庭戸を出でずして(Nature seldom hurries)

日々の出来事や思いつきを書き連ねています。訳文は基本的に管理人の拙訳。好みの選択は記事カテゴリーからどうぞ。

カイトの魅力 2 (クロスカントリー)

2011-08-01 12:25:00 | 海と風

カイト(サーフィン)の魅力についての思い付きを続ける。前回はその軽便性に少し触れた。 

数ある風読みスメ[ツの中でも、空のパラグライダーと並んで、その軽便なることこの上ないのがカイトサーフィンだ。自分の身体一つで全ての装備を持ち運べるということが、その行動範囲や自由度を如何に広大なものにするか・・・まずは、パラを例に少し書いてみる。

パラグライダーは航空の分野では、フレキシブル・ウィングとか軟体翼とか呼ばれ、インテイク(空気取り入れ口)から流入する空気の圧力(ラムエア)で翼形を作る。流入風がなくなればただの布袋になり、畳み込むとバックパックに収まるほどの大きさになる。これにハーネスやその他の装備を加えても重量は20kg程度だから、普通の脚力の持ち主なら、全てを背負っても10kmや20km歩き廻ることはそう困難なことではない。

航空の特に滑空分野には、その楽しみ方に「クロスカントリー」という分野があって、サーマルを使ったソアリングや緊急ランディングや気象の知識など、それなりに高度な技能が身に付いたパイロットの一部は、限られたエリアの範囲を超えて、大概は数百mの高度のテイクオフからどれだけ遠くまで飛んでいけるか、ということに興味を持つようになる。

日本の或る団体では、そういうパイロットの為に「クロスカントリー・パイロット」という技能証明を用意しているが、現在これを取得するにはかなりの時間と労力がかかる。A級・B級練習生の数ヶ月間を経て、ノービス(初心者)・パイロット、パイロット(一人前の)としての経歴を1~2年重ね、更にかなりの飛行時間を経てやっと取得できる最終技能証になっていたりする。 

これらはもちろん単なる私的団体のお墨付きだから、こんなもの無くても他人の自由や利益を侵害しない限り、誰がどこでどのように飛ぼうとも、それを邪魔したり禁止したりできる権限を持っている人間などどこにも存在しない。 

クロスカントリー飛行の実際は、飛行前に地図や何種類かの天気図を読みながら慎重にフライトプランを検討することから始まる。テイクオフ地点とランディング地点が固定されているエリア内フライトと違って、雲を追い風に乗って可能な限り遠くまで飛んで行こうというのだから、どこに降りることになるのかは簡単には分からない。大概は適当な休耕田や畑や空き地に降りるべく計算しながら飛ぶ。しかし、山間部や山岳地帯が終着点になることも珍しいことではない。

パラグライダーの先輩格であるハンググライダーなどで、これを単独で行うのはまず不可能だ。その装備は相当にかさ張り、重量的にも一人で背負って歩き回るというわけにはいかない。またその飛行特性からランディングの条件も限られ、やむなく山地に降りたりすると後処理が大変なことになる。だから、普通は仲間のパイロットなどのサメ[トが必須となる。

クロスカントリー飛行の最大の魅力は、いわば「未知との遭遇」みたいなもので、普段飛び慣れたエリアの外側の世界は、新鮮な驚きと発見に満ち溢れている。刻々と変化する気象や地形を観察し、広大な空間を上がったり下がったりしながら移動していると、ちょっとした冒険旅行をしているような気分になる。およそ日常世界と対極にあるのでリスクも大きいが、得ることのできるリターンはもっと大きい。


コメント
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