奈良に何度か行って、いつも見そびれていた正倉院展。
待ち時間2~3時間は当たり前です。
毎年、なぜのそのように人びとの胸をゆさぶるのか・・・。
先日の日曜美術館で、その謎を知る事ができました。
奈良・天平時代は、いまから1250年昔です。
その時代、シルクロードから世界の工芸品が日本にやってきました。
そんなシルクロードゆかりの、華麗な宝物が正倉院展で公開されています。
その天平文化の代表的な宝物が、写真↑の漆金薄絵盤。
鮮やかな仏の世界です。
奈良国立博物館の学芸部長の西山さんは、こういいます。
「奈良時代は、国として、うつくしいものに価値をおく時代だった」
そしてさらにこう付け加えます。
「天平のあの時代は、災害が頻発し、人間がどれほどがんばっても、かなわないことがあるということを、知らしめられた時代。それが切実な祈りへとつながっていった・・・。
すべての生あるものへのしあわせ、祈りの心。
正倉院宝物は、苦しみや悲しみから生まれたもの。その思いが成熟していった文化・・・」だと。
そんな、奈良・天平の時代の人たちを感動させ、励まそうと言う思いから生まれた文化に、いまを生きる私たちも、その技術の高さ、繊細さ、思いの強さ。そういったもののすごさに励まされているのです。
西山さんはさらに、こんな風に説明し、日曜美術館の「正倉院展」を結びました。
「その文化がいま目の前にあるだけで、それは物語だ!」
正倉院の息をのむようなすばらしい宝物の数々は、まるでファンタジーのように、天平から時空を越え、今につながっています。
それを知っただけで、長編小説を一冊、読み切ったような、正倉院展を目の前で見ているような、そんな満足感を覚えました。