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北海道新聞 2025年1月26日 4:00
280キロという巨体なのに子どものような愛嬌(あいきょう)があり、札幌・円山動物園の人気者だった。
ホッキョクグマの雄のデナリ。米ユタ州の動物園から1歳半の時に海を渡ってきた。30年前のことだ。おととし29歳で旅立つまで子グマ8頭をもうけ、絶滅危惧種の繁殖にとても貢献した。
ちょっと変わった名前は米アラスカ州にある北米の最高峰「デナリ」にちなんでいる。旧称「マッキンリー」の方がなじみがあるか。冒険家の植村直己さんが行方不明になった、あの山だ。
アラスカでは1970年代から先住民族の言葉で「偉大なもの」を意味するデナリと呼んでいた。公称は2015年にオバマ大統領が先住民族に敬意を表して変えた。
ところがトランプ大統領は就任演説で、山の名を再びマッキンリーに戻すと表明した。理由は「マッキンリー大統領は関税と才能によって米国を大金持ちにした。天性のビジネスマン」だから。
山の旧称は1897年から大統領を務めたマッキンリーに由来していた。他国からの輸入品に高い関税をかけ、保護貿易を推進した大統領として知られる。
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アイヌ語由来の地名が数多くある北海道も、無視できない話ではないか。
(論説委員=国際担当・志子田徹)