20階の窓辺から

児童文学作家 加藤純子のblog
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「フロム・ヘル」と「SP」

2008年01月05日 | Weblog
 お正月休みには、のんびりとTSUTAYAで借りた映画のDVDを何本か観て過ごしました。
 そのなかの1本、「フロム・ヘル」のジョニー・デップ演じる刑事役のキャラクターを観ていて、私は、去年からこだわって観ている、あるテレビドラマを思いうかべていました。
 
 芥川賞を受賞した『GO』の作者である金城一紀、原作・脚本の「SP」です。(土曜夜11時過ぎからフジTV。11時にはベッドに入ってしまう私はDVDに撮っておいて後日、観ています)
 ちなみに『GO』は在日韓国人である彼自身の高校時代の体験を、ウィットに富んだ語りで描いた作品です。
 クドカンの脚本で映画にもなりました。(クドカンの脚本がまた、お洒落でウィットに富んでいて、見事に高校生たちを描ききっていました。あまりにも秀逸で、原作を越えてしまったのでは、と思ったほどです)

 その「SP」。「SP、見てる?」といろんな方に伺うと、そのつど「一回目は、ね」という返事が返ってきます。「二回目以降は?」とさらにたずねると「ぱっとしないからやめちゃった」と、これも大方の皆さんのご意見です。
 たしかにストーリー的には、ぱっとしないかもしれません。
 一回完結のように見えて、その一回が実に軽いし説得力に欠ける。
 いってみればちゃちなのです。荒唐無稽なのです。
「え、うそ。これでおわり?」みたいな感じに。
 
 でも私は、ここにいたってもなお、金城一紀を信じているのです。
 このままでぜったい終わるはずがない、と。
 ドラマを流れている、彼特有の会話のお洒落さやユーモアやウィットさは健在です。
 けれどいまや、マイナードラマの隠れファンのような心境で、私はこう思っています。このドラマは実は、大局的なところで、ものすごい壮大なテーマに繋がっていくのではないか・・・。
 そのことを、後ろ盾のように証明してくれたのが、この「フロム・ヘル」でした。(『GO』のイメージで、この映画をとらえないで下さい。かなりエグい映画ですから)
 その金城一紀は『GO』を発表以来、書くことに喘いでいたようです。そして彼は、作品を作り上げるという点においては、デビュー作である『GO』の出版社である講談社の期待には応えられなかったようです。
 彼は穴蔵にもぐり映画三昧の日々を送ります。来る日も来る日も映画漬けで・・・。(これは私の想像の範疇)
 その後、彼は映画やマンガの原作などへのメディアミックスを試みます。
 そして数年後、集英社から発表したのが『映画篇』という本です。
 ですから彼がこの「フロム・ヘル」を見なかったはずがありません。これも私の妄想ですが、彼はその主人公であるジョニー・デップ演じる刑事に、美意識をくすぐられたのではないでしょうか?
 そして出来上がったのが『SP』の主人公である警視庁SP役のV5の岡田くん。
これは「フロム・ヘル」のキャラクターのパクリじゃないかしらと思うような、ある共通点があります。そして「フロム・ヘル」は意外な方向性へ事件の裏側がつまびらかにされていきます。
『SP』も、もしかしたら、あるいは国家機密的なところまでたどり着くのかもしれない・・・。
 もし尻切れトンボの幕切れでしたら、私はもう金城一紀を信じないことにします。皆さんのように。
 さて物語は今後どう展開するのでしょう。楽しみのようであり不安のようであり・・・。いまは、金城一紀の母でもなってしまったような心持ちです。
 それにしても、ジョニー・デップは、なぜ役柄、役柄であんなに表情が変わるのでしょう。実にセクシーです。『SP』の岡田くん、もっと、がんばれ!

 
 
コメント
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