20階の窓辺から

児童文学作家 加藤純子のblog
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イスラエルという国

2023年11月02日 | Weblog
           


私は、『アンネ・フランク』(ポプラ社)で、アウシュビッツのこと。ユダヤ人大虐殺での、アンネたちの苦しみを書きました。
この本は、5年生の国語教科書にも採用され、もう50刷以上いっていて、今も、子どもたちにたくさん読まれています。

「1948年、ユダヤ人の国家、イスラエルが誕生したのです。ナチスの迫害を受けていた時、この国旗についた「ダビデの星」は屈辱の星でした。でも今はちがいます。誇りに満ちて、5月の空をはためいています」

このように、その本に書きました。
だから、自分の言葉に責任を持つという気持ちから、今回のことは、人ごととして、ただ傍観してはいられません。

だから、よいしょ!と、自分で自分を奮起させ、これを書いています。
この本を読んだお子さんをお持ちの、親御さんに、子どもたちに語っていただきたくて・・。

日本ペンクラブの国際組織、国際ペンも声明を出したし、JBBYの国際組織、IBBYも声明を出しています。
ですから、それをお読みいただくのが一番と思いつつ・・。
私自身も考えることが、今の状況に対する『アンネ・フランク』を子どもたちに向けて書いた、作者としての責任ではないかと思いました。

現在、イスラエルの攻撃に、世界中が抗議しています。
ガザへの攻撃は日に日に激烈になっています。
テレビで、映像を見るたび、どんどん苦しくなり、体調もおかしくなります。
死者もけが人も、家も全てをなくし、住む場所もなく、悲しそうな顔で泣いている子どもたちを見ると、ほんとうに胸が詰まりそうです。

驚いたのが、イーロン・マスク。
アメリカ一の大富豪とも言われています。
Twitterを巡ってのやりとりや、いろいろ違和感を感じる行動も多々起こしている、全面的には賛成しかねる人です。

ですが、今回、状況が映像として、途絶えがちなガザに、人工衛星による通信網「スターリンク」を利用する通信を提供すると言い出しています。
「ガザで起きている事実を、世界中の人に知ってもらいたい。子どもたちの状況を世界中に伝えたい」という気持ちから。

イスラエルは、ハマスの行動は、アウシュビッツで経験した我々の痛みを、さらに増幅させているのと同じだと主張します。
アメリカのバイデンは、狂気のように「人質全員解放がまず先だ」と言いつつ、イスラエルに戦闘機なども提供しています。

アメリカの歴代政権の中でイスラエル寄りの姿勢が突出していたのが、トランプ政権です。
トランプの重要な支持基盤であるのが、キリスト教福音派です。
キリスト再臨を待望する信仰上の理由から、イスラエルの利益を重視する人が多いということで、トランプはイスラエル支持なのです。

イスラエルとの間で繰り返し起こってきた、中東戦争。
まずは括りとして「アメリカvsイラク」の戦いの構図に、今回のことをはめようとする評論家もいます。

冷静に考えれば、今回に至る問題は、パレスチナに暫定自治区を設置して、いずれはイスラエル、パレスチナの双方が共存することを目指しましょうという内容で作られた、根幹にあったのが「オスロ合意」。
それが崩されたことにあります。
そこから、4度もの中東戦争が始まります。

いつもそうやって、大きな括りを作り、日々人間たちがどう生きてきたかということから「国対国」の構図で、どっちがいいか、悪いかと、分断ばかりを図る。世界はもう、こんなにダメなんだよと、恐怖を煽る・・・。

そうではなく、今、まるで虫螻でも追いつめるように、兵糧攻めにされ、生きる権利も、人権もなく、食べるものも、家も、水も電気もない苦しみの中を、泣き叫び、逃げ惑っている、人間たちの人権をどう守るかです。

世界の論調も、バイデンのスタンスへの批判が高まっています。
アメリカ国内の2%の、影響力のある富豪のユダヤ系アメリカ人への配慮と、自らの大統領選挙。
そのためにスタンスを崩しません。
でも多くのアメリカ人の良心は、バイデンを許しません。

先日、ニューヨーク中心部にあるグランドセントラル駅に、ユダヤ系住民でつくる団体などの呼びかけに応じて1000人以上の人たちが集まり、駅構内の広場や階段を埋め尽くしたそうです。
集まった人たちはおそろいの黒色のTシャツを着て、「いますぐ停戦を」「ガザ地区を守れ」などとシュプレヒコールをあげたということです。

ユダヤ人とか、アラブ人とかの人種の問題ではないのです。
ガザ地区の人権の問題なのです。

EUでのドイツの姿勢は「ヒットラー」という怪物を出してしまった国としての、内側の痛みは消えず、最後までユダヤ人に配慮していましたが、「人質解放。即停戦」で、まとまったようです。

呆れたのが、日本の「棄権」表明。
あの総理は、もう自分の頭で、いろいろを考えられなくなっているので、アメリカに依存してさえいればいいと思っているのでしょうか?

とにかく、ヒズボラや、イラクが出てくる前に、戦争をやめてほしい。
イスラエルは「ハマスを根絶やしにするまで」と言っていますが、ハマスはガザだけにいるのではなく、他の国に行っている人もいます。
「根絶やしにする」ということは、ガザ地区の、女性も子どもも、若者も、お年寄りも、しいては、イスラエルの人質まで、全ての人を惨殺するということと、同意語です。

イスラエル首相は「停戦は絶対しない。我々に停戦を求めるのは、ハマスなどのテロの蛮行に降伏するという意味だ」と言います。

でもその言葉を吐く前に、イスラエルの首相には、ガザ地区に追い込まれたアラブ人たちと、アウシュビッツでやられたユダヤ人たちのことを重ねて、考えてほしいです。
ネタニヤフ首相やイスラエルは想像力が欠如しています。

こんなことをしていたら、いつか、また、第二の9・11が起こるようで、恐ろしいです。
あの日、NYのワールドトレードセンターが、まるで砂の塔のように、崩れ落ちていった映像は、20年経った今でも脳裏に焼き付いています。
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