庭戸を出でずして(Nature seldom hurries)

日々の出来事や思いつきを書き連ねています。訳文は基本的に管理人の拙訳。好みの選択は記事カテゴリーからどうぞ。

堀江 (台風)

2011-07-18 22:41:00 | 飛行理論
堀江には最も適した北東風であるが、今日の風は台風である。さて、これで雨が降ってたらどうしたものか・・・と思案しながら到着すると、およそ予想通りの雲行きで、台風特有のガスティウィンドが吹き込んでいた。 

12㎡で少しは走ったものの不安定なオーバーブローでは何もできそうもないので、10㎡に代えて出てはみたが、ちょっと気を抜くと軽く吹っ飛ばされる。そのうち雨も降り出し、これではどうにもならんな・・・ということで、本日おしまい。 

強風下でのガスティ・コンディションでは、大体こういうことになる。共通点も多いウィンドとカイトの大きな相違点いを感じるときでもある。ウィンドサーフィンにとっては、台風は僥倖(ぎょうこう)の一種だった。まあ20年以上前のセールや板は、現在のそれよりも軽快にできていたということもあるのだろうが、秒速15mを超える風でも、大喜びで風の続く限り走り続けていたのを思い出す。カイトの世界では、よほど適した環境がない限り、まず不可能だろう。 

それは何故か・・・。まずは、風が作用する“絶対面積”の違い。次に、風の力(揚力)が発生する空間的位置と作用が及ぶ地点の違い。次に作用点の数の違い。 

たとえば、風速7~8mの環境下、ウィンドなら6㎡程度だが、カイトは12㎡前後・・・と、およそ2倍のサイズを使う。インフレータブルなら、その空力特性はウィンドのセールと似たようなものだ。それを、ハーネスの一点を中心とする半径20m程度の円運動による、動きの自由度の高さという利点によって、コントロール可能なものにしているわけだ。もし、これが、ウィンドのようにもっと体の近くにあって、板であれ身体であれ、一点に固定されてたら、とんでもないことになるだろう・・・というよりも、たぶん何もできずに吹き飛ばされるだけだ^^; 

この利点が、不安定な風の中では、逆に欠点として作用する。20mも離れた場所で働いている、強大なパワーが人間に伝わるまでの広い空間で何が起こっているか・・・という問題。空の世界の話だが、私は、たった10mほどの高度に存在した、目にはまず見えない“ウィンド・シア”によって、ランディング・アプローチを誤り、河原に激突して生死の境をさまよった、ハンググライダー上級者の友人を、目の前で見ている。 

それに、ウィンドのセールは板には固定されているが、基本的に人間には固定されず、セールを支えるブームに付いたハーネスラインから、いつでも簡単に自由になることができる。ところが、カイトはそうはいかない。人間とカイトは非常に親密にくっ付いていて、リーシュという安全装置でも開放しない限り、カイトが吹っ飛ぶということは、だいたい人間も吹っ飛ぶということを意味する。
 
風の心は、それを読むのに、女心より難しいことなのかもしれない。

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