話題の「
君の名は。」を、振り休にようやく観に行くことができました。(ネタバレアリ)
話題に上がり始めた頃はまあTVまで待つかーという気分でしたが、その後の報道で興行収入100億を越えたこと、舞台が岐阜県飛騨市であること、その聖地巡礼がまるでポケモンGOのような騒動になっていることなどを知り、俄然見たくなってきたわけです(笑)100億って、普通にアニメ映画のベスト10に入り、歴代のジブリ作品に肩を並ぶ勢いですからね。一応、事前にレンタルで「星を追う子ども」「秒速5センチメートル」も見たので、「言の葉の庭」も含めると自分は新海作品の最新4作品を観たことになります。ちなみに今まで余り聞いたことがなかった理由は全国規模のロードショーでなかったようで、この「君の名は。」がほぼ全国デビューに近い作品だったわけです。それが大ヒットとなったのですから、超有望株と言っても過言ではないでしょう。
ココ最近の作品は写実的表現にこだわっていたようですが、どうも今回はファンタジー要素の強い作品に仕上がっている模様です。「星を追う子ども」はちょいとマニア向けを狙ったファンタジーという印象を持っていましたけど、今回のは対象を広げ、分かりやすさ、爽快さで勝負に出ている感じがしました。物語のベースは「男女がお互い夢の中で入れ替わる」という、ラブコメなどにありがちな展開ですが(笑)面白いのが、この二人が全く面識のない状態で入れ替わり、最後に本当に出会うまでを描いたという点ですね。どんな物語でも一般的に出会いは始まりなのですが、この2人に限っては「出会って終わり」が非常に納得のいくラストになっていました。
「秒速5センチメートル」でも、主人公とヒロインが最後に出会うかどうかが大きなポイントになっていました。小学校の時に仲が良く、中学で他県に引っ越して離れ離れになってしまった2人が、おそらくお互い好き同士なのにわざわざ会いに行ったにも関わらず言い出せないあの感じは自分も覚えがあります。別に自分語りはしませんが(笑)一つ言えるのは、そんな素敵な女性は世の男性が決して放っておかないと言うことでしょう。いつまでも思い出に恋をして一歩踏み出せない主人公と、新しい恋に踏み切って成就させたヒロイン。大人になって、小学校の頃の思い出の場所で偶然すれ違うわけですが、思い出にすがって彼が振り返った時、もうその場に彼女はいませんでした。結局出会えなかったのは一見バッドエンドのようですが、その後主人公は微笑んで向き直し、ラストを迎えます。おそらく、彼女は自分のように思い出の呪縛に囚われていなかったということに安堵し、彼もまた呪縛から解放されたということなのでしょう。しかし、ストーリー的に出会わないのが正解でも、やはり何となくモヤモヤとしたものが残ってしまいました。その点、今回の「君の名は。」は初めて出会うまでの物語と保証されているので、「秒速5センチメートル」を観た人は2倍すっきりできたのではないかと思います。両思いなのに何らかの原因で会いたくても会えないという描写は妙にリアルで、しかも彼の作品にはそういうシチュエーションが何度も登場しています。これは多分、監督の原体験によるものなのでしょうね。
もう一つのキーワードは「夢」ですね。小野小町の古今和歌集「思ひつつ寝ればや人の見えつらん夢と知りせば覚めざらましを」が発想の原点だと言われていますが、自分は荘子の「胡蝶の夢」の方がしっくり来ると思います。蝶の夢を見ている自分が本物なのか、実は自分は蝶の夢なのではないか、という話ですが、簡単に言えば「蝶の時には蝶の人生を精一杯生きればよい」ということですね。夢は確かに起きてしばらくすると忘れてしまうこともありますが、夢を見ている時って「あれこの場所何回か来たことあるなあ」と思って見ていることも多いです。実は夢の中で何度か人生を体験し、様々な失敗や成功のプロセスを一通り経験しているからこそ、現実世界をより良いものにしていけるのかもしれません。それにしても主人公、ちょっと一瞬で忘れすぎでしたな(笑)
映像表現はすばらしいものでしたが、何やら今回今まで音楽を作っていた人が変わったようで、今までのような感激が少なかったように思います。しかしストーリーは感動間違いなし。これはリピーターが出るのも納得の完成度でした。