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【報告】CEDAW 報告集会『くりかえされた「複合差別」と「マイノリティ女性」への懸念と勧告』

2025-01-31 | 先住民族関連

 

IMADR 2025.01.30

2025年1月25日(土)、大阪にて、女性差別撤廃委員会(CEDAW)による第9回日本政府報告書審査の報告集会を開催しました。会場・オンラインを合わせて120人の方々にご参加いただきました。集会の一部を以下、報告します。

女性差別撤廃条約とマイノリティ女性

はじめに、マイノリティ女性が女性差別撤廃委員会への関わりを通して、どのように女性たちの存在と状況を可視化してきたかについて、主催団体の一つであるIMADRより次のように共有をしました。

1985年 日本、女性差別撤廃条約を批准

2003年 第4・5回日本政府定期報告書の審査で初めてマイノリティ女性について言及があり、不可視化されているマイノリティ女性の状況に関する情報を次回報告書に含めるよう勧告が出る。

2007年 日本政府による実態把握の動きはないため、部落女性、アイヌ女性、在日コリアン女性たちが自ら実態調査を行い(2004~2005年)、その報告を書籍にして発表した。

2009年 第6回定期報告書審査で、マイノリティ女性に対する差別に対応するための政策的な枠組みを作り、特別措置をとるよう委員会が勧告を出す。

2010年 第3次男女共同参画基本計画で、「女性であることで複合的に困難な状況に置かれている人々等への対応」という枠組みを設け「障害があること、日本で働き生活する外国人であること、アイヌの人々であること、同和問題等に加え、女性であることで更に複合的に困難な状況に置かれている場合がある」として、政府は初めてマイノリティ女性を基本計画の範疇に含めた。

2016年 第7・8回定期報告書審査で、マイノリティ女性に対する複合差別を包括的に禁止する法律の制定、ヘイトスピーチの制裁の法的整備を行うよう委員会が勧告を出す。

2024年 第9回定期報告書審査で、「公的および私的領域における直接および間接両方の差別、ならびに交差的形態の差別を網羅する女性差別の包括的定義を法律に含む」よう勧告が出る。女性差別の定義を法律に含めることは当初より勧告されてきたが、今回初めて「交差的形態の差別」も含まれるようになった。

(写真:審査会場の様子)

ジュネーブ報告

この集会の主催者であり、審査に参加した部落解放同盟中央女性運動部、アイヌ女性メノコモシモシ、アプロ・未来を創造する在日コリアン女性ネットワーク、Be the Change Okinawa が次のように報告しました。

部落女性は、委員に伝えたかったこととして、以下6点を挙げました。1) マイノリティ⼥性に対する複合差別やSNS上でのアウティング含むあらゆる形態の差別とその結果に対応する包括的反差別法の制定すること、2) 国内⼈権機関を設置すること、3)「部落差別解消推進法」など現⾏の個別3法の運⽤を、複合差別に効果的に対応できるように⾒直すこと、4) 女性差別撤廃条約の選択議定書(個人通報制度)を採択すること、5) 教育・雇⽤・社会保障面を含むマイノリティ⼥性の実態調査を実施すること、6) 意思決定機関へマイノリティ⼥性を登⽤すること(国や地方の審議会委員への登⽤など)。

アイヌ女性は、活動に関わっていくことで「複合差別」に光を見出し、条約審査での働きかけなどを通してアイヌ女性への差別の可視化が進んだと強調しました。2016年の日本審査直後には元公人によるブログ記事で差別をうけたこと、それが⼈権侵犯であると公的に認められ、アイヌ⺠族に対するヘイトスピーチを規制する社会規範が初めて示されたと述べました。早急に、独⽴した国内⼈権機関を創設するよう唱えました。

在日コリアン女性は、受けた差別は消えることなく積み重なっていく、繰り返される差別により自らのアイデンティティを公にすることができない人が多いと述べました。今回の審査で特に伝えたかったこととして、1) 在⽇コリアン⼥性に対する差別解消を⽬的とした国や地⽅⾃治体による公的な実態調査がないこと、2) 在⽇コリアン⼥性に対するヘイトスピーチやヘイト クライム、 オンライン上の誹謗中傷などの攻撃を防⽌し、 救済のための仕組みを国が整備すること、3)⺠族として⽣きづらいことが、 在⽇コリアン⼥性には過重な負担を負わせていることを挙げました。

琉球女性は、在沖米軍による性暴力に関する勧告が初めて女性差別撤廃委員会から出たことを強調しました。審査中に示された委員からの懸念や質問は、総括所見において、1)平和構築のあらゆる段階で女性の有意義かつ包摂的な参加を確保すること、2)あらゆる形態のジェンダーに基づく暴力を防止し、加害者の捜査、訴追、適切な処分、サバイバーへの十分な補償をするための適切な措置をとることを求めるという勧告として明確にされたと述べました。

報告者によるトーク

4人の報告者と司会者によるトークが行われました。

◉今回の勧告をどのように使っていくのか?

・団体内で勧告の内容を共有していく

・それぞれの地元の国会議員や地方議員に勧告を広める

・同じコミュニティ内の男性に複合差別の理解を広める

・地方自治体レベルの男女共同参画計画の中に活かせるようにする

・勉強会などを開催し、勧告の内容について一般の人たちにも広める

◉次世代、日本国内へのメッセージ

「当事者が言い続けることはしんどいが、言い続けること。マイノリティの問題が改善してこそ、日本の社会構造が変わっていくし、すべての女性が生きやすくなる社会になるのではないでしょうか。」

「弱い人を助ける、保護する、支援するという気持ちではなく、みんなが安心、安全に過ごすためには、人権問題、差別問題をしっかりあらゆる場所で考えていくことが、必要です。」

「複合差別は、社会全体の構造の問題。だから、マイノリティ女性のみならず、マジョリティも複合差別とは何かを学ぶ必要があるのではないでしょうか。」

「マイノリティ女性の歴史やヘイトスピーチの問題について地道に伝え続けていきたいです。」

他団体からの連帯メッセージ

ともにジュネーブの審査に参加した、神戸外国人救援ネット、DPI女性障害者ネットワークから連帯のメッセージをいただきました。

共催団体のアジア・太平洋人権情報センター(ヒューライツ大阪)から連帯の挨拶、そして主催者を代表して部落解放同盟中央本部から閉会の挨拶を行い集会は終了しました。

▶︎マイノリティ女性が提出したNGOレポート(日本語英語

▶︎総括所見(JNNC訳)はこちら

*マイノリティ⼥性フォーラムについて

⼥性でありマイノリティコミュニティに属することで被る複合差別について国連で議論が進められてきたことを⼒に、私たちは2003 年、2009 年そして 2016 年の⼥性差別撤廃委員会による⽇本政府報告書審査の場において委員たちに積極的な働きかけをしました。マイノリティ⼥性が直⾯する課題に関して委員会から出された勧告は具体的で⽰唆に富むものであり、私たちの今後の活動の⼤きな糧となりました。これまでの歩みと成果を⼤切にしながら、マイノリティ⼥性の権利実現のために共に活動をしていくことを⽬指して、マイノリティ⼥性フォーラムを正式に⽴ち上げることにしました。(2017 年3 ⽉8 ⽇設⽴の経緯より)

https://imadr.net/recaponpost-cedawevent/

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