毎日新聞2010-05-29朝刊記事「安保もてあそんだ罪」から前半部を転載します。
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鳩山由紀夫首相が責められるのは、「最低でも県外」の公約を実現できなかったことだけではない。
日米関係の深化の試みや東アジア共同体構想の展開、そして拉致問題や北方領土問題……。信頼を失ったリーダーの下では重要案件の進展は望むべくもないという、日本の外交安保政策全体の信頼性を失ったことだ。
首相は普天間飛行場の県外移設を唱えた動機の正しさを強調するが、その不誠実さは命懸けで問題に取り組んだとは到底、思えないところにある。
首相は米国の抵抗にあい昨年中に、いったんは県外移設は無理だと悟った。ところが、社民党の反発などで「県外」の旗を降ろせなくなった。その後は5月末の決着期限をにらんで、「あわよくば」と展望のないグアムや徳之島を候補にあげながら、県内移設への回帰のためのアリバイ作りに腐心した――これが全体の構図としか見えないのだ。