時遊人~La liberte de l'esprit~

優游涵泳 不羈奔放 by椋柊

めがね

2008-09-28 | 映画


「かもめ食堂」の
荻上直子監督とスタッフが再び集結して
出来上がったのが
映画「めがね」

南の海辺を舞台にした物語です



日本の何処かの春
都会のど真ん中で
先生と呼ばれるような仕事してたらしい女性
タエコさん(小林聡美)が
日本の何処かの
優しい日差しと
爽やかな風が穏やかに吹く
海辺にやって来ます

シルバーの大きなスーツケースと
赤いバックひとつ肩にかけて
タエコさんは
浜辺を進むのです

春になると
何処からか浜辺にやって来て
かき氷屋さんをはじめているサクラさん(もたいまさこ)に

「氷ありますよ」と
声をかけてもらっても
ひたすら歩き続けるタエコさん



予約していた宿ハマダで
タエコさんを出迎えてくれたのは
宿主のユージさん(光石研)と犬のコ-ジくん

でも
何日か過ごしたタエコさんは
マイペースに明け暮れるハマダでの毎日に
何だか慣れなれません

ある日
散歩の帰り
のどが渇いたタエコさんは
冷たい飲み物が飲みたくて
サクラさんのかき氷屋さんへ行きました

でも
そこにはかき氷以外はありません

「かき氷は苦手なんです」
そう言って
タエコさんは
かき氷を食べようとしませんでした

ついに
タエコさんは
思い切って宿を変えようと
もう一軒ある宿へ行ってみます
でも
とある事実を突きつけられ
宿難民になり
畑のあぜ道で途方に暮れていると
三輪車にのったサクラさんが
迎えに来てくれました
タエコさんは
サクラさんが運転する三輪車の後ろに乗り
再び
宿ハマダへ



そして
またある日の朝
毎日ハマダで
朝ごはんを一緒に食べている
ハルナさん(市川実日子)に
タソガレるわけでもないのに
何故ここに来たの?
と聞かれて
戸惑ってしまうタエコさんなのでありました

タソガレるって?

数日後
ハマダにタエコさんを追って
青年・ヨモギくん(加瀬亮)がやって来ました
そして
ヨモギは
難なくタソガレを満喫しているのです

タエコさんは
思い切って
宿主のユージさんに尋ねました
『タソガレるには何かコツがあるんでしょうか』

ユージさんは答えます
『食べてみるといいですよ サクラさんのかき氷』

そして
ついにタエコさんは
サクラさんのかき氷を食べてみることにしました



サクラさんは
かき氷用のあずきを煮ています
「大切なのは、焦らないこと」
「焦らなければきっと…」

タエコさんに
出来たてホヤホヤのあずきを
試食させてくれました

タエコさんは
サクラさんの三輪車の後ろに乗せて貰えるし
あずきも食べさせて貰えて…

そんなタエコさんに対して
ハルナさんもユージさんもヨモギくんも
ちょっと嫉妬しています

みんな揃って
海辺でビールを飲んでいると
ヨモギくんが言いました

「先生、旅は思いつきで始まりますが、永遠に続かないものですよ」
「(タエコさん)知ってる…」
「ぼくは、そろそろ帰ります。先生は?」

タエコさんは
答えられません

いつしか
タソガレに身をゆだねられるようになったタエコさん

「あっ!」

ハマダのキッチンで
料理の下ごしらえをしていたサクラさんハルナさん
防波堤で釣りをしていたユージさん
港を散歩していたタエコさんが
空を見上げました

それは
梅雨の始まりを知らせる
空からのメッセージ

春の終わりを告げる
空からのメッセージ

雨音で目が覚めたタエコさんは
サクラさんが
日本の何処かへ戻ったことを知ります

ハルナさんが運転する車で
飛行場へ向かう途中
眠る時以外
外したことのないめがねを落としてしまいます
でも
めがねをはずしたまま
タエコさんもまた
都会のど真ん中へ
戻っていくのです

シルバーの大きなトランクは
もうどこにもありません
持つ必要がないからです
赤いバックひとつ肩にかけて…
都会のど真ん中へ
戻っていくのです

そして
季節はまた春になりました




「かもめ食堂」を見て
ツボにハマった人は
きっと
「めがね」にも
ハマれる思います

エンディングを見ながら
実在するとしてたら
いまのわたしでは
この南の海辺には辿り着けない
宿ハマダは探せない
サクラさんのかき氷は
食べれない
そんな気がしました