川本ちょっとメモ

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会社の社会的責任に気づいたとき

2010-09-19 02:23:11 | Weblog


私のおじさんが起業して2年が過ぎたころ、その仕事を手伝うことになりました。それが奈良県人になるきっかけでした。

そのとき社員は、おじさんである社長のほかに私を入れて4人でした。会社は田舎ビルの貸事務所の小さな一室にありました。やがて3室を借りるまでになり、事業手腕に優れた社長のおかげで会社は発展し、起業10年後には地域にあって目をみはるほどの立派な貸しビルが建ちました。創業の貸事務所から1kmほどの所です。私たちの会社はオーナー会社として、そのワンフロアを占めました。

新しい自社ビルに入ってみると、世間の見る目がガラリと変わりました。そのときには20人ほどに増えていた社員の態度も変わりました。

まず、寄付の求めが増えました。自治会と赤十字への寄付は、貸事務所の時代は1軒分でした。それが10軒分くらいに増えました。新たに消防団への定期的な寄付を求められました。消防署から防火責任者講習を義務づけられました。警察署からは車両安全運転宣言を求められました。セールスに来る人が増えて、彼らの物腰が前より非常に低姿勢なものになりました。お得意先もちょっとだけていねいに扱ってくれるようになりました。

地域ではもっとも立派なビルの一つです。そのうえ二十人ほど社員がいれば、地域の有力企業です。まわりからチヤホヤされて、従業員の態度が前より大きくなりました。それにつれて、働きが悪くなりました。作業着で電車に乗るのはイヤ、という社員が出てきました。

これらは、新しい立派なビルができたゆえです。ほんの1カ月かそこいらで会社にかかわる内外の人のありさまが驚くほどに変わりました。

新しいビルの会社生活に慣れてくると、会社の社会的責任に気がつくようになりました。寄付の例のように、持ちビル会社になってから地域の人々から期待されることが出てきました。所在地の人々や団体にきらわれては仕事にも社員の気持ちにも支障が出ます。社員たちと地元の居酒屋やスナックに行くのでさえ、今回はここ、次回はあそこというように偏らないように気をつかいました。

会社は成長するにしたがって、社会から望まれるものが広がり重くなってくるのだということを実感し、経験しました。

ひるがえって今年は、いくつもの有名企業が「偽装請負」を摘発されています。人を少しでも安く使うために、有名企業の有能な社員が違法行為や脱法行為をしています。

就職面接で学生の質問に答えて、週休二日制にまちがいありません、残業はありますが忙しいとき以外はたいしたことはありません、などと言いながら、入社してみるとまったく違うという会社がたくさんあります。新卒の青年をだますことに、多くの会社の社長さんたちは心の痛みを感じないようです。


私の息子は新卒就職して1週間で離職しました。あまりにひどい会社なので、すぐにやめるよう離職をすすめました。娘は同様に1年で離職しました。帰宅が毎日終電というありさまなので、健康を心配して私も離職をすすめました。さいわい、二人とも新しい会社に就職しています。聞いてみると、友人にも1年以内で離職したのが何人かいるということです。

就職してから早い時期に離職するのは、大方は会社側に責任があると思います。多くのケースで離職青年の側に責任があるとは考えられません。

会社側の倫理観念がこういうありさまですから、経済指標で好況がつづいた時期にも個人の所得が減る一方だったことは納得がいきます。世の中の社長さん方の多くは、零細企業から大企業に至るまで、人を安く使いまわすことに才能を発揮しているということになります。「人件費率の低下」とは生産の自動化によらないものであれば、人をより安く使いまわすか、首切りということでしょう。


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