070文字
 「ようやく初めの一歩。でも、私たちは少数者の中の少数者。その存在は、まだまだ認められていない」
 樺太(サハリン、現ロシア領)に住んでいたアイヌ(エンチウ)の子孫らで作る「エンチウ遺族会」会長の田澤守さん(67)=札幌市=は、民族の苦難の歴史に思いをはせた。
 オーストラリアの博物館が保管しているアイヌ民族の遺骨4体を巡り、日本側に返還することで両政府が合意したことが、政府関係者らへの取材で判明した。うち1体は樺太で収集された記録があり、同遺族会が返還を求めてきた。政府とアイヌ団体の代表者らが5月にも現地を訪れ、返還を受ける見通し。樺太アイヌの遺骨は日本の大学も研究材料として多数保管しており、国内でも返還が進む可能性がある。
 樺太アイヌの遺骨が地域に返還されるのは初めて。政府は、同遺族会が遺骨返還の対象になる団体と認定する方針だ。
1980年代から問題化、国内大学も多数収集
 アイヌの遺骨は研究目的で収集されたが墓地から無断で持ち去られた例もあり、1980年代から問題化している。反発したアイヌ団体などによる返還請求訴訟と和解を経て、各大学にあるうちの一部が2016年以降、地域に返還された。海外に渡った遺骨も多く、17年には盗掘と分かった1体がドイツから返された。
 文部科学省の調査(19年4月発表)では、国内の12大学が、北海道などで発掘された1574体と判別不能の346箱分のアイヌ遺骨を保管していた。このうち1323体と287箱は、20年10月までに北海道白老町の国立施設「民族共生象徴空間(ウポポイ)」の慰霊施設に移された。残りの多くを占めるのが樺太アイヌの遺骨だ。
 豪では、キャンベラの国立博物館が1体、メルボルンの公立博物館が3体を保管。これらは、アイヌ研究で知られる、東京帝国大名誉教授で医学博士の小金井良精(よしきよ)氏(1859~1944年)らが11~36年、豪の先住民族アボリジニの骨と交換するなどして現地の学者に提供したものだ。北海道大アイヌ・先住民研究センターの加藤博文教授らが遺骨の添付文書や小金井氏の日記を調査し、判明した。
 4体のうち3体は、北海道アイヌ協会(札幌市)が代表して受け取り、ウポポイの慰霊施設への移管を調整する。南樺太で収集された記録がある1体はエンチウ遺族会が樺太での埋葬を求めているが、現在はロシア領のため、公的施設での一時保管を検討する。
 内閣官房アイヌ総合政策室は「関係各所と調整を進めており、今は話せない」としている。
少数民族・エンチウ、受難の歴史
 樺太の少数先住民族であるエンチウは、北海道や千島列島などのアイヌとは異なる独自の言語や文化を持っていたが、日露のはざまで戦争に翻弄(ほんろう)された。言葉や土地を奪われ、先祖の遺骨までも、研究材料として収集や取引の対象にされてきた。
 樺太は多民族の雑居地だったが、1875(明治8)年の樺太千島交換条約で全島がロシア領に。エンチウは一旦は道北、続いて対雁(ついしかり)(現・北海道江別市)に移住させられ、その後、疫病で約半数が死亡したとされる。日露戦争後は南樺太が日本領となり、一部は故郷に戻ったが、太平洋戦争末期の旧ソ連軍の侵攻で再び移住を余儀なくされた。
 アイヌ民族の骨は帝国大学の学者によって、日本人の起源を探る研究材料として収集された。当時の優生思想を背景に、日本人の「優秀さ」を証明して植民地支配を正当化する目的もあった。エンチウの骨も対象とされ、1920年代には京都帝大の人類学者・清野謙次氏(1885~1955年)が現地の墓を暴くなどして遺骨を大量に収集。東京帝大や北海道帝大も遺骨を大量に集めた。総数は公表されていないが、京大や北大など全国の大学に少なくとも計150体があるとみられる。

樺太アイヌ(エンチウ)の苦難の歴史を語るエンチウ遺族会会長の田澤守さん。30年前に樺太に墓参した際の毎日新聞記事を大切に残していた=札幌市内で2022年9月28日午後8時4分、千葉紀和撮影
 田澤さんら子孫は遺骨返還を求め、2018年にエンチウ遺族会を結成。エンチウは樺太先住民の言葉で、アイヌと同様に「人間」を意味する。だが、願いは簡単に認められなかった。戸籍での証明を求められたが、度重なる移住や終戦時の混乱で政府が保管する樺太の戸籍謄本は6村分のみ。大半の人は先祖の記録がない。
 田澤さんの祖母らも終戦時に命からがら逃げ延び、道北の集落で暮らした。生活は貧しかった。1992年、93歳だった祖母を背負って樺太に墓参をした。「みんな故郷に帰りたがっていた」。墓参の様子を報じた当時の毎日新聞の記事を、今も大事に持っている。
 アイヌを先住民族と初めて認めたアイヌ施策推進法が2019年に成立したが、自然資源を利用する権利などの先住権は盛り込まれなかった。アイヌ全体に関する法律だが、田澤さんには「議論の過程で、少数者の中の少数者であるエンチウは蚊帳の外だった」との思いが強い。
 遺族会が遺骨の返還団体となることで今後、国内にある遺骨の返還も進む可能性が出てきたが、まだ道半ばだと感じている。「国や大学が誠意を持って遺骨を元の土に返してほしい。それまで我々エンチウは人間として認められないままだ」【千葉紀和】
https://mainichi.jp/articles/20230303/k00/00m/040/446000c

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函館空港で初のコスプレイベント 地元のイベント主催者との協働で実現

2023-03-04 | アイヌ民族関連
函館経済新聞2023.03.04

アイヌ工芸資料を展示している空港ギャラリー
 函館空港(函館市高松町)初のコスプレイベント「マスカレードin函館空港」が3月12日、開催される。
 道南各地でコスプレイベント「マスカレード」を主催する徳原弥彦(活動名=穂高)さんが昨年、中部国際空港セントレア(愛知県常滑市)でコスプレイベントが開催されたのをツイッターで知ったのがきっかけ。「空港でもできるのかと新鮮な驚きがあり、その後改めて函館空港を訪ねてみると、ロケーションが良く、さまざまな撮影ができると感じた」と振り返る。
 知人や市議などの後押しもあり、空港を運営する北海道エアポートに開催を打診したところ前向きな返事が得られたことから、両者で協議を行い実現にこぎ着けた。同社営業部の石亀綾菜さんは「地域とのつながりを深めるためにさまざまな取り組みにチャレンジしている函館空港として、若い人が多く参加しているコスプレイベントはとても良い機会。ぜひ協力したいと考えた」と話す。
 開催発表後、コスプレイヤーによる参加表明が続々とSNSで発信され、手応えを感じているという徳原さん。「空港内で食事もできるので、参加者には遊園地や観光施設に滞在するような気持ちで一日楽しんでもらえたら」と話す。「2回、3回と続き、いずれは空港でコスプレするために遠方から函館を訪ねて宿泊し、函館観光も楽しむような流れが作れたら」とも。
 開催時間は10時~16時。参加費は1,000円。函館空港サイトで禁止事項などが確認できる。
https://hakodate.keizai.biz/headline/550/

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今、北の大地に“アツい”視線! なぜあの企業は「北海道型ワーケーション」を選んだのか?

2023-03-04 | アイヌ民族関連
ITmedia ビジネスオンライン2023年03月03日 10時00分 公開
 コロナ禍以降に普及した新しい働き方である、リモートワークとワーケーション。前者はすでに多くの企業に定着している。しかし後者はどうか。「仕事なのか余暇なのか分からない」といった判断の難しさがネックになり、導入に二の足を踏む企業も多い。
 そのような中、企業が抱える懸念を「オーダーメイド」という独自のスタイルを打ち出すことで払しょくし、新たなワーケーション体験を提供しているのが北海道だ。“リピート企業”も抱えているという「北海道型ワーケーション」は何が違うのか? 北海道庁と実施企業、受け入れ先の自治体を取材した。
プランを「オーダーメイド」? 北海道型ワーケーションとは
 北海道というと厳しい寒さを連想するが、春は花粉が少なく、梅雨もなく、夏は冷涼、残暑も短い。秋~冬にかけては、建物の中はどの地域よりも暖かく保たれており、実は「快適に過ごせる期間は長い」。そう話すのは、道庁の林正紀氏(総合政策部 地域創生局 地域政策課 移住交流係 主査)だ。しかし、いちばんの魅力は地域の多様性にあるとし、林氏は続ける。 
 「北海道の市町村数は全国一多い、179。北海道型ワーケーションは、多数の個性ある市町村が持つ価値を生かすことで、企業のニーズに適したプランを個社ごとにご提案できる点が最大の特徴だ」(林氏)
 市町村が持つ価値とは、自然環境によるリフレッシュ効果や、アクティビティ体験だけを指すのではない。林氏は「地域の課題、環境を資源に」と表現し、SDGs教育の一環で環境教育に取り組む例や、北海道ならではの環境を通してチームビルディングに生かす例も多いと話す。これは、道庁が滞在先となる自治体と連携しながら企業にヒアリングをすることでニーズを把握し、プランをコーディネートする北海道型ワーケーションだからこそ実現可能な体験だ。
 では実際に、事例企業はどのような目的を持って、どのような北海道型ワーケーションを実施したのか。富士通×釧路市、リコー×富良野市の例を聞いた。
<富士通×釧路市>富士通が目指す“三方よし”のワーケーション
 富士通では、全国9つ※の自治体と「ワーケーションパートナーシップ協定」を締結することで全社的にワーケーション推進に取り組んでおり、全国で初めて協定を締結したのが北海道だ。社員個人が余暇を兼ねて実施するワーケーションのほか、業務の一環として社員を派遣する「モニターツアー」と呼ばれるワーケーションを用意している。モニターツアーの滞在先は、パートナーシップ協定を締結している自治体から選択する形だ。
※23年2月上旬現在
 富士通の大野遥子氏は、同社におけるワーケーションの狙いに「ウェルビーイング」「キャリア形成」「地域課題解決」「チームビルディング」の4つを挙げる。こういった効果がワーケーションで本当に得られるのか、それを検証するのがモニターツアーであり、その第1回目の開催の地に選ばれたのが北海道釧路市だった。
 選定理由は、空港から各施設までの二次交通の利便性が高いこと。加えて、「ウェルビーイング」にひも付くリフレッシュ効果や生産性向上、そして「キャリア形成」にひも付く新たな知見や学びの機会の提供といった内容全てを実現できる環境に魅力を感じたためだという。実際の行程にも、リモートワーク、阿寒湖周辺で森林保全事業を行う団体との交流、アイヌ民族文化体験といった地域ならではのアクティビティ体験など、多様なメニューが盛り込まれた。
 地域住民との交流会では、NPO法人阿寒観光協会まちづくり推進機構や道庁担当者との意見交換を行い、今後どのように地域貢献できる可能性があるのか議論を交わしたり、個々で考えたりする機会を得た。実際にその後、他県で実施したワーケーションの地域交流をきっかけに「社員個人が副業として自治体とつながりを持った例もある」(大野氏)
 また大野氏は、コロナ禍で社内のリアルコミュニケーションが減少したことに言及。「北海道でのワーケーションを短期集中型のチームビルディングに生かせたことは、参加社員の心理的安全性を向上させる意味でも非常に効果的だった」と振り返った。
 「アクティビティやリモートワークなど皆で行動を共にすることで、オンライン上では気付かなかったお互いの性格が見えてくる。参加社員からは『チームとして強くなった』『絆が深まった』という意見をもらっており、非常に貴重な体験になったようだ。
 また、ワーケーションは『旅行をしながら仕事をする』ものではなく『働く場所の選択肢の一つ』であるという認識が強まった参加社員も多い。これは、多様な体験ができる北海道型ワーケーションだからこそ得られた効果であり、ワーケーションの良さを社内に広める大きな一歩になったのではないか」(大野氏)
 その他、富士通はワーケーションパートナーシップ協定を締結している自治体同士をつなぐ取り組みにも注力している。22年の年末には、8つの自治体をリアル会場に招きワークショップを開催。それぞれの取り組みを紹介し合いながら、ワーケーションを盛り上げていくにはどうすればいいのか意見交換を行った。
 大野氏は「ワーケーションは社員、企業、そして受け入れ先の自治体、全てに“三方よし”でなければ広く浸透しないだろう」と話し、そのためにも企業と自治体、そして自治体同士が連携し、地域横断でノウハウを共有、ワーケーションを推進していくことが重要であると説く。富士通がその“ハブ”として機能するよう、今後も継続的にワーケーションを実施する考えだ。
異なる2つのワーケーションが体験できる釧路市 その魅力は?
 釧路市役所 及川昌洋氏(総合政策部 都市経営課専門員)は、「釧路市では、釧路港が近接する市街地での都市型と、先住民族のアイヌ民族が自然と共生する阿寒湖温泉地域でのリゾート型、2つのワーケーション体験をご提供できる」と説明。富士通から相談を受けた際も、滞在時のイメージ、目的等を事前にヒアリングした上で、地域の強みを紹介しながら質の高い滞在環境の用意に努めたという。
 「釧路市では、首都圏等から人、企業を新たに呼び込むために、総合人材サービスを提供するパーソルワークスデザインをパートナー企業として位置付けて、協業しながらワーケーションに取り組んでいる。今期は、新たに市街地の商業施設内に整備したコワーキングスペース『Sunset Office』を活用して、首都圏等から12社19人が参加したワーケーションを企画するなど、新しい試みにも挑戦した。今後はこれらの取り組みからノウハウを蓄積しつつ、道庁にも横展開しながら、北海道全体でワーケーションを盛り上げていきたい」(及川氏)
 また釧路市は、国や北海道と連携しながらアドベンチャートラベル※を積極的に推進している。及川氏は「国立公園をはじめとする豊かな自然環境を生かしたアクティビティや、アイヌ文化等も体験可能な釧路市のアドベンチャートラベルはワーケーションとも親和性が高い」と話し、将来的には社員とその家族も楽しめるワーケーションを目指していくという。
※「アクティビティ」「自然」「異文化体験」という3つの要素のうち、2つ以上を組み合わせた旅行形態のこと
<リコー×富良野市>入社2年目社員をワーケーションへ その狙いは?
 リコーは21~22年度にかけて、合計6回のワーケーションを富良野市で実施しているリピート企業。実施形態は富士通と同様、企業が費用を負担する業務型ワーケーションで、北海道だけではなく和歌山県など他県でのワーケーション実績も豊富に持つ。しかしなぜ、富良野市に繰り返し足を運ぶのか。
 きっかけは、「当社代表の山下良則(取締役社長執行役員CEO)が出張で富良野市を訪れたことだった」と、リコーの鶴井直之氏は振り返る。
 「経済同友会で地域共創委員会の委員長も務める山下自身が、富良野自然塾が提供する環境教育プログラムの素晴らしさなどを体験し、富良野市役所や地元事業者とのつながりを得た。ちょうど同時期に、観光庁が『新たな旅のスタイル促進事業』に参画する企業・自治体の公募を行っており、富良野市とともに応募したところモデル事業に採択された。ご縁とタイミングに恵まれ、今日まで良い関係が続いている」(鶴井氏)
 ワーケーション実施にあたり、山下社長が出したオーダーは1つだけ、「参加者を入社2年目社員にすること」だったという。これについて鶴井氏は「コロナ禍に入社した新入社員は、リアルで集まる機会を得られないまま導入研修を終え、各部署に配属されている。同期の仲間意識を醸成する場がないという新入社員の現状を経営陣は大きな課題と認識している」と説明。1年目ではなく2年目なのは、ある程度、業務を経験した2年目社員の方が適切であるという判断からだ。
 なお、山下社長が体験したという富良野自然塾とは、ドラマ『北の国から』シリーズの原作・脚本を手掛けた作家、倉本聰氏が主宰する、自然返還事業や環境教育事業を主としたNPO法人。リコーの富良野市におけるワーケーションは、全て富良野自然塾の協力を得てプログラムが組まれている。
 鶴井氏は富良野自然塾の環境教育プログラムについて、「富良野市の森に入り環境について学ぶ、農作業の手伝いをしながら食料廃棄の課題を知るといったことを行う。リコーでは社員がSDGsを学び、その実践内容を社内外に広める活動を行っているが、座学だけでは自分ごととして捉えるのは難しい」と話し、五感を使って“自然を体感する”ことが重視されている同プログラムを称賛する。実際に、ワーケーション後「お客さま先でSDGsの取り組みを説明する際、うわべだけの説明しかできていなかったことに気が付いた」と話す社員もいたという。
 またこの他にも、市内の事業者と地域課題解決を検討するワークショップを実施したり、高校のキャリア教育授業でプレゼンを行ったりと、同社が体験したワーケーションのプログラムは実に多様であり、実践を伴うSDGs教育、そして地域交流の貴重な機会になっている。
名作ドラマが生んだ富良野の価値 実践的な学びの機会とは
 富良野市といえば、もともと全国的に有名な観光地。しかし、富良野市役所の松野健吾氏(総務部 企画振興課 企画振興係 主査)は「富良野市でワーケーション誘致をする上で、バケーション要素は押し出していない」と話す。
 「リコーのワーケーションには、『ふらの演劇工房』が指導するコミュニケーションワークショップを初日に必ず入れている。ふらの演劇工房もまた、倉本聰先生が興した演劇私塾から派生したNPO法人であり、演劇手法を使ったコミュニケーション力向上プログラムが多くの企業に高い評価を受けている。富良野自然塾、ふらの演劇工房と、富良野市は独自のエデュケーション要素を持ったプラン作成に優れており、実践的な学びを提供できる」(松野氏)
 コミュニケーションワークショップは、演劇を通して「コミュニケーションの基本」を体験するというもの。“はじめまして”の者同士であるリコー2年目社員も、初日にコミュニケーションワークショップを体験することで「人の話を聞く姿勢や、正しい伝え方を演劇のプロ指導のもとゲームを通して学ぶことができる」(松野氏)ため、距離感が一気に縮まるという。
 また観光地という意味では、「宿泊先が豊富にあることもメリットだ」と松野氏。民泊からドミトリー、ホテル、コンドミニアム、貸別荘まで滞在者が求めるニーズに応じて計画を立てられる柔軟さも、富良野市でワーケーションを実施する魅力だ。松野氏は「地域が持つ強みを生かし、『企業研修の聖地』を目指す」と展望を語り、リコーをモデルケースとした、北海道型ならぬ富良野型ワーケーションを広めていきたいと笑顔を見せた。
「休暇型」ではないワーケーションの効果を、北海道で
 ワーケーションは、まだ休暇型のイメージが強い働き方だ。しかし実際には、社員に学びの機会を提供する、自社ビジネスに寄与する機会に生かすなど、現地でしかできない体験を通し生まれる価値は非常に大きい。
 ワーケーションで得られる成果は、数日間の非日常体験を通し個々の中に「新たな発見」を積み重ねられることであり、それが議論の種になったり、コミュニケーションの潤滑油になったりすることで、社員や組織を活性化させる。これは、在宅やオフィスで働いているだけでは得られない効果だ。そして北海道ほど、広大で多彩な表情を持ち「新たな発見」を期待させる地域はない。今回紹介した釧路市、富良野市だけではなく、多様な魅力を有する市町村は数多く、そうした発見の芽がまだまだ多く眠っている。
 ぜひ一度、多角的な選択肢がある北海道型ワーケーションを体験し、新たな北海道の魅力を探してみてはいかがだろうか。
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2302/27/news005.html

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【探訪】白い劇的な世界に生きる:北海道立北方民族博物館(網走)

2023-03-04 | 先住民族関連
美術展ナビ2023.03.03

オホーツク海沿岸の街、網走には2月になるとロシアのアムール川から流氷が漂着する。マイナス20℃になるこの季節、流氷と共に見たいのが、北海道立北方民族博物館だ。
北方地域とは、東はグリーンランドから西はスカンディナビアまでを指し、アメリカ、カナダ、ロシア、北欧諸国などから集められた約8500点の収蔵品(常設展示は約900点)を通して北方の諸民族の文化と北海道のオホーツク文化を紹介する。
一年の大半を雪と氷に閉ざされ、気温が氷点下数十度にもなる北方地域で、人間はどのような暮らしをしてきたのか。ぜひ、一面に広がる真っ白な大雪原を体感しつつ訪れたい。
1991年、北方地域を専門とする日本で唯一の民族博物館として開館した北海道立北方民族博物館。
網走市内の南西、標高207メートルの天都山の中腹に位置する。博物館の建物全体は羽を広げた水鳥、エントランスホールは北方地域に広く見られる円錐形のテントが、それぞれイメージされている。
見応え十分の常設展は、民族ごとの展示ではなく、さまざまな北方民族の衣食住や精神文化、生業などのテーマごとに分けて展示されている。
動植物を素材とする北方民族ファッション
注目すべきは、極寒の中での北方民族ファッション。素材は、主に動植物。左側は、北西海岸インディアン(アメリカ)の中でも北部のグループ(トリンギット)に特徴的なマント型の衣類。儀礼の際に身分の高い人が纏ったもので、制作にはベテランの女性でも1年はかかるという。たて糸はヒノキ科の樹木シダーの樹皮を芯にシロイワヤギの毛のみ、植物や鉱物など天然の染料で色をつけている。右側は、北アメリカの野生のトナカイの皮で、内側に毛を向けて作られた衣装。大きなフードは子供を背負ったままかぶることができる。
シベリア東端から西アラスカまでのベーリング海地域で多く使われたパーカは、防水性の高いアザラシやセイウチなどの海獣の腸や内臓膜で出来ている。縫い目から水が染み込まないように、つなぎ方や縫い方には高度な技術が必要だという。
ビーズのケープは18世紀半ば以降に北欧(ノルウェー、デンマーク)からの宣教師や交易者との交流が深まる中で生みだされた。伝統では、ブーツの上部のように小さく切った皮を縫い付けてモザイク状の紋様を作る技法があり、のちにビーズや刺繍に発展したという。パンツとブーツはアザラシ皮製。
北方民族の信仰
北方の人々は漁労、狩猟採集、トナカイ飼育などから生きていくために必要なものを得ていた。厳しい自然環境や動植物との共生の中で、彼らは動植物や無生物に至るまで全てが霊魂を持つという「アニミズム」の信仰を持っていた。
赤、白、黒の鮮やかな仮面(写真中央)は、北西海岸インディアンのクワキウトルの仮面。神話の中で世界の創世に関わるワタリガラスをモチーフにしている。「冬の儀式」の際に踊り手がかぶる。
とぼけた表情が可愛い木偶
もくぐう
は主に樺太東岸に居住しているウイルタの病気治療のお守り。双子の木偶は双子が亡くなった時に作り祀られた。同性の双子が生まれると狩猟や漁労がうまくいくと信じられている。
北方民族のくらし
北方に暮らす人々は、長い冬に備えて食糧を蓄えていた。特に夏の間に、主に女性が低木や草木になる小さな果実ベリーを集める。スプーンは、ハンノキやカツラの木製やトナカイの角やアザラシの皮で作られている。
暗い冬が終わって陽が高くなると、雪原の照り返しが強くなる。このような季節に雪盲を防ぐため、紫外線から目を防ぐ目的で使われたのが木やトナカイの角でできた雪眼鏡。旅行や狩猟で長時間、雪原や氷上を移動する際、使用された。
人形は、子供の玩具であったが、服を作ることによって裁縫を覚えるという教育的な要素もあった。右側の2体は、20世紀初頭にカナダ、北極中央地方で作られたもので顔は牙製。それぞれの上衣と男性のズボンはトナカイの毛皮で、それぞれの靴と女性のズボンはアザラシの皮でできている。
紀元6世紀から11世紀オホーツク文化:モヨロ貝塚
まさに「オホーツクのヴィーナス」とでもいうべき鯨の牙でできた女性像は網走市内のモヨロ貝塚で出土した。紀元6世紀から11世紀にかけて北海道の北部から東部にかけて、主にオホーツク海沿岸で活動した文化が遺跡から発見された。このオホーツク文化は海獣狩猟や熊をめぐる儀礼や精神文化など、アイヌ文化の母体ともなった擦文
さつもん
文化に影響をもたらしたと言われている。
企画展「川と魚と北方民族」:生きた展示
企画展「川と魚と北方民族」
会場:北海道立北方民族博物館(北海道網走市字潮見309-1)
会期:2023年2月4日(土)~4月2日(日)
開館時間:午前9時30分~午後4時30分(7-9月は午前9時00分~午後5時00分)
休館日:2月は無休。3/6(月)、3/13(月)、3/20(月)、3/27(月)
常設展示観覧料:一般550円、高校生・大学生 200円(企画展は観覧無料)
詳しくは、同館公式サイト
現在、特別企画展「川と魚と北方民族」が4月2日まで開催中。北太平洋沿岸やオホーツク海に注ぐアムール川の流域などの河川における漁労文化を紹介する。見どころは、生きたダウリアチョウザメ(2歳)の展示。チョウザメの一種でアムール川の淡水域からオホーツク海、日本海、北海道周辺の海域にもまれに来遊する。かつては北海道の河川にも遡上していたと言われるが、現在日本では絶滅したとされる。長生きで80年生きる個体もいる。
白い劇的な世界
マイナス20℃のオホーツク海沿岸、厳しい環境ではあるが長い間、人間が暮らしてきた土地でもある。一面に広がる白い風景のイメージは一見「ばえない」、何もないように見える。しかし、ここには写りきらない劇的な出来事が秘められている。衣食住、生業、信仰、娯楽、愛情、友情。かつて人々は暮らしに応じて地球上の土地を移動し、国境などなかった時代もある。北方民族は、現代の地理的な枠組みで言うと、デンマーク領であるグリーンランド、アメリカ、ロシア領千島列島(北方領土を除く)やサハリン(樺太)、日本の北海道、スカンディナビア諸国など広い地域にまたがって生活していた。白い世界にはつい見逃してしまいそうなカラフルな光の世界がある。(キュレーター・嘉納礼奈)
かのう・れな 兵庫県生まれ。フランス国立社会科学高等研究院 (EHESS)博士号取得(社会人類学及び民族学)。パリ第4大学美術史学部修士課程修了。国立ルーブル学院博物館学課程修了。国内外で芸術人類学の研究、展示企画、シンポジウムなどに携わる。 過去の展示企画に、「偶然と、必然と、」展(アーツ千代田3331、2021年)、“Art Brut from Japan”(プラハ、モンタネッリ美術館、2013年~2014年)などがある。ポコラート全国公募のコーディネーター(2014年~)。共著に「アール・ブリュット・アート・日本」平凡社(2013年)、“ l’autre de l’art ” フランス・リール近現代美術館(2014年)。
https://artexhibition.jp/topics/news/20230301-AEJ1260999/

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ノルウェー政府、先住民族のトナカイ農家に謝罪 「違法な」風力発電所めぐり

2023-03-04 | 先住民族関連
AFPBB News3/3(金) 15:27配信

ノルウェーの首都オスロで、サーミ人の活動家を排除する警官隊(2023年3月2日撮影)。【翻訳編集】 AFPBB News
【AFP=時事】ノルウェー政府は2日、建設後に違法と判断された西部フォセン(Fosen)地方の風力発電所をめぐり、先住民族サーミ人のトナカイ農家に謝罪した。
【写真9枚】財務省を占拠・封鎖する活動家ら
 最高裁は2021年10月、同発電所の風車151基の増設について、サーミ人がトナカイ遊牧という文化を実践する権利を侵害しているとして、土地収用と操業の許可を全員一致で無効と判断。しかし、既に稼働中の風車については指針を示さなかった。
 タリエ・オースラン(Terje Aasland)石油・エネルギー相はサーミ議会の議長との共同記者会見で、「政府を代表して、風車151基をめぐる許可が人権侵害につながることを謝罪した」と述べた。さらに、政府は風力発電所とトナカイ農家が共存できる方法を模索しているとした。
 発電所の影響を受けている6農家は、トナカイが風車の音と形を怖がっており、冬に最適な放牧地を奪われていると主張している。
 首都オスロでは2月23日から、同発電所に抗議するデモが行われ、活動家が政府庁舎を占拠・封鎖した。このデモはスウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリ(Greta Thunberg)さんの支持を得ている。
 サーミ人は約10万人と推定され、ノルウェー、スウェーデン、フィンランド、ロシアの北部に暮らし、伝統的に漁業とトナカイの遊牧などに従事している。【翻訳編集】 AFPBB News
https://news.yahoo.co.jp/articles/301ce61c6aad94fcf7082c78fde12ee9e7af38c1

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ノルウェー政府、先住民に謝罪 トナカイ放牧地の風力発電は人権侵害

2023-03-04 | 先住民族関連
毎日新聞 2023/3/3 12:28(最終更新 3/4 04:44) 有料記事 298文字
 ノルウェー政府は2日、先住民族サーミがトナカイを放牧する牧草地で運営される風力発電について、許可を出したことは「人権侵害」に当たるとして謝罪した。ただ、風力発電とトナカイの放牧との両立を今後も模索する考えも同時に示した。ロイター通信が伝えた。
 この問題では、スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥーン…
この記事は有料記事です。 残り148文字(全文298文字)
https://mainichi.jp/articles/20230303/k00/00m/030/095000c

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数字で見るアカデミー賞助演男優賞の多様性【白人だらけのオスカーは改善されたのか Vol.1】

2023-03-04 | 先住民族関連
esquire2023/03/03By Keiichi Koyama
キー・ホイ・クァンが受賞することがいかに稀有な事例になるか…。南カリフォルニア大の調査からわかる“真実”。
このたび南カリフォルニア大学のアネンバーグ・コミュニケーション・ジャーナリズム学部(Annenberg School for Journalism)は、1929年から2023年のアカデミー賞全(19部門のノミネーションをすべて洗い直し、2015年エイプリル・レイン氏が立ち上げた「#OscarSoWhite」運動から多様性は改善されたかどうか…を調査・分析した結果を発表しました。
それは95年に渡るアカデミー賞の歴史から、マイノリティがいかに排除されてきたかを示すものです。ここでは助演男優賞、助演女優賞、主演男優賞、主演女優賞、監督賞、作品賞に絞り紹介していきます。調査結果から見えるものとは?
「白人男性」以外の候補者はたった10%にも満たない
助演俳優優勝が設立された1937年以来、助演男優賞には合計435人のノミネートがありました。このうち、およそ10%にあたる43人がマイノリティ(underrepresented ※)人種・民族グループからのものでした。
「#OscarSoWhite」を経てもなお、極端な言い方をすれば白人/コーケイジャン(Caucasian)男性が9割を占めるのがこの部門です。マイノリティ男性が、いかにハリウッドでチャンスをつかむのが難しいかが据えて見える結果ではないでしょうか。
この賞に、マイノリティ男性がノミネートされなかった年は56年。マイノリティ俳優の初ノミネートは1948年(トーマス・ゴメス)、初受賞は1953年(アンソニー・クイン)です。
助演男優賞を受賞したマイノリティ俳優は歴史上12人:アンソニー・クイン(1953年、1957年)、ルイス・ゴセット・ジュニア(1983年)、ハイン・S・ニョール(1985年)、デンゼル・ワシントン(1990年)、キューバ・グッディング・ジュニア(1997年)、ベニチオ・デル・トロ(2001年)、モーガン・フリーマン(2005年)、ハビエル・バルデム(2008年)、マハーシャラ・アリ(2017年、2019年)、ダニエル・カルーヤ(2021年)。
人種/民族的内訳を見ると、黒人/アフリカ系アメリカ人のノミネートは23人で、初ノミネートは1970年(ルパート・クロス)。受賞した7人のうち最初のひとりは1983年(ルイス・ゴセット・ジュニア)でした。ヒスパニック/ラテン系のノミネートは9人で、最初のヒスパニック/ラテン系の受賞者は1953年(アンソニー・クイン)でした。アジア人のノミネートは同じく9人で、初ノミネートは1958年(早川雪洲)で、受賞者はハイン・S・ニョール(1985年)ただ1人です。中東/北アフリカ出身の男性は1人しかノミネートされておらず、初めてのノミネートは1963年(オマー・シャリフ)でしたが受賞はしていません。同様に、先住民族を親世代にもつ男性のうち最初の3人は1971年にノミネートされましたが、オスカーは受賞していません。
アジア系の受賞者は1929年からの歴史上、たったひとり。『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』のキー・ホイ・クァンは、ほぼ30年周期でしか誕生していないアジア系助演男優賞候補になっているわけですが、受賞することになれば、長い歴史上2人目の快挙となります。
※ Underrepresentedは「過小評価された」「少数派」「表に出てきづらい」などの意味をもちますが、ここではあえて「マイノリティ」と訳しています
>次回は助演女優賞の分析です
https://www.esquire.com/jp/entertainment/movies/a43169589/vol1-oscar-so-white-issue-best-actor-in-supporting-role-usc-research/

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「沖縄県」はどのように生まれたのか? いまさら聞けない「琉球併合」を東大生が超要約

2023-03-04 | ウチナー・沖縄
ダイヤモンドオンライン2023.3.4 3:16
「世界史とは、戦争の歴史です」。そう語るのは、現役東大生集団の東大カルペ・ディエムだ。全国複数の高校で学習指導を行う彼らが、「戦争」を切り口に、世界史の流れをわかりやすく解説した『東大生が教える 戦争超全史』が3月1日に刊行された。世界史、現代情勢を理解するうえで超重要な戦争・反乱・革命・紛争を、「地域別」にたどった、教養にも受験にも効く一冊だ。古代の戦争からウクライナ戦争まで、約140の戦争が掲載された、まさに「全史」と呼ぶにふさわしい教養書である。元外務省主任分析官である佐藤優氏も絶賛の声を寄せる本書の内容の一部を、特別に公開する。今回は、日本が行った「台湾出兵」について紹介。
明治政府が”ある事件”を政治に利用しようと考えた
 1874年、日本は台湾出兵を行いました。これは日本の明治政府が、“ある事件”の報復のために清の領土であった台湾に向かった出来事です。その背景には、「琉球王国を日本の領土だと国際的に認めさせたい」という思惑がありました。
 1871年10月、台湾で漂流民の殺害事件が起きました。琉球王国に属する宮古島の船が暴風雨に襲われて台湾に漂着したところ、現地の先住民に拉致され、54人が殺害されてしまったのです。
 明治政府はこの事件を政治に利用しようと考えました。台湾に報復することで、当時所属があいまいだった琉球王国を日本の一部だと知らしめようと考えたわけです。また、清に強硬な姿勢を示すことで、日本が東アジアにおいて群を抜いて発展していることを西欧諸国にアピールし、不平等条約の改正につなげたいという意図も背景にありました。
琉球王国で260年以上続いた「日中両属体制」
 当時、琉球王国は国際的には日本の一部と認められていませんでした。その理由は、琉球と中国との古くから続く関係にあります。
 中国が明の時代であった14世紀、明は近くの国々に使者を送って自国に従わせようとしました。琉球王国も明の要求を受け入れ、朝貢(中国皇帝に挨拶文・貢ぎ物を捧げ忠誠を誓うこと)、冊封(中国皇帝より国の王であることを認めてもらうこと)の関係を結び、以降は中国の支配下に置かれることになります。
 ところが、17世紀初めに薩摩藩が琉球へ出兵し、首里城を占拠して琉球国王を捕まえて服属させたのです。貿易での利益を狙ってのことでしたが、普通であればこの暴挙に明も黙ってはいないところです。
 しかし、明はちょうどこの頃、各地で暴動が頻発していて国力が低下していました。そのため、遠い小さな国の琉球王国にまで手を回せなかったのです。こうして琉球王国は、表面的には中国が、事実上は薩摩藩が支配するという「日中両属体制」が260年以上にわたって続いていたのでした。
明治政府が、台湾出兵を決断
 さて、台湾での漂流民殺害事件を受けた日本は、清に渡り、責任を追及しました。加害側の台湾は清の領土だったからです。すると、清は「琉球王国はそもそも日本ではないし、台湾の先住民のことに関しては何も関与していない」と責任を回避し、賠償金の支払いを拒否しました。
 清のこの回答を受けた日本は、これ幸いと考えます。「関与していないのなら台湾に攻め込んでも大丈夫」と解釈したわけです。
 当時の日本は、政府の分裂や地方での反乱を受け、政府への不信感が高まっていました。その不安を外に向けるためにも、明治政府は台湾出兵を決断しました。
 陸軍中将の西郷従道の指揮のもと、3000人の兵を台湾に送ったのです。こんなに大人数で出兵した理由も「日本のため、国民の安全を守るために、我々政府はここまでやる」という姿勢を国内に見せる必要があったからでしょう。
強引な行動を取った日本はひんしゅくを買う
 この出兵で日本は、事件が発生した周辺地域を占領し、頭領であった親子を殺害して報復を完了しました。そして日本は、琉球支配を国際的に承認させようとするも、その強引な行動で諸外国との関係を悪化させてしまいます。この台湾出兵は、事前に清に通達せず、言質を取ったと解釈した日本の独断的行動だったからです。
 日本側からすれば「台湾の先住民には関与していないと言ったじゃないか」という言い分ですが、清からすれば「そもそも台湾は清の領土で、勝手に攻め入るなんてあり得ない」と当然のごとく激怒します。
 加えて日本は、清と利害関係のある諸外国にも事前の通達、根回しをしていませんでした。特にイギリスからは激しい抗議を受けてしまいます。イギリスとしては、日本と清が戦争をしてアジアでの経済活動のあてが外れてしまえば、せっかくアロー戦争で整えた清との貿易の利益が上がらなくなる可能性があったからです。
日本が沖縄県を設置し、琉球を併合
 結局、イギリスの仲介で清との交渉が行われ、両国は和解にこぎつけました。清は日本軍の出兵を義挙(正義のために起こした行動)であったと認めました。
 しかし、日本はそれを逆手に取ってさらなる暴挙に出ます。そこで交わされた書面には「台湾の生蕃かつて、日本国臣民らに対して妄りに害を加え」という内容が書かれていました。これを明治政府は「清が琉球を日本の一部として認めた」と勝手に解釈し、琉球の併合を進めたのです。
 そして台湾出兵の翌年には、琉球藩に王国制度の廃止を通達し、1879年には沖縄県を設置して強制的に併合しました。これにより、琉球王国は終わりを告げます。この対応により、日本は清やイギリスなどの諸外国との関係をさらに悪化させてしまいました。
(本原稿は、『東大生が教える戦争超全史』の内容を抜粋・編集したものです)
東大カルペ・ディエム
現役の東大生集団。貧困家庭で週3日アルバイトをしながら合格した東大生や地方公立高校で東大模試1位になった東大生など、多くの「逆転合格」をした現役東大生が集い、全国複数の学校でワークショップや講演会を実施している。年間1000人以上の生徒に学習指導を行う。著書に『東大生が教える戦争超全史』(ダイヤモンド社)などがある。
https://diamond.jp/articles/-/318038

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カナダで6歳男児が友人の4歳児に撃たれ重傷 命に別条なし

2023-03-04 | 先住民族関連
AFPBB News2023年3月3日 15時33分
【AFP=時事】カナダ・マニトバ(Manitoba)州の先住民コミュニティーで2月27日、6歳男児が友人の4歳児に銃で撃たれ病院に搬送された。警察が2日、発表した。
 王立カナダ騎馬警察(RCMP)によると、現場はウィニペグ(Winnipeg)から約185キロ離れた先住民ペグイスのコミュニティー内にある住宅。先月27日、4歳児が発砲した弾が6歳児に当たった。6歳児は直ちに病院に搬送され、重傷だが命に別条はないという。2人は銃に触れる環境だった。
 警察は銃器を不法に保管していたとして男1人を拘束。銃5丁とクロスボー(洋弓銃)を押収した。
【翻訳編集】AFPBB News
https://news.livedoor.com/article/detail/23805587/

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橋本環奈“初冠特番”でオーロラリベンジ旅 3年越しの夢…「絶対にこの目で見たい」

2023-03-04 | 先住民族関連
山形新聞2023-03-03 06:30

4日放送の『橋本環奈のリベンジ旅』に出演する橋本環奈 (C)フジテレビ
 俳優の橋本環奈が、4日放送のフジテレビ『橋本環奈のリベンジ旅』(後2:35、※関東ローカル)に出演する。橋本にとって初の冠番組となる同番組では、“俳優・橋本環奈”が「これまでにやり残したこと」のリベンジを目指すバラエティー番組。昨年、数多くの映画出演に加え、舞台『千と千尋の神隠し』の主演、そして昨年大みそかに放送された『第73回NHK紅白歌合戦』(NHK)では司会を務めるなど、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いの橋本が「リベンジしたいこと」とは何なのか。
【番組カット】かわいすぎる…!白のニット帽×ベスト姿でビールを満喫する橋本環奈
 第1弾となる今回、橋本がリベンジしたいこととして挙げたのは「オーロラを見ること」。なぜ、これがリベンジなのか。実は橋本、今から約3年前の2020年に同局の特番『なるほど!ザ・ワールド ~新年あけまして!!奇跡の絶景スペシャル~』(2020年1月1日放送)において「どうしてもオーロラが見たい」という強い希望で、フィンランドでロケを行った。映画撮影などで多忙な中、スケジュールを捻出して行ったものの、時期や悪天候などによりオーロラを見ることはかなわず、全く見られないというまさかの結果となってしまった。
 テーマは「橋本環奈のオーロラリベンジ旅」。前回、オーロラが見られなかった橋本が今回向かったのは、カナダ・イエローナイフ。橋本が自ら、この時期、世界で一番オーロラを見やすいと言われる場所を調べてきた。イエローナイフは、オーロラベルトの真下に位置しており、3日間滞在すればオーロラ遭遇率はなんと95%を誇るという“オーロラの聖地”として有名な街だ。橋本はイエローナイフの市街地から車で30分ほどの距離にあるオーロラ観賞専用施設「オーロラビレッジ」を訪ね、街の光が届かない自然環境の中、「ティーピー」と呼ばれるカナダ先住民のテントで寒さをしのぎながら、オーロラの出現を待つ。果たして橋本は3年越しの夢をかなえ、オーロラを見ることができるのか。
 橋本はオーロラ観賞以外にも極寒の中、体を張ってさまざまなアクティビティーを体験。琵琶湖のおよそ43倍、世界で10番目に大きな湖、グレートスレーブ湖が凍ったところに、穴をあけて魚を釣るという先住民の伝統漁「アイスフィッシング」に挑戦すると、「橋本さんが幸運をもたらしてくれた」と現地の方が驚くほどの大漁。そして、釣った魚をその場でさばいて食べた橋本も思わずうなった驚きの理由とは。
 犬ぞりレース世界チャンピオンが率いる犬たちにソリを引かれ、マイナス36度の中、ジェットコースターに乗っているような気分を味わう。完全防寒で臨んだものの、あまりの寒さに「痛い!痛い!」と悲鳴を上げる橋本だが、一体どうなってしまうのか。そして、橋本はイエローナイフでしか食べられない絶品のフィッシュ&チップスや、大人気の地ビールも堪能。おいしい酒と料理に舌鼓を打ちながら、ここでもオーロラを見るコツを調査する。
 多忙なスケジュールを調整して、どうしてもオーロラを見たい橋本は果たして見ることはできるのか。橋本のテレビでは見られない「素」の部分をカナダの大自然の映像美と共に届ける。
■橋本環奈コメント
――今回のオーロラリベンジにかける思い。
「私自身、今まで生きてきて何かに“リベンジしたい”と願ったことはあまりなかったのですが、今回、『リベンジ旅』と言われて“何をリベンジしようか”って考えた時に思い浮かんだのがオーロラでした。以前ロケに行った時に、オーロラが見られなかったことはずっと心残りでした。今回、すごくいい機会をもらえたと思うので“オーロラを絶対にこの目で見たい”という思いでロケに行ってきました」
――初冠番組の感想。
「正直、初冠番組という実感はあまりないのですが、私だけで番組になるということで、ロケ中の撮れ高を心配してしまいました(笑)。オーロラ以外にもカナダ・イエローナイフで釣りに行ったり、犬ぞりに挑戦したり、素敵な雪景色をご覧頂けるのではないかと思います!」
――番組の見どころ。
「この番組は『リベンジ旅』なので“果たしてオーロラが見られたのか!?見られなかったのか!?”に注目していただけたら、と思います!せっかく2回も行ったのにまたオーロラが見られなかったら、本当にがっかり…なので、視聴者の皆さんもテレビの前で“オーロラが出てほしい”と願いながら見ていただければと思います」
https://www.yamagata-np.jp/oricon/print.php?id=2269971

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室工大から発信 6日「アシル-トイタ」ワークショップ開催【室蘭】

2023-03-04 | アイヌ民族関連
室蘭民報2023.03.03

プロジェクト初のワークショップをPRする徳楽教授
人口変化・アイヌ文化・情報技術
 室蘭工業大学(空閑良壽学長)が代表機関として新しい食産業・文化を発信する「アシル-トイタによる心と体に響く新しい食の価値 共創拠点」の第1回ワークショップが6日、室蘭市水元町の同大で開かれる。プロジェクトリーダーの徳楽清孝教授は「情報技術を活用した古くて新しい価値観を聞きに来てほしい」と呼びかけている。
 アシル-トイタ(アイヌ語で新しい-土地を耕す)のプロジェクトは「農業を子どもたちに継がせたくなる生業へ」をスローガンに、アイヌの文化や自然観を学び、人々が集い住みたくなる豊かな「食のまち」の構築を目指す。国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の産学官共創を支援する「COI-NEXT」に採択されている。
 昨年11月に拠点となる釧路管内白糠町でキックオフイベントを開催。同町で自生する植物などの資源を掘り起こし、人の心を動かす食にまつわる物語を作り出すため、「アシルトイタ物語」を商標登録している。
 ワークショップでは徳楽教授がこれまでの取り組みを説明した後、江崎雄治専修大教授、種石悠北大大学院医学研究院客員研究員、山田祥子室工大准教授、前田至剛追手門学院大学准教授、峠隆之奈良先端科学技術大学院大准教授が、人口変化、アイヌ文化、情報技術などについて講演する。
 参加無料。時間は午前9時~正午。開催場所は同大N棟4階401号室、定員100人程度。テレビ会議システム「Zoom」でも視聴可能。QRコードを読み取ると参加できる。問い合わせは同大の徳楽研究室、電話0143・46局5721番へ。
https://hokkaido-nl.jp/article/28486

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これまでも、この先も。北の大自然と共存するアイヌの文化を伝えたい【後編】

2023-03-04 | アイヌ民族関連
JOSEISHI.NET3/3(金) 18:22配信

講談社FRaU
近年の多文化主義とエスニシティが高まるなか、アイヌの方々への注目が集まっています。「ゴールデンカムイ」のマンガ(集英社)やアニメで興味を持った人も少なくないでしょう。トラベルライターのライター鈴木博美さんが、アイヌ民族ゆかりの地をめぐるこのシリーズ。最終回は、北の大地でアイヌ文化を広める活動を続ける、東京育ちの女性のストーリーをお届けします。
東京育ちのZ世代がアイヌ文化を発信
新千歳空港から東に車で約1時間。平取町(びらとりちょう)の二風谷(にぶたに)地区は、住民約300人の7~8割がアイヌにルーツを持つ、北海道でもかなりレアな地区だ。コタン(集落)の中心には立派な博物館とアイヌ文化関連施設があり、公園のようにキレイに整備されている。
ここでひとりの女性と待ち合わせをした。山田桜子さん(28歳、上写真)は、アイヌ文化を発信すべく観光ツアーやガイド、プロダクトなどを企画・運営する会社「NEPKI(ネプキ)」の代表を務めている。NEPKIはアイヌ語で「仕事」を意味するという。山田さんには、二風谷の伝統的な衣装のひとつ「カパラミプ」がよく似合っていた。
二風谷の工芸品としては「二風谷アットゥシ(反物、着物)」と「二風谷イタ(盆)」が知られている。二風谷アットゥㇱは、オヒョウの木の内皮でできた糸を編んでつくられる着物などで、しなやかでやさしい風合い。水に強く通気性にもすぐれているという。主に儀礼の際に男性が身にまとう。
二風谷コタンの広い敷地には、チセと呼ばれる茅葺(かやぶ)きのアイヌ伝統家屋が復元されている。中に入ることもでき、昔のアイヌの暮らしが忠実に再現された部屋と生活道具の数々がとても趣(おもむき)深い。9棟のうち2棟のチセでは、工芸家による木彫りの実演などが行われており、その見事な技を見学できる。
工芸家がいるチセでは、ちょうど「二風谷イタ」を制作しているところだった。イタ(盆)の素材はクルミやカツラの木が多いそうだ。工芸家の手によって、美しい文様がみるみるうちに浮かび上がってくる。細やかで、繊細なアイヌの手仕事だ。道具としてつかう人とのかかわりが深く長くなるにつれ、イタはいっそう味わい深い表情を帯びてくるという。
平取町立二風谷アイヌ文化博物館では、二風谷コタンを流れる沙流川(さるがわ)流域のアイヌ文化を学び、体感できる。山田さんが、展示されている生活道具の利用法、素材や模様の意味などを丁寧に説明してくれた。暮らしとともにあった多くの展示物が、よりリアルに感じられる。豊富な知識をもつ彼女の話ぶりからは、アイヌ文化への愛がひしひしと伝わってきた。
山田さんは大阪生まれの東京育ち。大学卒業後は民放テレビ局で美術関連の翻訳業務に携わりながら、学生時代から続けていた街頭清掃も行っていた。その活動を通じて知り合った人の勧めで、松下政経塾のプログラムに応募。テレビ局をやめ、約1年間インターンシップ生として、環境問題や社会課題について学んだという。
「あるとき塾で、東京オリンピックのマラソンコースが札幌に変更になったことが話題になりました。それを機に、次の五輪招致に向け、札幌が世界に魅力を発信するためにはどのような街づくりが必要か塾生同士で話し合ったのですが、リモートでいろいろ話していても、いまひとつリアリティが感じられない。『それなら実際に私が住んでみよう』と思い、2020年2月に札幌に転居しました」(山田さん、以下同)
ちょうど、新型コロナの陽性者数が激増しはじめていたころだった。
「市民が集まっての清掃活動ができずに悶々とするなか、『いまのうちに北海道のことを学ぼう』と思い立って道内各所を訪れました。そのひとつが二風谷地区です。アイヌ文化が生活に根づいていることに興味をもち、農家のお宅にしばらく下宿させてもらって、アイヌについて勉強しました」
二風谷へは、幼少の頃に二風谷のアイヌ文化の中で育った哲雄さん(写真左)のツテをたどって訪れた。松下政経塾インターン時代に知り合った山田さんと哲雄さんは、その後結婚。今年はじめに長男の爽椰(そおや)君が誕生した。この地は、町全体で子どもを見守り育てる「ウレシパモシリ」(互いに育って助け合う世界)だという。
アイヌ文化を勉強し活動していくなかで、NEPKI運営の中心的存在となっていった山田さん。現在はツアーコンテンツをメインに、若いアイヌの人たちと一緒にアイヌ文化を発信する新しい取り組みにチャレンジしている。山田さんはかつて、ミスユニバース東京大会に出場した経験をもつだけに、「魅力をいろんな角度からアピールするという点では、ミスコンもいまの活動も同じですね」と笑う。
アイヌ民族の自然とともにあるライフスタイルは、環境保全やエコロジーといった観点からも学ぶべきことは多く、都市で生活する私にも大きな刺激を与えてくれる。アイヌ民族の文化と歴史に思いを馳せるこの旅で、人生観が変わるほどの文化体験を味わえた。取材協力:NEPKI
https://news.yahoo.co.jp/articles/778f3092f7b415978cb487e44c556917813eb705

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哲学者スラヴォイ・ジジェクが指摘「自らの罪を誇示する」政治家たちの傾向

2023-03-04 | 先住民族関連
クーリエジャパン3/3(金) 11:30配信

(写真:クーリエジャポン)
スロベニアの哲学者スラヴォイ・ジジェクは、「最後の人食い人間」の逸話を例に、これまでの為政者たちは自ら犯した罪を隠匿してきたと指摘する。
【画像】哲学者スラヴォイ・ジジェクは「ウクライナ戦争」をこう読む
だが近年、愛国主義を標榜する政治家たちは、自身の罪を隠すことなく「祖国のための行動だ」と誇示する傾向があるという。シジェクが今、危惧することとは何なのか──?
最後の「人食い人間」を食べた者は…
ふつう、自国を「文明国の代表」として示そうとするならば、その原罪を曖昧にし、野蛮な面を隠して表目に出ないよう懸命になるものだ。ところが最近、右派の指導者たちのあいだでは“勇気をもって”こうした虚飾まみれのふるまいをやめ、堂々と罪を犯すという危険な傾向が見られる。
オーストラリア先住民に初めて遭遇した探検家についての話を思い出そう。「あなたたちのなかに、人食いはいますか?」と彼は訊く。「いないですよ。昨日、生き残っていた最後の人食いを食べたので」と彼らは答える。最後の人食い人間を食べて文明化された共同体を立ち上げるには、その行為を「人食い」とは別の名で呼ばなければならない──つまり「最後の人食い」は、記憶から消し去るべき一種の原罪なのだ。
同じように米国の「西部開拓時代」においても、近代の法秩序を確立するまでには、野蛮な犯罪の数々と、それを隠蔽するための神話が必要だった。ジョン・フォード監督による西部劇『リバティ・バランスを射った男』の登場人物はこう言った。
「伝説が事実になるのなら、伝説のほうを記事にしろ」
しかし伝説から生まれた「事実」の数々は、立証可能な真実ではなく、社会のなかで作られた人工的な事実である。社会・政治的な秩序の基盤となる共有観念とでも言おうか。これを否定する人がある程度に達すれば、秩序全体が崩壊することになる。
現代文明は、いまだに野蛮さに依存している。だが、社会的に構築された共有観念があるからこそ、その社会における原罪は隠されたまま、静かに機能し続ける。権力の法的機関が「強化尋問」という名のもとに、どれほど法外な拷問をしてきたかを思い起こせばすぐにわかることだ。
右翼の「ヒロイズム」とは
ところが今、新タイプの政治体制が現れつつあると、哲学者のアレンカ・ジュパンチッチが近著『腐らせておけ』(未邦訳)で指摘している。自分たちの行為が「あたかも根本的に異なる道徳観や性格の発露であるかのように、すなわち自分たちがそれを公然とおこなうための勇気や根性をもっているかのように」、その犯罪を誇示する指導者が増えているのである。
しかし、ジュパンチッチはすぐにこう付け加える。
「憲法に求められる偽善を避け、勇気を持って法に違反しているように見えるふるまいは、国家権力そのものの忌まわしい面とのあからさまな同一化にすぎず、それ以外の何物でもない。彼らは自分たち自身の法に「違反」している。
だからこそ権力を握っているときでさえ、これらの指導者たちはまるで既存の権力を『闇の政府』だとか何だとか呼びながら、反旗を翻しているかのように行動し続けるのだ」
いうまでもなくこの記述は、ちょうど昨年12月にアメリカ合衆国憲法の廃止を求めたドナルド・トランプの姿を彷彿とさせる。
いうまでもなく、ロシアでも事態は崩壊しつつある。ウラジーミル・プーチン大統領は10ヵ月ものあいだ、ウクライナで戦争は起きていないと主張し続けており、ロシア国内の一般人が戦争の可能性を示唆したとしてあやうく刑事訴追されるところだった。ところが今やプーチンは自らの指針を破り、ロシアが戦時中であることを認めている。
同様に、プーチンの悪友であるエフゲニー・プリゴジンは、ロシアの民間軍事会社であるワグネル・グループ*との関係を長いこと否定していた。だが今では、自身がこのグループを設立したことや、合衆国の選挙に介入したこと、そして今後もそうするつもりであることを認めている。
トランプやプーチンのような政治家が国益(もしくは彼ら自身の利益)を求めるとき、「勇気」は憲法に違反することをいとわない意思として定義し直される。汚れ仕事をする勇敢な愛国者がいなければ文明は存続できない、というわけだ。これは明らかに右翼の「ヒロイズム」である。
国のために気高い行動をするのは(自分の命を犠牲にすることを除けば)簡単だが、国のために犯罪を犯すことができるのは心がタフな人間だけだと考えているのだろう。
古代ギリシア悲劇のようだ
こうしたヒロイズムゆえに、1943年、ホロコーストの立案者であるハインリヒ・ヒムラーは「今まで書かれたことのない、そして今後も決して書くわけにはいかない、われわれの歴史の栄光の一章」について話したのだ。問題は、ユダヤ人女性と子供たちをどうするかということだった。
ヒムラーは親衛隊(SS)の将校たちを前に「ここに、一点の曇りもない解決策を採ることにした」と語り、こう続ける。
「男たちを皆殺しにした挙句、子供の姿をした復讐者たちが大人になり、われわれの息子や孫たちに危害を加えるのを、みすみす見逃すわけにはいかない。だからこそ、奴らを地上から消滅させるという困難な決断を下さなければならなかった」
しかし今日のロシアでは、残虐な行為を「決して書くわけにはいかない」とする考え方は、ますます時代遅れなものになりつつある。人食いを食べるのを見て見ぬふりするどころか、そのような行為が法律で保護されているのだから。
12月14日、ロシアのドゥーマ(連邦議会下院)で、ドネツィク、ルハーンシク、ザポリージャ、ヘルソンといったウクライナ地域においてロシア併合前に犯された残虐行為は、「ロシア連邦の利益」になるものであれば「法によって罰せられる犯罪とはみなされない」とする法案が採択された。
判断基準が不明確ではあるが、ロシア軍が犯した拷問、レイプ、殺人、略奪、破壊行為がすべて容認され、褒め称えられることすらあると考えて差し支えないのだろう。まるで、犯罪に加担するよりも道徳に従う方が危険であるというソフォクレス(註:古代ギリシア三大悲劇詩人の一人)が著した『アンティゴネ』が抱えるパラドックスのようだ。
米国もまた試されている
歴史家のティモシー・ガートン・アッシュは「ロシア文化がプーチンの貪欲な共食いの巻き添えになっている」と述べている。
「ウラジーミル・プーチンが、客観的に見て、アメリカ帝国主義の代理人なのかを問う時が来ている。というのも、プーチンが“ロシア世界”と呼ぶものに対してアメリカ人が与えた損害は、プーチン自身による損害の半分にも満たないからだ」
カザフスタン人ジャーナリストのアルマン・シュラエフも最近、同様の分析をしながら、カザフスタンのロシア大使の傲慢な発言と脅迫に応え、こう非難した。
「ロシア恐怖症。君たちの愚かな行動から生まれたのはこれだけだった……あなたたちは愚かだ。自分たち自身を食う人食いだ」
逆説的なことに、ロシアが偽りに満ちた事態の透明化を進めるに従って、私たちの道徳観は侵食され、国家権力の神秘化をさらに危険なものにしている。
このことから、匿名告発サイト「ウィキリークス」の創始者ジュリアン・アサンジのような人物が、なぜこれまで以上に必要とされているかがわかるだろう。アサンジは私たちの「アンティゴネ」なのだ。
彼は合衆国の政策の後ろ暗い面のほんの一部を公開したことでスパイ容疑*をかけられ、何年ものあいだ、仮死のごとき孤立した状態に置かれ、合衆国への引き渡しを待っている。
アサンジはやってはいけないことをしたかもしれない。それでも私が2023年に願うのは、ジョー・バイデン大統領が真の勇気を示し、彼に対する告発を取り下げることである。
SLAVOJ ŽIŽEK
https://news.yahoo.co.jp/articles/e34b4fd976621709e844738d66c4b618d996b59a

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