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マンション詐欺

2010年11月21日 | 私見
最近、マンション投資の勧誘が増えてきました。

大抵は電話口で直球「マンションのオーナーにならないか」と勧めてきます。会社もマンションがある都市も違うようですが、こんな電話が自宅にも職場にもかかってくるのです。教員は「職員録」のようなものを作るので、そういった名簿を入手して手当たり次第にかけているのでしょう。基本的には3言目以内に「マンション」の言葉が出るので、その時点で断るようにしていました。

しかし、先週かかってきた電話はかなり悪質でした。年金が増える、保険にもなるといったことは言うのですが、一言もマンションと言う言葉を口にしませんでした。丁度年末調整の時期だったので、てっきり個人年金のことかと思ってしまい、話だけ聞いてみようと思ったのが運の尽き。職場で会う事にし、名刺を見て初めて「やられた」と思いました。以下はその手口を紹介します。
・新聞やスポーツに広告を出している→安心できる会社だと信じさせる
・やたら自分ことを話す→さりげなくこちらの年齢や収入、家族構成を聞く
・共済組合(年金)の現状を説明→将来を不安にさせる
・安定した老後を過ごすために必要なお金をシミュレート→危機感を煽る

・・・こんな感じで、自社商品のアピールに入りました。その他、○○学校の先生も今日契約してきた、○○学校の先生とはいま商談中といった情報も、安心を与える手口の1つですね。実際、自分の場合は現時点で安定した老後に必要だと言われた3千万くらい貯金があるので、それこそこういう詐欺に引っかからない限り老後に危機感をもっていないのですが(笑)こうなった以上はその仕組みというか、手口を聞いて勉強する時間にするしかないなと割り切り、そのまま聞いていました。

簡単に言えば、借金してマンションを買い、それを人に貸し、家賃収入でローンを返せばその後は丸々家賃がもらえますよ、といったもののようです。以下、メリットやリスク回避として説明されたことを羅列します。
①家賃収入でローンが払えるため、経費はほとんどかからない。月々5千円程度管理費として払うだけだから年金積み立てと換わらない。
②ローンを払い終われば30年後には月々7万円の収入になり、一生続く。
③資産になるので、生前も死後もお金に困ったら最終的に売ることも可能。
④経費をマイナス計上できるので、確定申告の時に税金が安くなる。
⑤大都市で立地条件がよく、少子化でも人気が衰える心配がない。
⑥入居率が現時点で常に95%を超えている。
⑦会社を分けているので、万が一会社が倒産してもマンションは潰れない。
⑧万が一借り手がつかない場合、9割まで家賃を保証する(オプション加入)
⑨万が一返済前に死亡した場合、その後の支払いはチャラ(保険会社が払うから)
⑩万が一返済前に収入がなくなった場合、一定期間支払い免除(これも保険)

・・・正直、話を聞いていて加入したくなってしまう気持ちもよく分かりました。実質ここまで2時間もかかったのですが、隙のないトークと言うか、こうした相手が納得するように図や式や言葉を使って分かりやすく説明する能力というのは、是非今の子ども達につけさせたい力ですねぇ(笑)こういった方向に才能を伸ばしてもらっては困りますが・・・まあ、自分は数学科なので、いくら筋道を立てて説明していても、肝心の根拠がないことを信用するわけには行きませんから、一通り説明が終わり、見積もりを見せてもらった時点できっぱりと断りました。

「十分分かってもらえなかったようなので、明日また来ます。」
うぜえorz
先週は懇談も東海数研もありましたし、12月始めには授業公開もあってめちゃくちゃ忙しい時期に、ただでさえ2時間も無駄にした上さらに時間を作れるはずがありません。それ以前に、めちゃくちゃトイレに行きたいのですが・・・さらに30分食い下がられ、忙しくて無理かもしれないがと断りを入れ、一応次の約束をして帰ってもらいました。

実際忙しかったので翌日電話が来た時点で断ることができましたが、その後ネットで調べてみて、同じような被害にあっている人が多いことが分かりました。契約してからでは遅いこともあり、自分の場合は2時間半を無駄にしただけですんでまだ良かったかなと思いました。ブログのネタにもなっているしね(笑)

次に、今回の話で自分が信用できなかった、矛盾を感じた点を挙げようと思います。

・わざとマンション投資であることを電話口で言わない。

この時点ですでに致命的なわけですが・・・契約はまず信用が第一。相手をだまして会う手法は独断なのか、会社ぐるみなのか・・・いずれにしても、用件を正しく伝えないのは議論のテーブルに乗せる以前の問題です。信用のない相手の会社や勧める商品が信用に足るわけがありません。なので自分は名刺をもらった時点で態度を決めました。
・必ず儲かるような話しぶり。その利益率が単純計算で10倍の儲けは常識的にありえない。

5千が7万なので、定年後30年生きるなら単純に14倍、平均寿命の20年でも10倍弱です。実際は電卓のようには行かないことも説明がありましたが、それでも何倍も儲かることを前提に話が進んでいました。比較対象が株式投資で、それより安定して儲かると言われても株自体がハイリスクですから、当然このプランにも相当のリスクがあるはずです。それをさも軽げに言うのはどうかと。
・金額がマイナスになるような話になると途端に曖昧になる。

利益はしっかり電卓で計算して見せてくれるくせに、税金にしても、保険にしても、維持費にしても、具体的な費用についてはほとんど教えてくれませんでした。④のように「税金は安くなります」と言われても、正直全くピンときません。そもそも安くなるのは期限付きのようですし、今まで払っていなかった税金を払うことになるわけで、安くなることはありえないでしょう。確定申告という余計な手間が増えること自体もマイナスですね。「少しかかりますが・・・」と言われた⑧⑨⑩は、つまり5千で済まないぞ、ということを暗喩していますね。月数万の出費になる危険性もあると感じました。
・そもそもなぜオーナー制なのか

実際アパート経営をしている親戚がいるのですが、とりあえず建てて、入居者を募って、家賃収入で借金を返せるのが20年ぐらいと言っていました。条件は同じではありませんが、当然入居者がいないとその分遅れますし、修繕にもお金がかかります。そういったリスクがあるから、部屋ごとに管理権を譲って、入居者リスクと修繕リスクをオーナーに丸投げしたのがこのマンション投資という商売なのでしょう。身入りは減りますが、企業側にリスクはほとんどありません。月5千円を100部屋でやれば年間600万にもなるわけです。①②のようなシステムは、カモを増やして手広くやればやるほど儲かる商売。現に、この会社はこれで年間4億の収入があるらしいです。まさにギャンブルとかでおなじみの、主催者が儲かるシステムですな。
・資産価値について

車でも、買った時は200万だったとして1年ごとに50万ずつ下がり、4年も乗ればタダ同然の価格で下取りにだすことになります。それと同じで、マンションも新築の頃は良いでしょうけど、年数がたつにつれて間違いなく価値は下がるでしょう。30年ローンを払って、仮に20年儲けさせてもらって、その後売った所で元の2000万では絶対売れないでしょう。つまり③は成り立ちません。この辺りを錯覚させる話術は巧みですが、⑤⑥のような状態が半世紀も続く保障なんてどこにもないのですね。第一、そんなに人気があるのなら他の企業もどんどんマンションを建てて儲けようとするでしょうから、供給が需要を追い越すのも時間の問題でしょう。あと、先程述べた維持費についても総額では相当かかります。自分の持ち家ならしぶしぶ直しますが、このオーナー制というのは自分が住むわけでないので、全く実感の湧かない投資だということが一番の問題なのかもしれません。
・月額が電話の時(3千)と話し始め(5千)と契約時(7千)とだんだん増えた。

これも言語道断なのですが、少額であると安心させておいて、気づかないうちにじわじわと上げていく詐欺の常套手段です。さらに、この月々の金額の他に、手付金として250万ほど見積もりに上乗せされていたのも見逃せません。そもそも月5千円程度集めるだけでは本当に管理費とトントンでしょうし、別会社と謳う勧誘会社自体の儲けが計上できないはずです。おそらくこの手付金が勧誘業者の資金となるのでしょう。つまり、契約をして最初にもらうものをもらってしまえば、あとは3千でも7千でもどうでもいいのでしょうね。別会社だし。従って、⑦は倒産によるオーナーの損害を防ぐと言うより、先に利益を頂いてあとは責任逃れをするためであると考えられます。

以上のように、話を聞いた上で自分が出した結論は、「余りにも虫の良過ぎる話。高リスクの可能性が高く、1秒でも早く断るべき」です。実際は、教員のマンション経営は増えているようですが、所得になる以上は地方公務員法第35条「職務専念義務」に違反している恐れもあるので、十分吟味されたほうが良いと思います。