今日は夕方から、森川成美さんの『くものちゅいえこ』(森川成美作・PHP研究所)と『アサギをよぶ声』(偕成社)デビュー作及び第二作の出版お祝いの会です。
場所は、本郷三丁目にあるフレンチのお店です。
森川さんは東大法学部のご出身なので、やはり本郷三丁目の、この界隈がお馴染みなのでしょう。
さて『もりのちゅいえこ』は以前、このblogでもご紹介しておりますので、今日は『アサギをよぶ声』のご紹介を。
主人公である「アサギ」は12歳の少女。
彼女の住む村では、女の子は「女屋」へ、そして男の子は「男屋」に入る習わしになっています。
「女屋」とは結婚するための、準備をする場所です。「男屋」とは、戦士になるために訓練をする場所です。
けれど「アサギ」は「女屋」に入ってお嫁入りのことを考えるのより、少年たちのように戦士として弓矢を持って自らの力で、自らの生きる場所を掴み取りたいと思っています。
「アサギ」と母親は、夫が村人を裏切ったということで村から四面楚歌になり、ほんとうになにもないところで生きてきました。そのハングリーな生活が「アサギ」を自立へと導いていくのです。
その父親のほんとうにすがたが、物語が進む中でつまびらかにされていきます。
圧巻なのは、「アサギ」が自分の信念のために、ひたむきに、泥臭く、男の子たちに負けじと這い上がっていくすがたです。
また、もうひとつのテーマである、母と娘の葛藤。
これは、森川さんの永遠のテーマでもあると思っています。
そうした女が自立して生きる姿というのを、捉えようとしています。
それが、古代ファンタジーとして見事に結実しています。
ラスト、「アサギ」の胸のなかで泣く、思いがけない母のすがたをみながら「自分も泣き出したい。泣けたらどんなにいいかと思う。でも泣けない」という「アサギ」の心情が、胸を打ちます。
母親へのトラウマを抱えた娘は、そう簡単にその思いを消化することはできないのです。けれどそんな母を「少女のよう」と思う『アサギ」の、大人になったその思いに胸をゆさぶられます。
と、同時に、森川さんのテーマはまだまだ続いていく、という思いが、確信にもかわった瞬間でもありました。
とても読み応えのある一冊に、仕上がっています。
今夜は、たくさんの皆さんと、森川さんの門出をお祝いいたします。