川本ちょっとメモ

★所感は、「手ざわり生活実感的」に目線を低く心がけています。
★自分用メモは、新聞・Webなどのノート書きです。

私の世代から人の気持ちが変わった(4/4)――列島大移動世代の罪

2009-10-04 04:08:52 | Weblog


◇高度経済成長期と列島大移動世代

1950年代半ば(1955年=昭和30年)から日本の高度経済成長期が始まりました。1960年代はゴールデン・シクスティーズと呼ばれていたのを私は覚えています。昭和30年代の春の風物詩に「集団就職列車」がありました。「金の卵」ともよばれた中学・高校の新卒就職者を東京や大阪に運ぶ特別列車でした。

高度経済成長期は大都市や大都市域近縁の工業地帯で人手不足が顕著になった時代です。全国的に若い労働力の大移動が続きました。大移動の時代です。1955年に中卒15歳で故郷を離れて都市部に就職した人は今、69歳です。1970年に高卒18歳で故郷を離れて都市部に就職した人は今、57歳です。大卒はそれほど多くない時代でした。

グループとして見るなら、今の日本人の五十歳代後半から六十歳代いっぱいの人たちを「列島大移動世代」と呼ぶことができます。私もこの世代に入ります。列島大移動世代は、生まれ育った生活環境から離れて、すなわち故郷と遠く離れた別の土地で一人前になって家族を形成しました。


◇二つの社会的現象は結びついている

前回(3/4)で書いたように、新しい土地で家族形成をした人たちは、そうでない人たちにくらべて自己中心的で自己過信的です。そして、自分が所属していると信じている社会階層より下位の階層と自分が認定する人たちとの間に壁を立てます。また、生活スタイルや教養のうえで好みに合う人たちとそうでない人たちとの間にも壁を立てます。

そして、私が住んでいるニュータウンでは、①居住地近辺で仕事をしている人の家庭、②奈良県内に通勤している人の家庭、③大阪へ通勤している人の家庭、の順で、このタイプの人の数が多くなるというのが私の体験的な感想です。生活の場所と仕事の場所が離れていればいるほど、自己中心・自己過信の程度が強くなります。

これらは、1/4から3/4に書いてきたように、生活経験から得た私の結論です。「自己中心的」、「自己過信的」、「壁を立てる」という人の心の傾向性が、私の世代から社会的に大きな流れになったと私は思っています。これらの心の傾向性が家庭に蔓延していることと、今の日本社会に「心の病」が蔓延していること。この二つの社会現象は大きく関係していると、私は考えています。


◇列島大移動世代の罪

私の近所にうつ病の経験者が二人います。二人とも定年を終えた男性です。不登校の子の話は何人も聞いています。ほかに一人、発達障害の学童がいます。私の住まう校区内で知っているだけでも、心の病の人が年齢性別を問わず何人もいます。私の青少年期には「心の病」の人がこんなにありふれてはいませんでした。

もう七、八年前のことになりますが、生活指導担当の指導主事先生二人、生活指導で名の通った人だと聞かされた中学校長と私の四人で、一晩飲食歓談したことがあります。三人の先生ともに、「生徒のためには朝昼夜を問わず」といった仕事ぶりで感激しました。

先生方が、憤慨と嘆きとともに熱をこめて語っていたことがあります。補導対象の子どもたちについて、「生徒より親が悪い」、「生徒より家庭が悪い」、「どうにもやりようのない家庭が多い」というのです。

「親が悪い」、「家庭が悪い」。そして、社会に心の病がひろがっていること。これらは、私の世代が家庭のリーダーになり、職場でリーダーになっていった時代から社会的な趨勢になっているのではないか。自己中心的で、自己過信的で、個人主義と利己主義を区別できない私の世代が、「心の病」が蔓延する社会を生み出したのです。

列島大移動世代は罪の意識に目覚めなければいけません。


コメント