【十段戦】井山、史上初の七冠達成
今日の十段戦第4局に勝って、ついに前人未到の囲碁の7大タイトル制覇を成し遂げた模様です。
囲碁のタイトルは棋聖・名人・本因坊・王座・天元・碁聖・十段で、一応この序列は賞金順に由来しています。つまり十段はその意味では一番格下なわけですが、7つ目のタイトルになったことでものすごい注目を集める結果となりました。報道陣も異例の50人以上いたらしいですからね・・・産経新聞儲けたなあ(笑)ちなみに安いと言っても賞金は700万はあり、韓国や中国の7大棋戦なら十分1、2を争える額なのですよね。一番高い棋聖は4500万で、どの国際棋戦よりも高い賞金水準となっています。つまり井山のレートが低いのは、日本だけで十分稼げてしまうのと、当然日本の棋戦を優先させるため積極的に国際棋戦に参加できないためで、もしも獲得賞金だけで囲碁の順位をつけるのなら既にダントツの世界一であると言えるでしょう(笑)
棋譜を見ると、今日は素人でもはっきり井山が良いと分かる碁でした。自分の棋力はまだ初段に3子置き碁でようやく勝てるレベルですが、プロの碁はどこがどうつながって生きているのか取られているのか、さらに最後の最後までどっちが勝っているのかすら分からないものも多いものです。第三局も、途中まで井山(白)が何となく良さそうかなあと思いましたけど、数えてみれば1目半負けでしたし、先に王将を取ったら勝ちと言う分かりやすい勝敗がないところが将棋と違うとっつきにくさなのですよね・・・まあ、今回は井山(黒)が序盤に白模様に仕掛けて優勢を築き、黒模様に仕掛けられる前にもう勝勢を固めてしまったような感じでした。白は最後の勝負を右下に求め、「ここで生きないと白は負ける」というコウに持ち込んだものの、2手連打されるうちに何と中央から右辺に賭けての全ての白石が死んでしまい、終わってみればまさに7冠達成に相応しい大差の完勝譜となりました。実力伯仲の相手でも常に半目の争いになるとは限らず、大差で決することもあるというのが囲碁の面白く、爽快な所だと思います。
将棋に遅れること20年ですが、現代において7冠を独占すると言うのは昔よりもさらに難しくなっているのではと思います。これは何も将棋より囲碁の方が複雑だとか言う意味ではありません。20年前はまだインターネットもそこまで普及していなかったので、棋譜管理に使っていた羽生が前衛的だともてはやされた時代でしたが、今はそれくらい自分でもやれるわけで、情報共有の速度が全く違うという意味です。碁や将棋などはそれこそ「名人芸」と言われるように、強いプロの所に弟子入りして雑用をこなしつつ、師匠から盗みとるものでした。しかし今では、それこそトップレベルのプロが打った棋譜が我々素人でも簡単に手に入り、顔を合わせたこともない遠くに住んでいる人達がネットでああだこうだ意見を交わし検討することも容易な時代です。つまり強くなりたい人にとっては勉強材料が溢れており、今ある水準までなら誰でも世界最高レベルになれる可能性があるわけです。今回特徴的だったのは対戦相手が既に井山より年下の世代だったと言うことでしょう。羽生が7冠を手にするために最後まで立ちはだかったのが、小学生将棋名人戦で優勝した際に解説役だった谷川だったというのは有名な話です。しかし、囲碁では既に世界ランク1位が10代の中国人であり、2位が生まれて2年のアルファ碁(笑)井山は一応3、4番手につけていますけど、未だに45歳の羽生が4冠でトップに君臨できている世界とは全く違うのです。・・・いや、20年以上トップでいられることもものすごいことですけどね(笑)勉強できる機会が均等になっている分、本当の意味で実力勝負になっているのが現代の特徴ですな。
まあ、羽生7冠の頃自分も将棋を始めたように、これで少しは囲碁を始めてみようと思う人が増えてくるかもしれませんね。何か熊本の地震や三菱の不祥事のせいで、そこまでテレビが盛り上がったようには見えませんけど・・・明日の一面はどうなることやら。